• 邦題：「最期の誇り」
• 脚本：Catherine Tregenna
• 原案：Kathy McCormick, William N. Fordes
• 監督：Robert Del Maestro
• 初回放映： 2010-11-11

高等法院の判事、レイチェル・キャラハンが駐車場で撃たれて重傷を負う。犯人は被害者のベンツで逃走するが、その直前に赤い防犯スプレーをかけられていた。ベンツはその後、追跡装置を外され、プレートを替えて売却されていた。

車の販売ルートからエディ・ウェイドの名が浮上し、捕えてみると顔には赤い塗料。判事はエディを銃撃犯と確認するが、エディはどうやら誰かに金で雇われた殺し屋らしいとわかる。判事夫妻の帰宅は予定より早く、時刻を知っていたのは書記官と夫のダンだけ。判事とダンの話は細部が食い違い、ダンの携帯電話からは事件前の通話記録が1件削除されていたことがわかる。

判事が扱った事件が動機という可能性もあったため、その線で捜査を進めたところ、建築家であるダンとウェイドに接点があることがわかる。ダンはウェイドを「知らない」と主張するが、ウェイドはダンの担当する建築現場の責任者で、毎日打ち合わせをする間柄だったのだ。

判事は「帰宅の予定が変わってから夫はずっと自分と一緒におり、誰かに相談したり指示を出したりするヒマはなかった」と夫をかばう。また、財産は信託で管理されており、判事が死亡しても財産は孫が相続することになっており、金は動機にはなり得ないという。

しかし目撃者が見つかり、ウェイドに連絡が入ったと思われるまさにその時刻、ダンは一人で庭にいたことがわかる。

判事は引退後のために土地を買い、ダンに「理想の家」を建ててもらおうと思っていたが、彼女が昇進したためその話は中止。ダンは建築事務所を解雇されたが、そのことを打ち明けられずにいた。昇進を重ねて高い地位に上る妻と、仕事で成功していない夫との間にわだかまりがあったらしいことがわかる。

判事は治療の副作用で腎臓機能が悪化し、命はとりとめたものの透析を余儀なくされてしまう。判事は死を覚悟し、薬物療法を中断。判事を証言させるかどうかでスティールと弁護人の意見が対立するが、結局は担当判事の立会いのもとでの尋問が認められる。判事はやはり夫の無実を主張。

証言を終えた判事は、透析の機械を外して死のうとしたため、スティールは精神鑑定を要求。担当判事は、被害者は自殺願望があり証人として不適格であると判断する。

無実の証言を失ったダンは、妻への不満とともに殺人を依頼した事実を認め、その時初めて「主導権を握る高揚感を味わった」と話す。その後翻意して取り消そうとしたものの間に合わず、ウェイドは実行してしまった。

その頃判事も、キャッスルが見舞う病室ですべてを認めていた。彼女にとって夫の愛は法以外で唯一の心の拠り所だったが、愛する人に裏切られたので死を選ぶのだという。

治療の中止が認められ、レイチェルはダンの面会を求め、彼の腕の中で息を引き取る。

本家オリジナルはシーズン10「エゴイストの愚計」で、こちらはまだ未見。シーズン10だと地方検事はまだアダム・シフかな。こちらのキャッスルがキャラハン判事と親しい仲だったというのは、いつもの独自設定のような気がする。

すれ違う男女の愛憎や、高い地位に上りつめた判事のプライドと感情の葛藤などを描きたかったのかな――という感じで、UKならではのドラマに仕上がっている気はするのだが、「L&Oのいちエピソード」としては、いまいちピンと来ないところがあった。

このあたり、制作サイドでも葛藤があったのだろうかと推測させる。感情のもつれ合いをもっと前面に押し出してわかりやすいエピソードにすることもできたのだろうけど、それだと「Law & Order」ではなくなってしまう。では「Law & Order」としてなら何を強調すべきか――というと、今回は判事の証人としての適格性を判断する精神鑑定あたりか。

そういえば私、レイチェルさんのことをずっと「判事」と呼んでいるけど、彼女はこの事件では被害者／証人であって、事件の担当判事はちゃんと別にいるのよね。なのにどうしても「判事」と書いてしまうのは、やはり彼女が周囲から尊敬されている「判事」であって、終始そのように振る舞っていたからだと思う――そのあたり、事件関係者全員に心理的な葛藤があったはずなので、UKとしてはその方面をもう少し詳しく描写しても良かったのではないかと思う。

— Yoko (yoko221b) 2015-10-15