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Law & Order - Season 5, Episode 1
#89 Second Opinion
- 邦題:「セカンドオピニオン」
- 脚本:Michael Chernuchin, Jeremy Littman
- 監督:Ed Sherin
- 初回放映:1994-09-21
There is nothing more destructive in medicine than an overgrown ego.
事件概要
People v. Nancy Haas (判事:Aldo Ianello)
小学校教師のアン・ベネットが教室で突然倒れ、病院に運ばれる。ERの看護師が患者のにおいで昏倒したため、毒物による中毒死が疑われるが、アンの夫ニコラスは「妻は乳癌だった」と言う。
アンの血液からはシアン化合物の痕跡が検出され、レアトリル(違法な癌治療薬)の投与が疑われる。アンの主治医であるDr. ハースは生物学博士であって医学博士ではなく、治療ではなく「栄養相談」と称して手術を好まない患者に代替医療を提供していた。
検死の結果、アンの死因はシアン化合物ではなく癌による病死と判明。だが、ジャック・マッコイ検事は「ハース博士がレアトリルを投与していれば、それは犯罪だ」と博士のオフィスを捜索。出てきたものはよくある栄養食品だけで毒物はなかったが、マッコイは「患者にニセの希望を抱かせ金をむしり取ったのは犯罪だ」として起訴を決定する。
ハースは患者たちに「治療」ではなく「代替方法」と説明していた。また別の患者は夫から無理矢理手術を受けさせられたことを「恐ろしい体験」と語り、手術後に夫が自分に触れなくなったと嘆く。クレアは「女性たちに選択の余地を与えただけではないのか」と疑念を抱くが、マッコイは患者たちの多くが死亡していることを指摘し、「アン・ベネットが医学的な予想より1日でも早く死亡していれば殺人罪だ」と主張。「ハース博士の療法はアンの死期を5年は早めた」という医師の言葉により、ハースは殺人罪で逮捕される。
マッコイは「手術をせずに癌を治療できるという偽りの希望を患者に抱かせた点は、殺人に相当する」と主張する。判事はマッコイの言い分を認めたものの、法廷には「ハースがアン・ベネット個人に言ったこと」だけを持ち出すよう命ずる(他の患者に言ったことは考慮されない)。
法廷で、弁護人のヤングはニコラス・ベネットに「アンは『ハース博士が癌を治せると言った』と言いましたか?」と質問し、ニコラスは「いいえ」と答える。それは、検察の主張に合理的な疑いを産むのに十分であったが、マッコイはヤングが「ハース博士はあなたに『奥さんを治療できる』と言いましたか」と聞かなかったことに注目する。もしこれを聞いて答えがノーであれば、その場で事件を棄却することも可能だったはず。ヤングに限ってその質問を忘れることは考えられないし、彼女は証人に偽証をさせるような弁護士でもない。マッコイは、ハースがニコラスに直接話をしていたことを確信する。
マッコイはニコラスの立場に理解と共感を示しながら説得。ニコラスはようやくハース博士と話したことを認め、ハースは第1級故殺罪での取引を受け入れる。
感想
前シーズンのフィナーレでベン・ストーン検事が辞職し、今回ジャック・マッコイ検事が初登場。マッコイ役のサム・ウォーターストンはこの後10年以上にわたって検事(EADA)役を務め、ブリスコー刑事とともに番組の「顔」となる。シーズン18からは地方検事(DA)になり現在も活躍中。
さて、しかしマッコイ検事初登場のこのエピソード、残念ながらあまり検事に感情移入できなかった。私がストーン検事のファンだから……という理由もあるかもしれないが、ちょっと強引すぎないかな? この検事さん。
そもそもERで看護師が倒れなければ警察が登場することもなかったはずの事件。私自身は近代医学を信じているけれど、代替医療を愚かしいと切り捨てることにも躊躇する。ここでハース博士のやっていることは、代替医療というより、患者の弱みにつけこんで財産を巻き上げているようにしか見えないのだが……しかし、詐欺はともかく殺人罪かというとそれもちょっと疑問。
シーズン2の「God Bless the Child(祈り)」を思い出してしまうが、あのエピでは、精神治療の有効性を判断してはいけないとされていたはず。であるなら、今回の事件も代替医療の有効性を判断してはいけないのではないのだろうか。つまり、ハース博士が患者に提供した方法では治療できないことを、博士自身は確信しており、かつ患者には治療できると信じさせていたことを証明しなければいけないのではないか、という気がするのだが……でも本人が取引したんだから、まぁいいか。
検事がベネット氏の証言でピンと来るところはさすが!と思わされたし、男としての共感に訴えかけて説得するようなところは、ストーン検事の時代にはちょっと考えられなかった場面で、これはこれで新鮮な印象だった。だが全体としてみると、残念ながらあまり高く評価できないエピソードだった。