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Law & Order - Season 7, Episode 6
#140 Double Blind
- 邦題:「ダブルブラインド」
- 脚本:Jeremy Littman, William N. Fordes
- 監督:Christopher Misiano
- 初回放映:1996-11-06
事件概要
People v. Allan Sawyer (判事:Rebecca Steinman)
清掃員のグレッグ・フランクリンが自宅で射殺される。犯行は計画的で、クッションを使ったため銃声を聞いた隣人もない。被害者はごく普通の清掃員で、最近までハドソン大学の清掃を請け負っていた。隠し財産も男女関係のトラブルもない。
使われた銃弾は、水銀を用いたホームメイド。組織犯罪課に問い合わせたところ、同じ手口の殺し屋がいたことがわかるが、活躍したのは1950年代で、現在は引退している。だが彼の手口は『暗殺技術マニュアル』という本に載っているという。
その本は書店ではなくメールオーダーで流通している。出版社に顧客リストを提出させて調べたところ、ハドソン大学で水俣病について研究しているアラン・ソーヤーという学生が浮上する。アランは、フランクリンが勤務していた精神医学教室で、新しい向精神薬の被験者になっていた。
状況証拠はいくつも集まるが、決定的な物的証拠は見つからず、どこから攻めてもうまく言い逃れる。しかし、寮の温度計から水銀が紛失し、そこにアランの指紋があったことから、アランは逮捕される。アランはフランクリン殺害を認め「彼はテンプル団の騎士で600年も生きており、自分を殺そうとした。王と教皇に命じられて殺した」と言い出す。
弁護人は、精神疾患を理由に無罪を主張。精神医学課のヴァリック博士は、アランを統合失調症と診断していたが、博士は「薬を服用していていれば、王や教皇などの妄想の声を聞いたはずがない」と断言する。
次に弁護人は、アランが取調べ中に「両親に会いたい」と言ったのに拒絶されたことを根拠に、自供の排除を要求。アランは未成年者ではないので両親の立会いは必要ないが、アランの父親は弁護士だった(ただし他州の企業弁護士)ため、判事は弁護側の言い分を認める。他の証拠としては温度計の指紋があるが、他の学生の指紋も多数あったため、判事は「十分な根拠がない」としてアランを釈放する。
ロスは、アランの父親が犯行に使われたものと同じ型の銃を登録していることに気づき、その点を問い質す。アランの両親は、息子が妄想に捕らわれていたことを話し「ヴァリック博士は間違っている」と言い出す。
アランは検察側の医師から妄想の症状があると診断を受けるが、ヴァリックは相変わらず「投薬を受けていれば安全だ」という主張を繰り返す。判事はヴァリックの言い分を認めるが、ロスはアランが「声を聞いた」直後の時期にも完璧なスコアを出していること、副作用について何も記載がないこと、ヴァリック博士が助手を出廷させないことなどを不審に思い始める。
ロスはヴァリック博士の過去の記録を発見。博士は1993年までダービー大学で投薬実験を行っていた。被験者のひとりは、最初のうちだけ劇的な効果を示したものの、その後症状を悪化させていた。両親は実験を止めて薬を変えて欲しいと懇願したが、ヴァリックは聞き入れず、とうとう被験者は自殺している。
今回の実験に出資した製薬会社や、実験助手などから話を聞いた結果、ヴァリック博士はダブルブラインドの原則を破り、新薬に都合の良いデータを捏造していたことがわかる。報告書には助手にサインさせ、いざとなれば責任を押し付けようとしたのではないかと思われた。アランは最初のうちだけ目覚しい成果を上げたが、そのうちに症状が戻り悪化したが、博士は新薬に固執し、結果を捻じ曲げてきたのだ。アラン自身も薬が効いていないことを自覚し、脅えた様子を見せ「グレッグ・フランクリンを殺す命令を受けた」と口走ったという。助手はただ「何も起こりませんように」と祈っていたと認める。アランは治療施設に行くことに決まる。
People v. Christian Varick (判事:Herman Mooney)
ヴァリック博士はアランの症状が再発し、フランクリンに対して殺意を持ったことも知っていたが何もしなかった。マッコイはその責任を追及し、第2級故殺罪でヴァリックを逮捕。ヴァリックは、実験にはミスはつき物であり、これが殺人になるなら、科学界全体に対する脅威であると主張する。
マッコイは実験の財務記録を調べ、PETスキャンの予算が計上されているのに記録がないことに気づく。だがアランはスキャンを受けたことを覚えていた。スキャンを行った施設で記録を調べたところ、アランの症状は統合失調症ではなく脳腫瘍によるものだったことがわかる。ヴァリックは急いで結果を出すことに固執し、アランに適切な治療を受けさせなかった。早期に手術していれば治癒する可能性もあったが、今となってはアランに残された時間は1~2年だった――。
感想
発端の事件は清掃員殺害事件だが、この被害者の存在は何だか途中から忘れ去られた感じ。
前半で容疑者を割り出す糸口になった『暗殺技術マニュアル』という本だが、これって実在するのかな? 日本で自殺マニュアルの本が出版されて問題になったのも、ほぼ同時期だったように記憶しているが、さすがに暗殺マニュアルは出版されていないと思う。まぁ現在はネットで何でもありそうだけど……。
アランを割り出す過程もいろいろ具体的で面白かったのだが、途中からヴァリックの悪質さがメインになり、なんだか印象が薄まってしまった。このヴァリック教授、強引な実験で被験者を自殺に追い込んだり、新薬に都合の良い結果を捏造したりとやりたい放題。しかも実験記録には助手にサインをさせ、いざとなると責任を押し付けるつもりだったようだ。その背後では、出資者である製薬会社との間で巨額の資金が動いていた。で、それを追及されると科学界の権威をかさにきて「実験にはミスはつき物」などと言い出す。まったく何て奴!
しかも、ヴァリックの罪はそれだけではない。アランはそもそも統合失調症ではなく、奇行の原因は脳腫瘍だったのだ。もっと早くに発見していれば治療も可能だったのに、ヴァリックがそれを見落として無駄な投薬実験を強行したため、結局手遅れになってしまった。
アランは優秀で前途有望な若者だったのに、水俣病を研究テーマにしていた彼自身が企業犯罪に倒れるという悲しい結末になってしまった。
今回アランの事件を担当した判事はレベッカ・スタインマン判事。少し前の「Good Girl」には「レベッカ・スタイン」という判事が登場している。例によってIMDbで確認してみると、スタイン判事は Joan Copeland、スタインマン判事は Susan Blommaert が演じており、別に混在しているわけでもなくそれぞれにキャラが一貫している様子。なので単に似た名前の別人ということなのだろうが、何だかややこしいな。
— Yoko (yoko221b) 2012-06-17