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Law & Order - Season 7, Episode 20
#154 We Like Mike
- 邦題:「善人マイクの災難」
- 脚本:Gardner Stern, I.C. Rapoport
- 監督:David Platt
- 初回放映:1997-04-30
事件概要
People v. Ricky Garcia (判事:Aldo Ianello)
車を運転していた若者マシュー・シャーマンが、タイヤ交換の直後に射殺される。現場付近で別の若い男性が目撃されており、似顔絵や会話内容から、ホテルのベルマンをしているマイク・ボダクと判明。来週結婚式を控えており、花嫁の父親は巡査部長だった。
マイクは、自分はタイヤ交換を手伝っただけで何も見ていないと主張する。多額の現金を所持しており、アリバイにも嘘があった。刑事たちが改めて問い質すと、マイクは結婚資金のためにノミ屋を手伝っていた(違法行為)ことを認める。だがジャケットに付着していた血液の型がマシューと一致したため、マイクは結婚式の最中に逮捕される。マイクは犯行を否定し「そういえばタイヤを交換した後、プエルトリコ人の男とすれ違った」と思い出す。
その後、マイクの供述と似た男が現場付近で別の事件を起こしていたことがわかり、人相を聞いたところ、近隣に住むリッキー・ガルシアらしいとわかる。ガルシアは逮捕され、ちょうど罪状認否が行われる予定だというので、ブリスコーとカーティスは裁判所へ向かう。ガルシアを署に連行して面通しをさせようとしたのだが、連絡の行き違いで警官が目撃者を裁判所に連れて来てしまう。そこへちょうどガルシアが現れ、目撃者が「あの男よ」と確認したため、ガルシアはその場で逮捕される。
ガルシアの自宅からは彼の犯行を裏付ける物証が発見される。ガルシアは全面的に犯行を認め、マイクは釈放される。
しかしガルシアの弁護人は、人物特定が正式なラインナップでなく法廷で、つまり「目撃者に先入観を与える方法で」行われたことを根拠に排除を申し立てる。判事はそれを認めて人物特定と、そこから得られた物証を排除。さらに、物証を突きつけられて自供した内容も排除される。マシューの財布だけは、ガルシアの弟が所持していた物で、自宅の外で押収されたため証拠として採用されるが、財布だけでは物証として十分ではないため、事件は棄却されてガルシアは釈放される。
他の目撃者は人物を特定できるほど顔を見ていないため、残る目撃者はマイク・ボダクのみ。マイクはしぶしぶ呼び出しに応じ、目撃した相手がガルシアであると認める。
ガルシアは再び逮捕される。判事はガルシアの逮捕自体は認めたものの、排除された物証を再び採用してほしいというマッコイの申し立てを却下する。物証が採用されない以上、検察側の決め手はマイクの証言だけになるが、マイクはガルシアの弟トニーに脅されて証言しないと言い出す。
そこでマッコイが罠を張り、トニーを逮捕。マイクはそれでも報復を恐れてためらうが、「ここでガルシアを逃せば彼はまた遠からず人を殺すだろう」と説得され、証言に同意する。
公判が始まり、マイクが証言する番になるが、彼は姿を見せない。バイト先のノミ屋が風紀課の手入れを受け、逮捕されていたのだ。風紀課の狙いはマイクではなくボスのダントーニなので、担当検事は「先に免責を与えればダントーニの事件で証言させるための取引材料がなくなる」と難色を示す。マッコイは「では免責なしで良い」と身柄を引き取るが、マイクの弁護人は「免責がなければ証言はできない」と強硬に主張。
マッコイの説得でようやくマイクは証言台に立ち、事件当日にガルシアを見かけたことを証言する。弁護側は反対尋問に立ち、マイクがノミ行為に加担していたことを持ち出すが、マイクは「自己負罪拒否特権を行使する」として証言を避ける。弁護側は証人の信頼性を裏付ける根拠として証言を要求し、判事はそれを聞き入れ「弁護人の反対尋問にすべて答えられなければ、証言はすべて排除される」と言い渡す。マイクはそれでも証言を避けたため、判事はマイクの証言すべてを無視するよう説示するが、マッコイが最後まで粘ってマイクを説得し、ようやくマイクは自分がノミ行為を補佐していたことを認め、証言はすべて採用される。
