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murder1:s02:episode34

Chapter Eleven-Twelve

  • Part1
    • 脚本:Charles H. Eglee, Geoffrey Neigher, Nick Harding
    • 原案:William M. Finkelstein
    • 監督:Michael Fresco
  • Part2
    • 脚本:William M. Finkelstein, Charles H. Eglee
    • 監督:Randy Zisk
  • 初回放映:1997-01-23

概要

People v. Rickey Latrell (8)

リッキーの「告白」を聞き、弁護士たちは今後の方針を話し合う。ワイラーは、当初の予定どおりリッキー自身に証言させ、引き金を引いたのかと問われれば正直に答え、“Jury nullification” によって無罪評決を得るという戦術を提示する。アーロンは反対するが、最終的には同意。

ワイラーは「うちの事務所は偽証をさせない」と言い、リッキーに証言台ですべてを話すよう説得。サンディがリッキーとカーラに何をしたかをありのままに話し、なぜ自分が彼を殺したかを納得させる。リッキーが証言しなければ、弁護側の材料は性格証人(Character Witness)だけになり、検察側に対抗できないのでそれしか方法はない。だがリッキーは「そんなことできるか!」と提案を一蹴。

ヒックスは、ペイジ・ワイコフが検事からスポーツキャスターになるために、自分に情報を流していることを認める。ワイラーはその事実を利用してワイコフを事件の担当から外そうとするが、ワイコフは逆に、ワイラーからセクハラを受けたという話をでっち上げる。だが、その後ワイコフが情報をリークしたことが明らかになり、彼女は事件の担当を外される。

法廷ではリッキーの母親が、息子が暴力を嫌い家族を愛していることを証言。リー・マイケルソンは、サンディが選手を使い捨てるように冷酷だったことを証言する。元選手のクーガンは、リッキーが自分の面倒を見てくれていることを証言する。

サンディを顧客としていたエスコートサービスの経営者は、サンディは女性を頼んでおいて料金を払わないことがあったと証言。他の同種のサービスでは、料金を踏み倒すと命の危険が迫ることもある。また、サンディからひどい扱いを受けた女性たちも証言。

いよいよリッキー本人が証言台に立つ。リッキーは八百長を否定し、テープの件は「でっち上げだ」と主張する。そしてサンディを撃ったことをはっきりと認め、「自分は家族を守るためなら何でもする」と言う。法廷内は騒然となり混乱状態へ。検事は「知っていて殺人を正当化しようとしたのか!」と怒り心頭に発し、性格証人の証言を排除して弁護人に罰則を加えるよう要求する。判事は「これは法廷の操作である」と言って証言の排除を認め、2000ドルの罰金を科す。

リッキーの幼馴染のジャクソンが再び証言台に立ち、「事件当日リッキーが銃を持っていたかどうかは知らなかった」という以前の証言を翻し、「リッキーは当日銃を持っており、自分がそれを捨てた。リッキーは『サンディを排除するためなら何でもする』と話していた」と証言する。クリスは反対尋問に立ち、ジャクソンがコカイン所持で逮捕され、証言と引き換えに実刑を免れる取引をしたと認めさせて信頼性を崩す。

証人はすべて証言を終え、最終弁論に入る。検事はリッキーがサンディを射殺したことをストレートに述べ、「リッキーは大金持ちのスターであって、可哀相な黒人奴隷ではない」と主張。クリスは「リッキーを特別扱いせず、他の人と同等に見てほしい。信じていた相手に騙され、妻は身体を差し出すしかないと思い込まされたのです。この事件は大いに人種問題ではあるが、評決は正義(justice)によって行われなければなりません」と主張する。

事務所にカーラが現れ「リッキーが消えた」と言う。その場にいたワイラーとジャスティーンはすぐ捜索を手配するが、クリスとアーロンには「嘘をつかせたくない」からと蚊帳の外。どうやら元チアリーダーのクリスティーン・フィリップスと逃げたとわかり、ワイラーとヒックスはリッキーを追ってメキシコへ向かう。

一方、事務所へは評決が出たという連絡が入り、クリスは急病と偽って時間を稼ぐ。判事は、翌朝9時までの休廷を認めるが、それまでにリッキーが出廷せず、彼が州外に出たことを知りながらごまかしていたことがわかった場合には法廷侮辱罪に問うと言い渡す。

