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Law & Order - Season 7, Episode 5
#139 Corruption
- 邦題:「腐敗」
- 脚本:Gardner Stern
- 原案:René Balcer, Gardner Stern
- 監督:Matthew Penn
- 初回放映:1996-10-30
事件概要
John Flynn
ブリスコーとカーティスは囮捜査に協力するが、その途中で116分署フリン刑事が売人のルーベン・モラレスを射殺してしまう。フリンは「ルーベンが銃を出そうとした」と言うが、他の刑事は誰もその瞬間を見ていなかった。
内部調査の結果、フリンの発砲は問題なしとされたが、カーティスは、捜査対象のルーベンが、前の週に麻薬の大量所持で逮捕されていることを不審に思う。前科もあり、保釈も却下されて今頃は刑務所へ行っているはずだった。カーティスは、ルーベンとともに逮捕され、先に保釈された弟のリッチーを探す。
リッチーの話によると、ルーベンはボスのガルシアに関して検事とひそかに取引をしたという。カーティスは、フリンがガルシアに雇われて裏切り者のルーベンを殺したのではないかと疑う。ガルシアは5年前フリンに逮捕されたことがあったが、証拠を紛失したため不起訴になっていた。かつて116分署でフリンのパートナーだったブリスコーは最初その話を一笑に付すが、カーティスとともに調べていくうちに、フリンが状況をお膳立てし、ルーベンをおびき出して射殺し、口裏を合わせるようパートナーに指示していたことがわかり、フリンは殺人容疑で逮捕される。
マッコイ検事は、第1級謀殺で死刑を求刑することも可能だと言って脅し、第2級謀殺に落とす代わりにガルシアに不利な証言をするよう取引をもちかけるが、その時点では直接フリンを示す証拠がなくフリンは拒絶。
ロスはフリンの愛人を発見し、フリンとガルシアが親しかったという供述と証拠を得る。改めて交渉したところ、フリン側が証人保護プログラムを要求し、今度はマッコイが拒絶。ガルシアはメキシコにおり、当局に引き渡すよう求めるには逮捕状が(つまりフリンの証言が)必要だった。ガルシアを捕らえるべきか、警察の信用を守るために悪徳警官を起訴すべきかで、検事の意見は分かれる。
マッコイは、警察官の不正を追及しているヘルマン判事の呼び出しを受ける。判事は聴聞会でフリンに証言させ、量刑を軽くする代わりに、ネズミ講式にさらに多くの悪徳警官の情報を得ようとしていた。
フリンは聴聞会で、ガルシアの氏名を伏せたうえで「ルーベンを殺さなければ今までの悪事を暴露すると脅された。キャリアは惜しくなかったが、家族に危害を加えると脅されたので従うしかなかった」と証言。さらに「囮捜査にレニー・ブリスコーを加えたのは、かつて(5年前のガルシアの事件で)証拠品の麻薬を盗んだことがあったからです」と述べる。ブリスコーは委員会で「その話は嘘だ」と主張。その当時ブリスコーはアルコール依存症で、勤務時間なのに飲酒して家で寝ていたため、アリバイを証明することはできなかった。
ロス検事は、当時116分署に勤務していたスペンス巡査が犯人であることを突き止めるが、スペンスはすでに死亡。一方、ブリスコーのもとへ、かつての同僚だったベティ・エイブラムズが訪ねて来る。ベティは盗難事件があった日、ブリスコーとともに過ごしており「それを証言する」と言うが、ブリスコーは2人の関係が不倫だったことを理由に反対する。だがベティはブリスコーを無視して委員会で証言。判事は彼女が家族に何度も嘘をつき、ブリスコーの他にも浮気相手がいたことを追求する。
ブリスコーはマイクを身に着けて教会でフリンを待ち伏せ、「盗んだのはブリスコーではない」という言質を取る。判事は誤認を認め、ブリスコーらは偽証罪でフリンを逮捕しようとするが、フリンは拳銃で自殺してしまう。フリンの死によって追及を逃れられると知ったガルシアはNYへ戻る。
感想
実はこのエピソード、何年か前にすでに視聴済み。「デンジャラス・ウーマン」の後半に収録されているためだ。
