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Law & Order - Season 7, Episode 17
#151 Showtime
- 邦題:「ハリウッドの女 PARTⅢ」
- 脚本:Rene Balcer, Ed Zuckerman, Gardner Stern
- 監督:Ed Sherin
- 初回放映:1997-03-27
There's no clever twist to the plot. It's just the messy, ugly truth.
事件概要
People v. Edward Newman (判事:Michael Callahan)
とある弁護士事務所で「ハイディ・エリスンをどうする」「誰かが彼女を殺さなきゃ」という会話を録音したテープが発見される。その事務所は、ハイディの所属する映画会社をセクハラで訴えている女性グループの代理人を務めていた。会話内容からは、スタジオがハイディの証言を阻止しようとしているようだった。声の主はニューマンではなく、ボスであるベン・ホリングス。ホリングス側は「ハイディは死ぬ数日前に証言をしないことに決めたので動機はない」と主張するが、ハイディのアシスタントと原告グループは、ハイディが証言すると思っていた。ホリングス自身は事件当日ロンドンにおり、アリバイは確実。
公判が始まり、弁護人はカーティス刑事が「最初はグラントを疑っていたが、ニューマンを嫌っている女性(リサ)と寝てからターゲットを変えた」と印象付けようとする。検察側からはオリヴェットが出廷し、ドラッグの使用と暴力行動について証言しようとするが、この証言をめぐってまた紛糾。判事は双方から証人を出すことを決定。マッコイは大量のレポーターたちに悩まされ、ロスは元夫から子どもの養育権を奪われそうになる。
リサがLAからカーティスを訪ね、ニューマンに関する大量の資料を手渡す。その資料からはニューマンの動機が十分に裏付けられるが、同時にクレジットカードの記録が発見され、ニューマンが犯行の1時間前に、打ち合わせと称して精神科医のデュヴァルと一緒に食事をしていたことがわかる。マッコイはデュヴァルとニューマンの会話、デュヴァルとハイディのセッションの内容を証言させようとするが、医師には患者に関する情報を秘匿する義務がある。
ハイディのセッションを調べた結果、彼女の性関係や、証言を取り止めたことなどが、デュヴァルからホリングスにリークされているという疑いが生じる。だがデュヴァルにはアリバイがあり、ハイディ殺しとの関連を探っても行き止まりになってしまうため、マッコイは弁護側に伝える必要なしと判断するが、ゴートンは「被告人の無実につながる証拠を検察が隠蔽している!」と糾弾。
マッコイはゴートンに対抗する準備をするが、養育権を取られそうなロスは仕事の途中で帰宅しようとし、マッコイにそれを咎められると「辞職する」と言い強引に帰宅。
翌朝、ゴートンは「デュヴァル医師がハイディを殺した」という代替理論を展開。判事は「すべての証拠を開示するよう」マッコイに指示する。
ハイディのアシスタントは「ハイディはデュヴァル医師の裏切りを示唆するようなことは何も言わなかった」と証言するが、実は彼女自身がハイディを裏切ってタブロイド紙にゴシップネタを流していた。マッコイは自宅にロスを訪ね、もう一度仕事に戻ってくれるよう頼み込む。
ホリングスが出廷し、デュヴァル医師からハイディの私生活について聞いたことを証言。
ニューマンも自ら証言。デュヴァルとともに新しい映画の脚本を持ってハイディに会いに行ったが、ハイディは脚本に興味を示さず、デュヴァルと何か言い合いをしていた。ニューマンは気分が優れず、医師から薬をもらってのみ、そのまま寝てしまった。目が覚めるとハイディは頭を撃たれて死んでおり、デュヴァルから「君がやった」と言われた。パニックになり「遺体を切断して遺棄すれば良い」というデュヴァル医師の言葉に従って遺体をバラバラにしたのだという。
マッコイは反対尋問に立ち、「ゴートン弁護士からそう言うように指導されたのか? 念入りに予行演習し、陪審とのアイコンタクトも言われるとおりにしているのか」と言い、ハイディは個人的な恨みでニューマンに好きな映画を撮らせず、くだらない映画の仕事ばかり与えているとニューマンを挑発し、ついにニューマンは凶器を手にしてハイディを罵ってしまう。