ガルシアは謀殺と窃盗の両方で有罪の評決を受け、マイクは免責される。
感想
前回のエピで「変わった構成もいいけど、そろそろ『いつものやつ』が見たいな~」みたいなことを書いてみたら、今回はオーソドックスなパターンに戻っていた。三部作や変則的な話をいくつか書いて、脚本家さんもリフレッシュできたのかな? なんて思ったりして。
そう! こういうのが見たかったんですよ脚本家さん。展開はいつものパターンだけど面白い。そして余計な個人ドラマなし! マイクがどう行動するのか、最後までハラハラと見守ってしまった。
タイヤ交換を手伝ったばかりに思わぬ事件に巻き込まれ、逮捕された挙句に命まで狙われてしまった若者マイクのお話。殺人犯かと疑われ、容疑が晴れ、唯一の目撃者として証言台に引っ張り出され、脅され、逮捕され、検事と義父と弁護人の間でもみくちゃにされている感じなのがお気の毒。
マイクも辛いよね。自分が証言しなければ殺人犯が野に放たれるが、かといって証言台に立てば、反対尋問でノミ行為を追及されるのは明らか。弁護人にしても、風紀課がどう出るのかわからないのに、みすみす依頼人にそんな証言をさせるわけにはいかないだろう。マイク側とマッコイと風紀担当の検事の3人で話し合って契約することはできなかったのだろうか。風紀課もまだ捜査途中だったようだし、その時間がなかったのかな?
マイクは結局証言することになる。自己負罪拒否特権(憲法の第5修正条項)があるので、犯行を目撃した時に「ノミ屋で働いた(=違法行為をした)帰りでした」と言う必要は本来ないはず。しかし弁護側は「証人としての信頼性」にこだわってその点を執拗に追及し、判事も「質問に答えるか、でなければ証言をすべて排除する」と言い渡す。自分の身の安全を取るか、正義を取るか。事実を隠さず証言したとしても、「ノミ行為に関わるような奴の証言だから」と信じてもらえない可能性もあるし、ここは本当に悩むだろうな。
しかしマッコイも粘る粘る。必死の説得でようやくマイクも証言に同意。この場面では本当にホッとした。それでも陪審がどう判断するかという問題は残るわけだけど、マイクの証言場面からは「これは大丈夫」という手ごたえが感じられた。
評決は有罪、そしてマイク自身が逮捕された件でも無事に免責が得られたようだ。状況が二転三転してハラハラ、でも結果的には円満解決――という、ベタといえばベタかもしれないが、それを面白く料理して飽きさせないエピソードに仕上げていたと思う。
この、突然人気者になってしまったマイク役の人、絶対どこかで見た顔だ! と思っていたら、何と「24」のティム・ウッズだった(テイラー政権の重要閣僚じゃないか)。そして被害者の妹役はCTUのミッシェルさん(こちらはすぐわかった)、マイクの義父役は The Wire のロールズさんだった。
このエピソードの元ネタは、コメディアン、ビル・コスビーの息子エニスが強盗に射殺された事件とのことだが、共通点は「タイヤ交換中に撃たれた」ということぐらいじゃないだろうか。コスビー事件で逮捕されたのは東欧出身のミカエルという男性で、名前もちょっと似ているかもしれないが、こちらのマイクは犯人ではなかったわけだし。
作中で引用された判例は2例だが、People v. Diaz は同名の事件があり、どちらも警察のラインナップ(面通し)が問題になっているようなので、どちらかよくわからず。被告人はどちらも Diaz だけどフルネームが違うので別々の事件のはずなのだ。
- People v. Diaz (1967)
- People v. Diaz (1969)
- Frazier v. Cupp :取調べで警官は嘘を言っても良い
— Yoko (yoko221b) 2012-08-19