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Chapter Seventeen-Eighteen
The Constitution was never designed to allow a serial killer to walk free.
- Part1
- 脚本:Geoffrey Neigher
- 原案:Steven Bochco, Charles H. Eglee
- 監督:Marc Buckland
- Part2
- 脚本:Charles H. Eglee, Geoffrey Neigher, Nick Harding, Doug Palau
- 原案:Steven Bochco, Charles H. Eglee
- 監督:Marc Buckland
- 初回放映:1997-05-29
概要
Marybeth Kettering
ワイラーは、クリフォードの事件を手がける傍ら、エスター・ケタリングという年配の女性の事件を受ける。エスターと双子の姉妹のメリーベスは広大なワイナリーを所有する地主だったが、メリーベスは4日前に階段から落ちて死亡。「友人」のケヴィン・パイパーが警察の取調べを受けているという。その話とともに、ワイラーは大手法律事務所「ピーターセン、ヘリック&コー」の一員にならないかと誘いを受ける。もちろんアソシエイトたちも同様で、ワイラーは2年以内にパートナーにするという条件だった。思わぬ話にアソシエイトたちは浮き足立つ。
ケヴィンの役割は、表向きは犬の散歩とパートタイムの運転手。だが実際はメリーベスの愛人だったらしい。ケヴィン27歳、メリーベス83歳。さらに、エスターとメリーベスの間にケヴィンをめぐる三角関係があったという。ケヴィンが本当に愛しているのはエスターだったというのだが、その一方でケヴィンと「弟」のダミアンは、どう見ても恋人にしか見えない親密な様子を見せる。
吸収合併の件は、アーロンとアーノルドが賛成、大きな事務所は政治的なゴタゴタも多いからとジャスティーンは反対。クリスも反対。ワイラーは「自分で自分の船を操縦するのが好きだし、『一度にエレベーターに乗り切れないパートナーを持つな』という助言を受けたことがあるから」と反対の判断。事件を任せてもらえずワイラーの評価に不満なアーノルドは、ひとりでも「ピーターセン、ヘリック&コー」に移ろうとアプローチするが失敗し、「法廷に立つだけが仕事ではない」と評価を受け入れる。
エスターは、メリーベスの死亡時にケヴィンとダミアンは2人とも自分と一緒にベッドにいたと供述。疑いが晴れたケヴィンとエスターは、判事の前で結婚式を挙げる。だがその直後、エスターはワイラーに「私がメリーベスを殺したの」と告白。ケヴィンと関係を持つようになってから、メリーベスはそれに怒り妨害しようとした。それで彼女を殺したのだという。
People v. Clifford Banks (3)
判事はワイラーの言い分を認め、検察側の提出した証拠の大半――クリフォードの持っていた武器、自宅から押収した資料、アラン・ロゼツキーの殺害を認める供述などを排除する。その結果事件は棄却され、クリフォード・バンクスは釈放される。
ワイラーらは釈放されたクリフォードとともに車で移動する途中で銃撃を受け、クリスが重傷を負う。
ワイラーは「もう事件は終わったので」とクリフォードの件から手を引こうとするが、クリフォードは「インタビューに同席してほしい」「ライフルを買ったら逮捕された」とワイラーを頼る。ワイラーは仕方なくクリフォードを弁護し、LAPDの警官に対してクリフォードへの接近禁止命令を取り付ける。
ビッジオ刑事は、ワイラーを通じてクリフォードに「銃撃事件の容疑者の面通しに来てほしい」と要請。クリフォードは「この中に犯人はいない」と断言し、容疑者は釈放される。自分で復讐するつもりだ、と判断したワイラーは「犯人を絶対に殺すな」と説得。
オズワルド・セサラスがワイラーのもとを訪れ、「自分はトミーを殺していない。殺したのはクリフォードだ」と言う。その日、セサラスはクリフォードの家からTVを盗んだ。トミーは車椅子から立つことができず、殺す必要などなかった。セサラスが逃げた時、トミーはまだ生きていた。それが8時15分前のこと。クリフォードが帰宅したのが8時なので、犯行が行えるのはクリフォードぐらいしかいないはずなのだ。