ニューマンには死刑の評決が下される。
感想
三部作の後編に来てようやく公判開始。この回は前編とは逆に法廷メインで刑事の出番がほとんどない。証言と、最後に証拠品を取りに来ただけだったと思う。でもカーティス刑事にはとんだ災難となった。リサの誘いは断ったのに、反対尋問でこんな風に持ち出されてしまうなんて……アメリカには Court TV があるし、こんな有名事件ならばあの証言も当然TVで流れただろう。奥さんに許してもらえるのはいつになることやら。
ゴートンとロスの元夫婦対決は、思った以上にソーピー。ゴートンは、事件に忙殺されるジェイミーが「母親としての役割を十分に果たしていない」と、明らかに妨害が目的の親権争いの訴訟を起こす。そのおかげでロスは辞職するのしないのと大騒ぎ。ここまで来ると、さすがにいい加減にしてほしいと思ってしまった。今回、音楽もいつもより派手だったような気がする。
Law & Order シリーズは「事件が中心でレギュラー陣の個人生活は殆ど描かない」と言われているが、今シーズンを見ていると、かならずしも最初から最後までその方針を貫いたわけではないということがわかる。まだ長寿ドラマというほどではなく、人気が徐々に定着し始めたこの時期には、レギュラー陣の個人ドラマにシフトする可能性もあったのだろう。仮にこのまま個人ドラマ路線を続けていたとしたら? 個人ドラマをやりつくしてネタ切れになり、10シーズン前後で終わっていた可能性もあったかもしれない。この時期にしっかりと踏み止まり、事件中心の路線を貫いたことが20年にわたる長寿シリーズを支えてきたのではないだろうか。そういう意味でこの前後数シーズンは、L&Oの20年の歴史の中でも重要な時期だったのかもしれない。
それはともかく。この三部作の元ネタはやはりアレだね、1994~95年にかけて大騒動になったO.J.シンプソン事件。米国でのメディアフレンジーは相当なものだったらしい。日本でも話題になったが、ちょうどオウム真理教事件があったので、日米の制度比較のような意味合いでも注目されていたと思う。
シンプソン事件の公判が行われたのが1995年の1月から10月。で、L&Oのこのエピソードが放送されたのがその1年半くらい後、1997年3月。シンプソンは刑事裁判で無罪になった後、被害者の遺族から民事で不法死亡訴訟を起こされており、その判決が出たのが97年2月なので、時期的にはまだまだホットな話題だっただろう。
……しかし、とはいってもシンプソン事件の影響を受けたドラマとしては ABCの「Murder One」があり、この年にはシーズン2を放送中だったはず。で、こちらのニューマン事件が Murder One のシーズン1、アヴァドン事件にちょっと似ている。ハリウッドのセレブが被告人で、一流の法律事務所を雇って「ドリームチーム」による弁護戦術を展開。被告人のかかりつけのセラピストが怪しい行動を取り、弁護側はセラピストが関与した「陰謀・冤罪説」を展開して、何とか「合理的な疑い」を起こそうとする――という要素が。もちろん両者はテイストの異なるドラマなのだけど、やはり二番煎じ感がそこはかとなくついて回る感があるのが残念。
そんなこんなで、自分的にちょっとイマイチだった三部作だった。やはり1時間の枠内で捜査着手から判決までピリッとまとめる方が良いと思う。
さて、作中で言及されていた判例は以下だが、同名の事件が多数あって詳しく調べられなかったので名前だけ挙げておく。すべてデュヴァルに関する証拠の開示を争う場面で出てきたもの。
- Gonzalez :被告に有利な証拠の開示に関してゴートンが常に引用する事件。「事件に関わる証拠はすべて対象となる」
- McMullen :マッコイがそれに対して使った事件。「陪審の判断に影響しそうな証拠のみでよい」
- Jones :McMullen に対抗する判例?
最後の場面で珍しく警察組・検察組が勢揃いしていたが、その後はそれぞれに帰って行く。ブリスコーはデート。カーティスは奥さんと、ジェイミーは子どもと過ごすため。シフ(今回は珍しく傍聴席に姿を見せていた)とマッコイの「今週いっぱい休んでいいぞ」「今日は金曜ですが」「そうか。じゃ、また月曜」というやりとりは、コントみたいで笑ってしまった。
— Yoko (yoko221b) 2012-08-08