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Law & Order - Season 6, Episode 6
#117 Paranoia
- 邦題:「パラノイア ~妄想の敵~」
- 脚本:Michael S. Chernuchin
- 監督:Fred Gerber
- 初回放映:1995-11-15
事件概要
People v. Megan Maslin (判事:Grace Larkin)
女子学生アリソン・ライクが寮の部屋で27箇所も刺されて死亡する。性的暴行の形跡はなかった。アリソンのボーイフレンドのジョシュは、性的ファンタジーを投稿するBBSで、殺人の様子を詳しく記した文章を見つけて、通報しようと思っていたという。その「ファンタジー」で殺される女性は、名前も容姿もアリソンに似ていた。そのBBSは、性や暴力をテーマにした文学の授業で「課題図書」に指定されていたため、刑事たちは学生の誰かが書いたのではないかと疑う。
カーティス刑事はBBSからメッセージを投稿して誘い出すことを思いつく。ブリスコー刑事は以前に児童ポルノで逮捕した業者を囮に使い、メリル・グラップという名前を突き止める。アリソンのルームメイトだったメーガンは、メリルがストーキングしていたことや、犯行当日に寮の近くで彼を見かけたことなどを話す。
だが、メリルは当日ネットに投稿していたというアリバイがあり、一方でメーガンの供述には時系列上の矛盾があった。そこで刑事たちはもう一度調べ直すために寮へ行き、アリソンのベッドの上で倒れているメーガンを発見。メーガンは朦朧とした状態で「私がやったの、ごめんなさいアリソン」とつぶやく。カーティス刑事は摂取した薬品を調べようと近くを探し、薬ビンとナイフを発見。それはアリソンを殺害した凶器だった。病院を訪れたキンケイドの所へ、メーガンの弁護士のミシェール・ケイツが現れる。
ケイツは、メーガンの「自白」がミランダ警告も弁護士の立会いもなしに行われたことから、証拠からの排除を求め、ナイフの発見も令状なしの捜索であったことから排除を求める。マッコイは、メーガンの自白は自発的なものであり、またナイフの件も、摂取した薬を探すという目的があったので正当な物だと主張。判事は両者の言い分を半分ずつ認め、自供は採用、ナイフは不採用とする。
しかし「私がやった」というだけでは殺害の自供としては弱いため、キンケイドは背景事情を調べる。メーガンは12歳の時に父親を交通事故で亡くし、母親はその半年後にガンで死去。姉が成人していたため、メーガンは施設に入ることなく奨学金を受けたが、その姉は現在ユタに転居しているという。
エリザベス・オリヴェットは、思春期前に相次いで両親を亡くしたことから被害妄想的な傾向に陥り、挫折を経験することでそれがさらに強められたという可能性を指摘する。普段は普通に見えても、ふとしたことで妄想に陥り、最も身近にいる親友が「敵」に見えることもあり得るという。
マッコイはメーガンがまだ意識不明だった時点で弁護士が現れたことを思い出す。ケイツは以前からメーガンの代理人だったという前提に基づいて事件を検索したところ、当事者の名は伏せられていたが「交通事故とガンで両親を亡くした14歳の少女が、姉をナイフで刺殺した」事件をケイツが担当していたことがわかる。姉は転居したのではなくメーガンに殺されていたのだ。
ケイツは、メーガンが姉に虐待されていたことやリハビリがすでに完了していることを主張するが、オリヴェットはメーガンに面接し、被害妄想症の可能性ありと判断。
マッコイは「精神疾患を理由に無罪を主張するなら理解する」と言うが、弁護人は「依頼人が自分は正気だと言って承諾しない」と拒絶。シフは「嘘をついて奨学金を得たことは詐欺罪にあたる」と指摘し、メーガンは詐欺罪で起訴される。
公判が始まり、マッコイは「詐欺罪を証明するため」としてメーガンの前歴を尋問で持ち出そうとする。判事は「正門から堂々と通せない物を裏口から通すわけにはいかない」と却下するが、同時に弁護側に対しても「被告人が嘘をついたことは事実であり、弁護側はその嘘が正当であると陪審員を説得しなければならない」と言い渡す。これで弁護側はメーガンに証言させざるを得なくなる。
メーガンは、姉に虐待されたので自分の身を守るために殺したと証言する。反対尋問に立ったマッコイは、アリソンを殺害したナイフを取り出す。それはすでに別の判事によって却下されていたが、マッコイは「証人の信頼性を崩す目的では排除されていない」と主張し、判事もそれを認める。マッコイに挑発されたメーガンは「私はフィルハーモニーの第1バイオリン奏者になれるはずだったのに、アリソンが松脂を隠したのでできなかった。アリソンは私の歯磨きに毒を入れたり水にガラスの欠片を入れたりしたので、私は自分の身を守っただけ」と叫びだす。マッコイはその場で第2級謀殺を起訴事実に加えることを要請し、判事もそれを認める。
ケイツはメーガンを説得し、精神疾患を認めさせる。
感想
このエピソードは6話目だが、制作された順ではもっと早かったらしい。ダイナーの食事や被害者両親への応対をめぐってブリスコーとカーティスがやや対立気味なところに、そのあたりが垣間見える。また、このエピソードではカーティス刑事の家族が職場を訪問する場面があるが、こういう形で家族が登場したのは初めてだろう。今までも、刑事たちの妻やヴァン・ビューレンの息子が登場したが、いずれも事件に絡む形や本人が殉職/負傷して登場するというパターンなので、こういう扱いはかなり異例だ。
ダイナーでのやり取りは、ブリスコーが以前担当した事件の遺族がウェイターで、お礼にいつも食事をサービスしてくれるというもので、確かローガンの時にも同じ話は出てきたと思う。今回は「それってモラル的にどうなの」ということで、後半のマッコイとケイツ弁護士のやり取りにも関わってくる。
後半では、被告人の処遇をめぐってマッコイとケイツの間で何か良からぬ取り決めがあった様子。そもそも検察側は、被告人は妄想にかられて被害者を殺したので、刑務所よりも病院に入れるべきだと考えており、弁護人も内心はそれに同意しているのだが、依頼人の意向に反することもできず――苦肉の策として、何とか依頼人に精神疾患を認めさせるためにマッコイと手を組んだ、ということなのではないかと思う(実はよくわかってない)。「バレたら弁護士資格を失いかねない」というから、かなり危ない橋を渡ったことになるのだろうが、このケイツさんは「依頼人さえ無罪放免になれば後はどうでもいい」タイプではなく、本当に本人のことを考えている弁護士らしい。
ところで、アリソンの恋人ジョシュを演じたのはピーター・サースガード。マジか全然わからなかった。
— Yoko (yoko221b) 2011-11-05