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Law & Order - Season 7, Episode 2
#136 ID
- 邦題:「カラクリ」
- 脚本:Ed Zuckerman
- 監督:Constantine Makris
- 初回放映:1996-09-25
事件概要
People v. Lucy Sullivan (判事:Nathan Marks)
オフィスビルのエレベーターで、裸で頭を撃たれた若い女性の遺体が発見される。聞き込みの結果、被害者はインディアナからNYに来てホテルに滞在しているルーシー・サリヴァンらしいとわかるが、ホテルの部屋へ行ってみると被害者に似た女性がおり「私がルーシー・サリヴァンです」と名乗る。被害者はルーシーの姉ジョアンだという。
姉妹は離れて暮らしており、ルーシーは姉の生活をほとんど知らないという。調べてみると、ジョアンは「ジョアン・ダンバー」という名でNJで逮捕状を出されていた。夫のビリー・ダンバーと組んでカジノでイカサマをしていたらしい。
ビリー・ダンバーは「ジョンソン」と名乗り、事件現場のビルでオフィスを借りていたが、現在は行方不明。自宅からはダンバーとルーシーが親密にしている写真と凶器の銃が発見され、指紋が一致したためルーシーは逮捕される。
弁護人は、犯行を裏付ける銃と動機を裏付ける写真の排除を主張。理由は、ダンバーの自宅を捜索した令状が他州の逮捕令状だった事だ。この場合、ダンバーがそこにいるかどうかを確認することはできても住居の捜索はできない。検察は、銃は自宅内を見ただけで発見できる場所にあり、また被告人のルーシーは他人(ダンバー)の住居でプライバシーを主張できないと反論。判事はロスにセクハラめいたことを言った後に、証拠採用を認める。
公判が始まるが、その途中で頭部を撃たれたダンバーの遺体がハドソン川で発見される。ルーシーは「ジョアンは誰かに追われているらしく、脅えていた」と証言する。
マッコイは、ルーシーとジョアンの郷里の人間から話を聞いていなかったことに気づき、調査を指示。その結果、自称ルーシー・サリヴァンは実はルーシーではなくジョアンで、殺害された被害者がルーシーだとわかる。ジョアンは、自分が追われていることを知り、妹を身代わりにして彼女になりすまそうとしたのだ。
弁護人は、誰が誰を殺したかを検察が把握していない以上、十分な証明に達するはずもないとして事件の棄却を要求し、判事はその場で審理無効を決定。マッコイは再起訴を要求するが、弁護人は一事不再理を破る要件がないとして反対する。被害者と加害者の身元が動機に大きく影響する以上、ジョアンは自己負罪拒否特権を行使して自分の本名を隠しても許されるというのだ。判事は弁護人の言い分を認め、殺人事件自体を棄却してしまう。
People v. Joanne Dunbar (判事:Nathan Marks, Jean Bryant)
マッコイは再起訴を求めて上訴部に訴え、再起訴は許可される。マッコイは別の判事に担当させようとするが、「同じ判事の方が事実関係に明るく、迅速に進められるから」と、再びマークス判事の担当となる。
二度目の公判が始まり、カーティスは再び凶器発見について証言するが、ここで弁護人が異議。以前は、被告人が「ルーシー・サリヴァン」だったため証拠採用が認められたが、ジョアンはダンバーの妻でありプライバシーを期待できるというのだ。判事は異議を認める。
マッコイは何とかして証言を引き出そうとあの手この手を考えて異議の間をすり抜けようとするが、とうとう判事を怒らせてしまい、法廷侮辱罪で逮捕される。
アダム・シフはマークスと面会し、ロス検事に対するセクハラ発言があったことや、マッコイの尋問に介入して証言を誘導したことなどを指摘し、事件の担当を降りるよう要求する。マークスが拒絶したため、シフは正式に苦情を申し立て、首席判事は病気を口実に判事を交代させる。
新しく担当になったブライアント判事は、マークスが却下した証拠の採用を認めたため、ジョアンは第1級故殺での取引を切り出す。「追われていて怖かった、ビリーが殺されたことがわかり、次は自分だと思った」と言うが、マッコイは「だから代わりに妹を殺したというのか?」と取引を拒絶。
感想
姉殺しの罪で妹を逮捕してみたら、実は殺されたのは妹で、姉が妹のフリをしていたというお話(原語では単に sister なので逆かもしれないが、何となく雰囲気で決めてみた)。カジノで詐欺をやったらギャングに命を狙われたので、代わりに妹を殺して入れ替り、自分は死んだと見せかけたという、何とも冷酷な殺人犯だ。
公判中に入れ替わりが発覚したため、いったん審理無効になるが、マッコイが再起訴しようとすると何かと判事がじゃまをする。この判事、現場に出向いたりしてずいぶん積極的だと思ったら、そこでロス検事に対してセクハラ発言。ロスも最初は受け流していたようだが、判事の態度は次第にエスカレートする。それに対してロスの態度もとげとげしくなり、すると判事はとたんに弁護側の肩を持ち始める。
判事が被告側に買収されて……というのは前シーズンにもあったが、今回のは単なる嫌がらせだ。セクハラ発言に抗議されて意趣返しをしようというのだから、これが高位裁判所判事のやることかと思ってしまう。マッコイはそれでも何とか証言を引き出そうと苦心するが、それが判事の怒りをかって法廷侮辱罪で逮捕されてしまう。檻の中のマッコイとは珍しい。
裁判において、証拠の採用/不採用はものすごく重大な決定だ。どうみても被告人が犯人でしかあり得ない証拠があっても、排除されれば「証拠がない」ということで無罪になることもある(被告人が犯人ではないから無罪、ではなくて、検察側の証明が十分でないから無罪になるわけ)。そんな決定を判事の気まぐれや嫌がらせでされては、たまったものではない。
この判事はシフの昔からの知り合いで、昔は理想に燃えた優秀な弁護士だったらしいのに、何をどう間違ってセクハラ判事になってしまったのか……。
で、結局シフの活躍でセクハラ判事は事件からはずされてしまう。新しく担当になった判事が、以前に排除された証拠の採用を認めたため一気に形勢逆転し、被告側は取引を要求。「命を狙われていて怖かった」という被告人にマッコイが「だから妹の命 (life) を取ったというのか?」と言い返すと「Life? あの子は田舎でくすぶっていて自分の人生 (life) なんかないも同然だった」と言うのだから、これもひどい話だ。
そんなこんなで、話としては面白かったのだが、個人的には「入れ替わりミステリ」の存在がちょっと軽くなってしまったのが残念。この謎はひじょうに重要なものである(被告人の正体がわかったために審理無効になるぐらいだから)し、もっと面白い使い方ができたと思うのだが、ストーリー上の重点がセクハラ判事との攻防にいってしまったので、謎の存在がちょっとかすんでしまったように感じられた。
今回もいくつか判例が言及されているが、People v. Ortiz 事件はどれか不明。どの文脈で出てきた事件だったか覚えてないし、事件名で検索しても新しい(このエピ放送より後の)事件しか出て来ないので……。「再起訴しなければ正義が損なわれる場合には、再起訴が認められる」という文脈で出てきた U.S. v. Perez 事件は、おそらく以下の事件だと思う。1824年って、えらく古い事件だけど。
— Yoko (yoko221b) 2012-06-10