「デンジャラス・ウーマン」とは、ジュリア・ロバーツがゲスト出演したシーズン9 “Empire” とこの “Corruption” をまとめて1本の映画のように編集した作品で、別にストーリーがつながっているわけでも何でもないので、予備知識なしに見た人はかなり面食らったようだ(無理もない)。このエピソードが選ばれたのも、前半がカーティス刑事中心だったから、後半はブリスコー刑事中心で、というぐらいの理由ではないかと推測している。特に日本語版(下左)はジュリア・ロバーツ主演の映画のようなパッケージに仕立るという詐欺まがいの売り方。これの原本と思しきUK版の “Corruption Empire”(下右)は、ちゃんとL&Oだとわかるパッケージになっているのにねぇ。
さて、それはともかくこのエピソードは、囮捜査が被疑者射殺事件に発展するという話。囮捜査を指揮したフリン刑事は、最初からとにかく口裏を合わせようと画策し、カーティス刑事に対しても圧力をかけてくる。このフリン刑事、前年は「ホミサイド」でマンチにストーキングされていたっけな。
フリン刑事は逮捕されるが、さすがに警官だけあって一筋縄ではいかない。直接的な証拠がないからと強気に出るかと思えば、新たな証人出現で状況が変わると、黒幕に対する証言と引き換えに証人保護を要求する。検察の側も、手下のフリンを見逃してでも大物を捕らえるべきか、それとも悪徳警官を処罰するべきかで意見が分かれるし、そこへ警察の不正を追及している判事も乱入してくる。
実行犯を処罰すべきか、小物を見逃して大ボスを挙げるべきか、というのはいつでも議論の分かれる所だ。それでも犯罪組織(民間人)なら小物を見逃すことにまだ寛容になれるだろうが、警察となると、末端の警官でも市民の信頼を担い権威を背負っているのだから困りものだ。警察組織全体の信用に、ひいては社会秩序そのものに(文字通り「法と秩序」の体系に!)関わってくるのだから。
しかし結局は判事の鶴の一声で、フリン刑事を糸口にして悪徳警官の情報を引き出すことになるわけだが、そこでフリンが口にしたのが、何とブリスコー刑事の名前! カーティスが捜査を始めた時に庇ってくれなかったことへの仕返しなのか? あろうことかブリスコーが証拠品の麻薬を盗んだと言い出す。
ブリスコーにしてみればまったく身に覚えのないことだが、当時のブリスコーもまったくきれいな身だったわけではない。結局ブリスコーがマイクを着けてフリンから言質を取るが、逮捕を目前にフリンは自殺。この結末は、シーズン1の「Poison Ivy(堕ちたヒーロー)」を思い出した。
教会の場面から察するに、フリンはカトリックのようだ。ブリスコーに対して罪を認めた時は、マイクの存在を知って半ば諦めていたのだろうか。それとも、教会で嘘をつくことがどうしてもできなかったのか……しかし結局は、神に背いて自殺してしまう。ここに至る心理には何か複雑な変遷や葛藤があったのかもしれない。
フリンの死によって、大ボスのガルシアは逃亡先からNYに戻り、相変わらず犯罪組織のトップに君臨するようだ。ベティさんは家庭の危機を迎えている様子。それだけの犠牲を払ったのに、結局証言は信じてもらえず、無駄に終わってしまったのが気の毒だ。ちなみに演じている Caroline Kava さんはシーズン1「生命の行方」にもご出演。ぜんぜん印象が違うので最初はわからなかったし、わかってからもう一度見てもやはり別人に見える~。
ところで、脚本を書いたルネ・バルサーは当初、このエピソードにキンケイド検事を再登場させたいと思っていたらしい。ジル・ヘネシーがゲスト出演を断ったので断念したらしいが、ということはこのエピソードの案はシーズン6のフィナーレを撮る前に既にあったということか(あるいは重傷を負ったが命はとりとめたという設定で?)。
また、ベティさん登場のくだりは “Long Black Veil” という曲がヒントになったとのこと。この曲はもともと Lefty Frizzell というカントリー歌手の歌で、多数カバーされている。バルサーが言及したのはザ・バンドの “Music From Big Pink” のものだが、私はジョーン・バエズ版で聴いた。
— Yoko (yoko221b) 2012-06-10