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lao:s07:141_deadbeat

Law & Order - Season 7, Episode 7

#141 Deadbeat

  • 邦題:「温情」
  • 脚本:Ed Zuckerman, I.C. Rapoport
  • 監督:Constantine Makris
  • 初回放映:1996-11-13

事件概要

People v. Max Schaeffer (判事:Annette Connors)

フロリダから来たマイケル・マローンという男性が宿泊先のホテルで殺害される。別の客は銃声を聞き、緑色のジャケットを着た男が逃げるところを目撃していた。

マイケルと会う予定だったポゴジアン兄弟が事件を知らずに訪れ、署に連行される。彼らは暴行や偽造などの前歴があり、マイケルとは「車のビジネス」の話があったという。マイケルは取引のために現金を用意したはずだが、それは部屋からなくなっていた。

マイケルのクレジットカードの口座は、マイアミ在住のヴィクトリア・ルイスという女性のもの。ヴィクトリアがNYへ向かったことがわかり、刑事たちは飛行機の便名を調べて空港で待ちうけ、迎えにきたふりをして彼女を連行する。

ヴィクトリアはマイケルがFBIで潜入捜査をしており、そのためマフィアに恨まれていたと話す。また、ニカラグアでCIAのために働いたこともあるという。

だがヴィクトリアからマイケルの別名「マイケル・ウェバー」を聞いて調べるたところ、マイケルを追っていたのはマフィアでもカストロでもなく前妻のアリーンだとわかる。養育費未払いの訴えを起こされていたのだ。息子が白血病で治療費がかかるのに、マイケルは息子に会おうともせず、全米を逃げ回って金をまったく支払っていないらしい。また治療には骨髄移植が必要だが、母親も祖父も適合せず、父親のマイケルが最後の望みだった。支援団体は回収代行業者をフロリダへ派遣したが、成果はなかったという。しかし、ヴィクトリアの話と照合してみると、マイケルはヴィクトリアの口座から金を引き出して、その代行業者を買収していたのだ。

アリーンとその父マックス・シェーファーは、マイケルとは音信普通だったと言うが、代行業者に連絡先を教えたのは実は彼らだった。マックスは洗濯物を集めて回る仕事をしており、犯行当日も決まったルートを通ったと主張するが、詳しく調べてみると、通常とは違ったルートを取り、現場近くを通っていたことがわかる。マックスは現場にいたことを認め、逮捕される。

マックスは殺害を否定し、部屋を出た時マイケルはまだ生きていたと主張する。だがカーティスとブリスコーは、マックスの立ち寄り先に拳銃が隠してあるのを発見する。拳銃からマックスの指紋が検出されると、弁護側はそこで「正当防衛だった」と主張を変える。マイケルが銃を出して争ったというのだ。アリーンはマイケルから虐待を受けた過去があり、陪審が彼女に同情することは明らか。また、孫への骨髄移植が可能かもしれない相手をわざわざ殺す動機もない。

マッコイとロスは第2級故殺で取引しようとするが、マックスから発砲の状況を聞いたマッコイは「気が変わった」と取引を中止する。マイケルはフロリダから飛行機で着いたばかりで、荷物はカバン1つ。大金を入れていたから空港で預けたはずはないし、荷物タグもない。拳銃を持って来ることはできなかったはずだ。

しかしそう言われた弁護人は「マックスが護身用に持っていた拳銃だった」と話を変える。

事態に業を煮やしたシフは「取引をしろ」と命じるが、そこで「そもそもマイケルの滞在先を誰がなぜ知っていたのか」と口にする。

あらためてポゴジアン兄弟に問い質したところ、仲介をしたのは養育費の回収代行業者だったとわかる。マッコイが「計画的にマイケルをおびき出して殺害し金を奪ったとなると、死刑の求刑も可能だ」と言って脅すと、業者はマックスに頼まれてポゴジアン兄弟に話を通しことを認め、「殺すとは聞いていなかった」と主張する。

マッコイは再度話し合いの場を設け、それらの事実を提示。マッコイがアリーンの関与を示唆すると、マックスはそれを遮り「アリーンを巻き込まないなら、何でも取引に応じる」と言う。結局第1級故殺罪で量刑は判事に一任することになり、マックスは当日のことを話す。マックスはアリーンが持っていた古い医療記録から、マイケルが適合しないことを知っており、彼をおびき出して殺し、金を奪ったのだ。

