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Law & Order - Season 5, Episode 8
#96 Virtue
- 邦題:「選択の余地」
- 脚本:Mark B. Perry, Jeremy Littman
- 監督:Martha Mitchell
- 初回放映:1994-11-23
事件概要
People v. Spencer Randolph Talbert
交通事故で若い女性が死亡する。彼女は助手席から運転席に移された形跡があり、運転者が現場を偽装して逃亡したものと思われた。さらに検死医は被害者がレイプされていた痕跡を発見する。
被害者は市会議員タルバートの選挙スタッフをしていたリッサ・ウェズリーで、事件当日は議員の助手トッド・ロックと一緒にいたところが目撃されていた。トッドはスキャンダルを恐れて事故現場から逃げたことは認めたものの、レイプについては否定する。トッドはリッサを車に乗せた後、彼女から「タルバート議員にレイプされた」と言われ、彼女を病院へ送る途中だったのだ。
無論タルバートは否定し「合意だった」と主張。被害者が死亡している以上、証拠は伝聞しか存在しない。キンケイドは、タルバートは他の女性にも手を出しているだろうと予想し、行動パターンを証明すればリッサの事件にもつながるだろうと思いつく。
刑事たちは聞き込み捜査を開始。やがて、タルバートが議員になる前に勤めていた法律事務所で、彼の後にパートナーになったサラ・マズリンが、レイプされたことを認める。
マッコイはタルバートを起訴するが、タルバートは「サラとは合意だった」と無罪を主張。当日、隣のオフィスで仕事をしていた元秘書は、「当時は忙しい案件を抱えており、ひっきりなしに物音がしていたが、自分は何も気づかなかった」と言う。また、サラはマスコミに追いかけ回され「証言するなんて言ったおぼえはない」と怒り出す。
その後、サラが政治的にタルバートと対立する立場だったということがわかり、マッコイは「タルバートの政治生命を断つためにレイプをでっち上げたのではないか」と問い詰める。サラは、タルバートから「自分と寝ないとキャリアを潰す」と脅され、仕方なく性関係を持ったことを認める。
シフは、合意であった以上犯罪は成立しないと判断。キンケイドは、サラにしてみればレイプされたも同然と主張。マッコイは恐喝による窃盗(larceny by extortion)が該当するのではないかと思いつく。タルバートはサラの「業務またはキャリア」を傷つけると脅して、彼女の財産である肉体を奪ったのだ。
サラは、タルバートから「自分と寝なければこの事務所でも他の事務所でもパートナーにはなれない」と言われたことを証言する。80年代当時、黒人女性であるサラには他に選択肢はなかった。サラは事務所や大学での業績を挙げ、「それもすべて被告人に身を任せなければ得られなかった、その事こそが恥である」と証言する。
弁護人は証人を立てず「すべてサラが自らの選択で行ったことです」と弁論。マッコイは恐喝の例を挙げて類似性を強調しながら「果たしてサラに選択の余地があったのか?」と問いかける。陪審はタルバートに有罪の評決を下す。
感想
「自分と寝なければ~するぞ」と脅して無理やりに女性を従わせる――という所で、シーズン2の「Sisters of Mercy(いたわりの心)」を思い出す。あのエピソードでも「物理的な強制力を伴わなければレイプにはならないのではないか」という反対を押し切ってストーン検事が起訴し、今回と同じように「新しい法律を作るつもりか」と言われていた。その時の評決は有罪だったが、今回は同じ手は使えなかったのかな? (控訴審で無罪になったとかいうバックストーリーがあったりする?)
違う点があるとすれば、S2の事件では被害者の少女たちが「リハビリ施設から追い出す」と脅されていたこと、そして施設を出ることはかなり高確率での死を意味していたことに対して、ここでサラが守ろうとしたのはキャリアだったことだろうか。キャリアを棒に振ってでも地道に差別と戦おう、という女性も大勢いたはずだと思う。
人種と性別で差別されるという状況は確かに不当だ。権力で女性を(男性でも)脅して無理強いすることは言うまでもなく許されない。だが、そこで “larceny by extortion” と言われるといささか疑問に思う。強要(extortion)はわかるけど、窃盗(larceny)なのかなぁ……これって。まだ強姦罪の方が納得できたと思う。
今回のサラの元ネタは、アニタ・ヒル事件とのこと。1991年、クラレンス・トーマス氏を最高裁の判事として承認するために議会公聴会が開かれ、そこで元部下だったアニタ・ヒル氏がセクハラを告発したのだ。結局トーマス判事はその主張をすべて否定して最高裁判事として承認されている。
— Yoko (yoko221b) 2010-04-18