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Law & Order - Season 5, Episode 23
#111 Pride
- 邦題:「怒りの拳」
- 脚本:Ed Zuckerman, Gene Ritchings
- 監督:Ed Sherin
- 初回放映:1995-05-24
事件概要
People v. Kevin Crossley (判事:Louise Lessing)
市議会議員のリチャード・ダーバンが、討論会の後で射殺される。現場では、緑色のレインコートを着た男が逃げるのが目撃されていた。そのレインコートと凶器の銃は付近のゴミ箱から発見される。
ダーバン議員はゲイであり、何度か脅迫を受けることがあったという。保守派議員のケヴィン・クロスリーはダーバンと何度も舌戦を交えていたが、クロスリーはそれを「それぞれの支持者にアピールするためのヤラセのようなもの」だと言う。
ダーバンはジョー・ギブという若い恋人と暮らしていたはずだが、ジョーは議員の自宅にはおらず、そこから絵画コレクションを持ち出してホテルに宿泊しているところを発見される。また通話記録から、ジョーがゲイ専門のエスコートサービスを営んでいたことも判明する。ジョーは犯行当時、運輸省の職員レオ・バーネットと一緒に議員の自宅におり、犯行の数十分前に緑色のコートを着たクロスリー議員が怒って訪ねてきたと供述する。
バーネットはジョーの話を裏付けるが、ブリスコーとローガンは2人が口裏を合わせていることを疑い、今度はバーネットの自宅を訪ねる。バーネットは妻に自分の性癖を知られることを極度に恐れており、刑事たちの追及に対して、ダーバン議員がジョーの裏業を知っていたこと、それで彼を捨てようとしていたことなどを話し「何でも望みどおりのことを言うから帰ってくれ」と口走る。
その後、ダーバン議員が尽力した選挙区の区割り変更でクロスリー議員の選挙区がなくなる予定になっていたことがわかる。また、凶器の銃は1985年にブルックリンの銃砲店から盗まれたものだったが、その事件を担当したのは当時警官だったクロスリーだった。その事件では、犯人は16丁の銃を持っていたはずだったのに証拠として提出されたのは15丁。
ダーバンには動機があり、凶器にアクセスすることもでき、緑色のコートを所持していたこと(かつそのコートは現在自宅にもオフィスにもないこと)もわかっていた。現場付近で捨てられていたコートに付着していた毛髪は、クロスリーの毛髪と特徴が一致する。政治的に大きな問題が生じることは予測できたが、シフもクロスリーの起訴に同意する。
弁護人のパウエルは、証言を通じてジョー・ギブが犯人であるかのように印象付ける。マッコイは対抗してバーネットを召喚し、ジョーのアリバイを証言させる。だが反対尋問に立ったパウエルは、バーネットの秘密(隠れゲイであり男娼を買っていたこと)を暴くような脅しをかける。アウティングを死ぬほど恐れているバーネットは、パウエルの追及に耐えかね「時刻は正確に覚えていない」と言ってしまう。
対抗してマッコイはローガンを召喚し、バーネットに圧力をかけたこと――つまり、バーネットは脅されれば相手の望みに応じて証言を変えようとすることを証言させる。パウエルはローガンの行為が強要罪に当たることを指摘し、さらにゲイの恋人同士の争いが暴力事件に発展することが多いという証言を引き出していく。警官の間では、そのような事件がしばしばホミサイドならぬ「ホモサイド」と揶揄されるのだった。
クロスリーは自ら証言し、次の選挙では市議を引退して他所へ移るつもりだったので自分に殺害の動機はないと証言する。証言中、クロスリーはゲイに対して侮蔑的なことを何度も口にし、傍聴席ではダーバンの支持者だったゲイの活動家たちが騒ぎ出す。判事は彼らの退廷を命ずるが、それに対しクロスリーはさらに「見たか!あれが連中の本性だ」と煽り続ける。
評議の結果、陪審員は評決不能という結論を出す。裁判所の外ではダーバンの支持者たちがシュプレッヒコールをあげ、クロスリーが出てくると混乱状態になる。ブリスコーとローガンはクロスリーをガードして車に乗せるが、そこでクロスリーに「俺たちは仲間だろ」と言われて怒ったローガンは、クロスリーを思わず殴ってしまう。
裁判をやり直すことは可能だが、マッコイは「クロスリーがゲイバッシングを繰り返すだけだ」と消極的な態度を見せる。ローガンは今回の処分として、スタテン島のパトロールに左遷されることになるであろう。
感想
マイクさよならエピ。思ったよりあっけなく去って行ったなぁ……というのが最初の印象。ストーン検事の時は、本人がシフに別れを告げて出て行く場面があったけれど、今回はマッコイとキンケイドの間で会話が交わされただけ。でも、殉職でも辞職でもないしね。ブリスコーもヴァン・ビューレンもきっとマイクを励ましていると思うし、この後またCIで会えるもんね。
マイクが降板することはわかっていたので、今シーズンの特に後半で、マイクの少年時代のことが取り沙汰されたりするのが「さよなら特集」のようで、別れが近づいているんだなぁ……と、出番が増えるたびに逆に寂しくなってしまった。今シーズンは、前半はマッコイに馴染むため、後半はマイクとお別れするためのシーズンだったように思う。今後もキャストは毎年のように入れ替わることになるはずだけど、そのたびに毎年「お披露目」と「お別れ」をやるのはちょっと勘弁してほしいような気がする。もうちょっとこう、淡々と進めてくれるといいな。
今回マイクが降板して、パイロットから出演している「オリジナル」メンバーは1人もいなくなってしまった。シーズン1からのキャストではアダム・シフが残っているが、地方検事は出番も少ないし、やはり「ビッグ4(OPで並んで歩いて来る4人)総入替え」は寂しい。また、次シーズンからはNY州の法制度でも死刑制度が復活する(その後2004年に違憲判断)など変化があったようで、ここでひとつの時代が終わっていくのだなぁ……と、しみじみしてしまった。
降板理由は、どうやら刑事2人のキャラが似すぎていて、「何にでも同意する」「対立やコントラストがない」という制作上の都合だったらしいのだけど、私はマイクとレニー、良いコンビで安心して見ていられて良かったと思うけどな。後半の検察パートにはあまり笑える要素がないので、マイクの存在に癒されたことも少なくなかった。軽口を叩きつつも、時に熱くまっすぐな感情を見せるマイクの存在は、司法のロゴスと視聴者の感性をつなぐ重要な存在、エピソードに血を通わせる Heart of Law & Order であったと思う。今までありがとう、マイク。しばらくお別れだけど、スピンオフでまた会おうね。その前に Exiled が見られればもっと良いんだけど。
今回の元ネタは、映画にもなったハーヴェイ・ミルクの事件だそうだ。事件そのものは、ゲイの政治家が射殺されたという以外に、それほど共通点はないような気がするが、被害者のダーバン議員の人物像にはミルクからインスパイアされた部分があるような気がする。事件描写では、証人のバーネットを演じているロバート・ジョイが良かった。現在CSI:NYの名物検死官としてモルグで変態話に花を咲かせているお姿からは、想像もできないようなオドオドっぷり。意地悪な弁護人は、The Wireのフェラン判事だった。
— Yoko (yoko221b) 2010-07-04