ワイラーはヒックスとともにメキシコへ行きリッキーを発見、何とか説得するが、出国手続きの際に偽造パスポートを見抜かれる。係官はリッキーであると気づいていた。

グラッソ検事は、空港の近くでリッキーの車が発見されたことを知り、ただちに指名手配。その報告を受けて判事はクリスを拘束しようとするが、そこへワイラーがリッキーを伴って現れる。出国審査の係官を買収したのだ。

評決は無罪。リッキーは喜び「400年の間、この国の黒人は司法制度の犠牲者であり、不当に告発され、不当に有罪とされ、不当に罰を受けてきた。今回は黒人に対して正義が行われた」と言う。リッキーの弁護人としての役割を離れたワイラーは「世間の見方では、リッキーは人を殺して罪を逃れたにすぎない」と釘を刺す。アフリカ系のワシントン検事は「12名の陪審員が判事の説示と法律を無視して殺人犯を野に放った」と、評決に否定的なコメントを出す。

ペイジ・ワイコフがワイラーの事務所に求職に現れるが、ワイラーは「信頼できないから」と拒絶。アーロンは「君は本当に、自分が黒人だから起訴されたと思っているのか?」と聞く。リッキーが否定すると「なら、そうであるかのように話すのは止めろ。君の言葉は影響力がある。人々に嘘をつくな」と言う。


感想

今回のエピソードは、Chapter11と12をまとめて2時間番組として放送された。DVDでもこの2章が一緒になっていて、どこまでがPart1でどこから2なのか明示されていない。だったら、Chapter11のPart1/2でいいじゃん。(追記:これを書いた後で思いついたのだが、1時間枠で再放送する場合に備えてエピソード番号がずれないようにしたのだろうか)

前回の爆弾発言の後。リッキーの証言自体を取り止めるか、でなけりゃ偽証するしかないんじゃないの、と思っていたら、ジミーは「偽証はしない」と明言。うーん、やはり偽証はダメか。しかし、だからといって “Jury nullification” という選択肢はありなんだろうか?

『入門・アメリカの司法制度』(丸山徹/現代人文社)では、jury nullification は「陪審の無効裁定」(あるいは拒否権)と訳されている。被告人が罪状にある行為をしたのは確かだが、法律そのものが悪法であるから無罪にするという裁定。植民地時代には、この裁定によって本国イギリスの圧制からコミュニティが守られてきた。独立後も、禁酒法や逃亡奴隷法を不当とした無罪評決があった。

そして上掲書ではこうも述べている。「さすがに殺人事件の裁判の陪審が『殺人罪を認めないから無罪にする』という評決を出すことは考えられない。」(p.35-36)

だよなぁ……この事件の陪審員が何をどう評議して無罪の評決に至ったのか、やはりよくわからない。リッキーがやったことは、事情はどうあれ殺人に違いないじゃないかと思う。

似たような例として思い出されるのは、Law & Order シーズン1のエピソードだろうか……恋人を襲われた若者が復讐に相手を殺すが評決は無罪。検事は「12人の善良な市民が、被告人を有罪と知りつつ無罪放免にした」と嘆く。ただしこの時は弁護人が「正当防衛だ」といささか無理な主張をしたのであって、少なくとも表向きは jury nullification ではなかった。

陪審員の内心が「殺すまで思いつめたリッキーの気持ちはわかる、だから罰したくない」なのか「今まで黒人は不当に重い罪を押し付けられて苦しんできたので、このへんで1つくらい逆のケースがあってもいいんじゃないか?」なのかそれ以外なのかよくわからないが、とにかくリッキーは無罪となった。これで「弁護士ジミー・ワイラー」はもう安泰だし、クリスとアーロンも仲良くなったのだが、やっぱり素直に喜べない様子。うーん、この事件はやはり、すっきりしないなぁ。

事件以外のところでは、ワイラーの秘書グウェンが婚約者の転勤で退職し、シーズン1からいたルイスが復帰。キャラとしてはやっぱりルイスの方がいいな~。そしてジミーとジャスティーンがいよいよ接近。うーん、こっちはノーコメント。

Yoko (yoko221b) 2009-06-18

murder1/s02/episode34.txt · Last modified: 2024-03-09 by Yoko