ようやく取引が成立するが、ロスは「アリーンはどんな医療記録を持っていたのか」と不審に思う。実際、過去の医療記録から移植の適合を判断することはできない。アリーンは血液型からマイケルがビリーの父親でないことを知ったのだ。マイケルが電話して移植適合のテストを受けると言った時、親子でないことがわかれば養育費の請求が無効になってしまうとアリーンは脅えた。そして、息子が少しでも長く生きられ、少しでも幸せになるために金が必要だったのだ。

マッコイは「アリーンを逮捕すればビリーは独りで死ぬことになる」とためらいを見せるが、「今は無理でも殺人に時効はない」と、事件書類を未決事件のトップに置く。


感想

ホテルの一室で殺害された男、マイケル・マローン。中古車のビジネスでNYに来たようだが、何だかうさんくさい。恋人には「FBIで囮捜査をしたのでギャングに追われている」「ニカラグアでCIAの作戦に参加した」と吹きまくっていたが、実際には前妻から養育費の請求を起こされて全米を逃げ回っていたのだった。恋人も、スパイ映画の主人公になった気分で口座を貸したりして協力して(利用されて)いたようだが、実際に誰から逃げていたのか知っていたら、まず協力はしなかっただろうなぁ。

で、マックスを署に呼んで取り調べている途中で現れた弁護士が面白かった。従兄弟だというのだが、弁護士とはいえ不動産が専門で刑事事件はまったくの専門外。刑事たちの目の前で「やったのか? やってないなら恐れず事実を話せ、面通しもさせろ」と言い出し、刑事たちの方が「そんなこと言っていいのか?」と慌て出す始末。

マックスは起訴され、刑事専門の女性弁護士が共同弁護人に就任するが、これがジェイミーのお友達で「24」のアルバータ・ワトソンことタマラ・チュニー。この後、別の役でSVUのレギュラーキャストになるはずだ。こちらはかなり手強く、最初は無実を主張していたのに、銃に指紋があったと言えば「正当防衛」だと言い、フロリダから飛行機で着いたばかりのマイケルが銃を持っていたはずがないと言えば「マックスが護身用に持っていた銃」だとくるくる主張を変えて対抗して来る。検事2人も、それに引きずられて少々方角を見失った感がある。

そこで「そもそもマイケルの滞在先を誰がなぜ知っていたのか」とシフが一言。嘘を重ねていくうちに実はほころびが生じていたのだが、相手の言葉に翻弄されていた検事2人がシフの言葉で我に返った感じが良かったと思う。

マックス親子は、養育費を出させるために回収代行業者まで雇ったのに空振りに終わってしまい(でも実際にはこの業者、マイケルに買収されていたのだが)、この業者を通じてマイケルをおびき出していた。そういう事情がわかってみると、最初とはまったく違う状況が見えてくる。

そしてアリーンが犯行に加担していたという可能性を示唆され、マックスが取引に応じる場面。

hermitage.rdy.jp_csi_img_caps_lao_141.jpg

ここでマックスの台詞が「マイケルが適合することが(過去の医療記録から)わかっていた」となっているのだが、これは「適合しない」の間違いじゃないかなと思う。でないと話がつながらないし、その後の検事の会話

「妻が過去の医療記録を持っていなかったら、マイケルはまだ生きていられた」
「テストして不適合とわかるまでは (Until he failed the test.)」

という台詞とも矛盾する。

実際には、過去の医療記録から移植の適合/不適合を判断することはできない。アリーンは、血液型からマイケルが子どもの本当の父親でないということを知り、養育費の請求が無効にされることを恐れたのだった。確かに前半の方で、移植の望みが断たれたことに対して、アリーンもマックスもあまり動揺していないように見えたのだが、ラストに来て「なるほど」と納得した。

ロスはアリーンも共犯だと確信するが、彼女を逮捕すれば白血病の幼い息子が残され、たった一人で死を迎えることになる、とマッコイは消極的。しかし殺人に時効はないので「今は無理でもいつかは」と、関係書類を未決事件のトップに置く。しかし後日談エピソードは作られなかったようだ。

このエピソードにも元ネタがあるらしい。子どもの養育費を払わなかったせいで、殺されたのではなく実刑を受けたというケース。

  • Jeffrey Nichols, the Nation's Number One Deadbeat Dad 1)

Yoko (yoko221b) 2012-06-17

1)
記事が消えてしまったのでリンクは削除。
lao/s07/141_deadbeat.txt · Last modified: 2020-04-29 by Yoko