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Law & Order - Season 6, Episode 19
#130 Slave
- 邦題:「かばう少年」
- 脚本:René Balcer, Elaine Loeser
- 監督:Jace Alexander
- 初回放映:1996-04-21
事件概要
People v. Lonnie Rickman (家裁判事:Taryn Bren)
年配の女性が自宅の寝室で寝ている間に射殺される。だが隣で寝ていた夫は何も気づかなかったと主張する。銃弾と傷の浅さから、かなり遠くから撃ったものとわかり、弾道を調べた結果、向かいの建物の屋上から撃った流れ弾が当たったものと思われた。
目撃者の話から、ロニー・リックマンという13歳の少年がその場にいたことがわかる。事情を聞くと、ロニーは「屋上には行かなかった」と言い張り、反抗的な態度を見せる。ブリスコーは少年の手に火傷の跡があったことから、ロニー自身が撃ったのではないかと疑う。
ロニーはその日、友達のクレイトン・ドイルと一緒にいたと主張。クレイトンの両親はその日、息子が頭にかすり傷を負って帰って来たことを覚えていた。クレイトンはバスケをしていて怪我をしたというが、脅えて震えていたという。両親は、ロニーがクレイトンを悪事に引き込んで麻薬を売らせたと言い、不快感を見せる。
クレイトンは、ロニーが「ロス」に命じられて銃を自分の頭に突きつけたことを認める。ロス・モラレスは麻薬売買のボスで、クレイトンが彼の下で麻薬を売ることを嫌がったせいだという。ロニーは1発撃ったが外し、もう1回撃とうとしたが、弾が詰まったため命拾いをした。
刑事たちはロス・モラレスがロニーと一緒にいるところを取り押さえ、麻薬を発見してその場で逮捕。ロニーも殺人罪および殺人未遂罪で逮捕される。
ロニーはロス・モラレスとの関係を否定し、クレイトンを脅すつもりで銃を突きつけたのは自分の考えでやったのだと主張する。
ロニーは殺人罪で起訴されるが、弁護人は取調べに弁護士が同席しなかったことを理由に自白の排除を要求。母親もロニー本人も弁護士を断っていたが、「被告人はまだ13歳、母親はクラックを常用し、正常な判断ができなかった」というのがその根拠であった。判事は弁護人の主張を却下するが、弁護人は「ならば家庭裁判所で審理してほしい」と食い下がる。重罪だからとマッコイは反対するが、心理学者と面接させるよう命じられる。
ロニーと面接したオリヴェットは、彼が母親から虐待されていることに気づく。オリヴェットはロニーを家庭裁判所に送った方が良いと判断したため、マッコイも同意するが、ロス・モラレスをこのままにしておくわけにもいかない。ロニーを協力させるためには、「他にも証拠があり、どっちみちロスは有罪なのだから」と言って説得する必要があった。
クレイトンはロスと直接命令を受けたわけではないが、ロスはロニーを従わせるために、反抗すると母親を傷つけると言って脅していたことを知っていた。またロスは、ロニーが他の人間と関わることを禁じていたという。一度、ロニーが呼吸困難に陥り、クレイトンが救急車を呼ぶと、ロスは「まず俺を呼べ」と怒り、病院に乗り込んでロニーを連れ出していた。
ロスの弁護人は、ロスが所持していた薬物は自分で使用するためのごくわずかな物にすぎないとして釈放を求める。マッコイは、別の容疑での捜査中だとして反対するが、判事は「翌日までにその別件で起訴するか、でなければ釈放」と決定する。殺人での証拠が固まらないため、ロニーを病院から連れ出したことを理由に誘拐で立件することにする。
ロスは、自分は少年たちのヒーローであると自慢し、ロニーのことは「母親から任されている」と主張。母親もその主張を裏付ける。
マッコイは、ロニーの母親が麻薬を買う金に困って息子のフードチケットすら売り払っているという話を思い出す。そこまで金に困っている彼女が、どうやってロスに薬代を払えるのか――彼女はロニーをロスのために働かせることでそれを賄っていたのだった。マッコイは「お母さんを守りたいなら証言しろ。そうすればお母さんを罪に問わず、君は家庭裁判所で審理を受けられる」と説得。
ロニーは証言を断るが、マッコイらは母親を呼び「モラレスの悪事を証言すればロニーの罪は軽くなる」と言うが、彼女は息子よりも自分のことばかり心配し「ロニーは人殺し、どうにでもなればいい」と言い放つ。マジックミラーごしにそれを見たロニーは、ようやく証言に同意。母親の借金のカタにロスの雑用をこなし、麻薬を売り、クレイトンを殺せと言われたがわざと狙いを外したことなどを証言する。
ロス・モラレスは第2級謀殺で有罪。ロニーは家庭裁判所で判決を受け、18歳になるまで少年刑務所に収監されることになる。ロニーは傍聴席を気にするが、母親はついに姿を現さなかった。
感想
目が覚めたら隣で寝ていた妻が血だらけで死んでいた――という悪夢のような状況。当然夫に疑いがかかるわけだが、凶器は見つからず発砲の形跡もなし。調べてみると、隣のアパートの屋上で撃った流れ弾が、たまたま開いていた窓から飛び込んで頭を直撃したという、嘘のようなすごい偶然の悲劇だった。
撃ったのはまだ13歳の少年ロニー。重罪であるためマッコイは高位裁判所での起訴を決定するが、弁護側は年齢を理由に家庭裁判所での審理を要求する。シーズン4の「Born Bad(片隅の少年たち)」では「14歳以上なら成人として起訴できる」と言っていたような記憶があるのだが、13歳でOKなんだっけ?
13歳の少年が屋上で友達を撃とうとしたのはなぜだったのか。実は母親が麻薬の依存症で、売人への借金のカタに息子を差し出していたことがわかる。ロニーは麻薬の売り買いなどの雑用にコキ使われていた――雑用といっても犯罪の片棒担ぎなのでバカにはできない。The Wire でも、ボスが金を受け取って子分の少年が麻薬の現物を渡すという場面があったけれど、持っているだけでヤバい物は下っ端が持たされるんだよね。The Wire といえば、今回のロニー母子はネイモンドとその母親を思い出すなぁ。
それにしても、14話「Custody(子を盗む)」のジェニーが息子を奪われて会うこともできないのに、この母子がほったらかしというのはどうなのよ。子どもの年齢が違うので比較対象にならないかもしれないが、ロビネットの言い分も理解できるような気がしないでもない。
さて、銃を撃ったのはロニーだとしても、その背後にいる元締を野放しにするわけにもいかない、というわけでマッコイは例によって、あの手この手で元締を追求し、ようやくロニーに証言させることに成功する――が、そこへ持って行くために、母親がロニーに対して愛情を持たず薬代のために利用することしか考えていないという姿を見せつけなければならなかった。ここは見ていて辛かった場面。さらに、傍聴席に母親が姿を見せなかったところでまた涙。
前半の警察パートでは、父親の体罰をめぐるヴァン・ビューレンとカーティスのちょっとした対立も印象に残る。取調室で父親が息子を引っぱたくのをカーティスは同じ父親として容認するが、ヴァン・ビューレンは警部補として、いくら親子でも取調室での暴力を認めるわけにはいかない。まぁ躾は躾としても、家に帰ってからにしなさい、という事かなと思う。
— Yoko (yoko221b) 2012-04-25