ワイラーはエスターの告白を聞いた後、精神科医を再び訪ね、「クリフォードが弟を殺し、それを忘れてしまっている可能性はあるだろうか」と聞く。医師は「その可能性は大いにある」と、解離性遁走(dissociative fugue)の可能性を示唆する。弟を殺害したものの、弟への愛と自らの道徳規範はそれを許さないので、殺害に関する記憶が封じられてしまう。しかしその記憶は無意識下に残り、罪悪感を他の犯罪者に投影し、自らの悪を象徴する者として彼らを殺害していたと考えられる。
ワイラーは「クリフォードがトミーを殺害したのではないか」という仮説を突きつける。クリフォードはいったんは否定し、立腹して追い返したものの、その後事務所に現れ「自分がトミーを殺したのだ」と認める。仕事から帰ると家の中はめちゃくちゃで弟は泣きながら暴れていた。動転し、逆上したクリフォードは、気がつけばランプを手に持ち弟の頭上に何度も振り下ろしていた。
クリフォードはワイラーを殺そうとするが、ワイラーは「真のクリフォード・バンクスは殺人者ではない」と説得。クリフォードは、自分の罪を償わなくてはと言う。ワイラーは「弁護士として」はそれに賛成しないが、彼のやりたいことを「友として」支えようと言う。
クリフォードはワイラーとともにそのまま警察署へ出頭し、トミー殺害を告白。第2級謀殺罪での有罪を受け入れ、最長の刑に服すことを望む。さらに「被害者の遺族やセサラスに謝罪し、映画化による自分の利益は凶悪犯罪の被害者のために寄付したい」という声明を出す。
感想
クリフォードの釈放。クリスが重傷を負い、ワイラーとアソシエイトたちはその結果の重大さを改めて思い知る。殺人犯が釈放されただけでなく、警察に対して接近禁止命令を取り付けてしまう(むろん犯罪が起きた場合は別だが、そんなこと可能なのか……)。
ワイラーに事件を依頼した恩師のポメランツ弁護士は、もしかするとこのことを予見していたのではないだろうか――と、ふと思った。救急隊員の供述を見逃し、バッグとその中の遺体の証拠採用に異議を唱えなかったのは、年齢や病気による注意力の衰えではなく、それが引き起こす結果を恐れたからであって、ワイラーに判断を委ねるために敢えて何も言わなかったのではないだろうか。
そんな重苦しいストーリーの中で、コメディリリーフのゲイリー・ブロンドが面白い。映画のストーリーのことでクリフォードを怒らせてしまい、ほうほうの体で逃げ出した後、何と女装して身を隠していたとは。いや、でもブロンドを脅したクリフォードが「冗談だったのに」と大笑いしても、これはやはり笑える状況じゃないよな。
このシリーズが打ち切りになっていなければ、次の事件はエスターさんの事件になったのだろうか。それとも、この事件はアーノルドの成長や「兄弟姉妹の間の殺人」を示唆するためだけの事件だったのかな。アーノルド、前シーズンは緻密でデータに強く、普通に法廷にも立っていたのに、今シーズンはちょっとダメ男くん的なキャラになってしまったな。エスター役のEllen Albertini Dowさん、1913年生まれで現在も現役でご活躍中。IMDbで見ると、2009年の新作も続々。すごいっ。1)
- Ellen Albertini Dow (IMDb)
劇中では People v. Hernadez という事件が言及されていたが、判例が見つからない。同じ名前の事件はあるけど、どう見ても関係なさそうな事件だし……ここで言われているのは、不可避的発見に関する判例のはずなのだけど。
さてさて、2シーズンを見終わったところでシリーズ全体を思い返してみると、ニール・アヴァドンは有罪の評決を受けたが実は無実、シャロンは無罪評決で本当に無実、リッキーは無罪評決だが実は犯人。そして今度のクリフォードは犯人なのに棄却。しかし最後の最後で弟殺しを認め、シリーズ中では唯一刑に服した被告人になった。うーん、こうして振り返るとどの事件もそれぞれ違うパターンで終わっているのだなぁ。素晴らしい。そして惜しい。ミニシリーズでいいから、もう少し続けてほしかったと思う。
— Yoko (yoko221b) 2009-06-23