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Wire in the Blood - Series 1
#3 Justice Painted Blind
- 邦題:「デス・ペナルティー」(DVD)/「殺人者の正義」(CS)
- 脚本:Alan Whiting
- 監督:Roger Gartland
- 初回放映:2002-09-17, 2002-09-24 (Denmark)
事件概要
Act 1: Time to Die
ソニア・ブルックスという若い女性が駐車場で襲われ、その後遺体で発見される。首を絞められ、頭にはすっぽりと白い袋をかぶせられ、「2」と書かれたカードがピンで留められていた。ドン・メリック刑事は現場の様子を見て昔の事件を思い出す。
3年前、11歳の少女トゥルーディ・ヒバートが自宅から誘拐され、殺害されるという事件があった。トゥルーディはその後、森の中で頭に白い袋をかぶせられ、遺体で発見されていた。容疑者としてポール・グレゴリーが逮捕されて起訴されたが、陪審は無罪判決を下していた。ソニアは20歳だが年齢より幼く見えるため、ドンはグレゴリーの犯行を疑う。
一方トニーは、トゥルーディとソニアの加害者は別人であると判断する。トゥルーディの事件は小児性愛者による性的な犯罪であるが、ソニアの殺害は「処刑」スタイルに近いもので、性的な要素がない。
その後、ダイアナ・ノーランという年配の女性が殺害される。やはり頭に白い袋をかぶせられ、今度は「3」のカードが留められていた。ダイアナの口の中には、丸めた新聞紙が押し込まれていた。それがトゥルーディ事件の記事であることから、トニーは事件の関連を理解する。ソニアとダイアナは2人とも、トゥルーディ事件でグレゴリーに無罪の評決を出した陪審員だったのだ。「2」「3」の数字は、陪審員の番号だった。つまり犯人は誰がどの番号かを知っている、陪審員に近い人物。そして一連の犯行の引き金になったきっかけは、やはり11歳の少女が誘拐された事件であると思われた。
キャロルは残る10人の陪審員に警備を付けるが、ドン・メリックが担当するはずのフランシーン・ジェレミーズは、すでに殺害されて車のトランクに入れられていた。やはり袋をかぶせられ、「7」のカードが留められていた。これで3名の女性陪審員が殺害されたことになる。大元の事件は子どもに対する犯罪であり、子どもを守る役割を期待される女性がまず標的になったものと考えられた。陪審員の中で残る女性は、ジーン・ローソンだけだった。
キャロルはトゥルーディの父親オリバー・ヒバートを呼んで尋問するが、弁護士が到着して中断。ヒバートらが帰ろうとしたところへ、ポール・グレゴリーが警察署へ駆け込み、さらに騒ぎは加熱する。グレゴリーは「ソニアもダイアナも、皆自分が殺した!」と言う。
Act 2: Members of the Jury
グレゴリーは留置場に入れられるが、トニーもキャロルも今回はグレゴリーが犯人ではないと確信していた。
トニーは、誘拐され、その後無事に保護された11歳の少女ハンナの事件を調べる。この事件でもグレゴリーが容疑者とされたが、性的暴行はなく、他の証拠もないため誰も逮捕されていなかった。犯行の手口やハンナの供述から、この事件もグレゴリーの犯行ではないと思われた。グレゴリーが犯行を「自白」したのは、数々の嫌がらせに耐えかねてのことだったのだ。
女性の陪審員でまだ無事なのは、ケヴィンが警護しているジーン・ローソンだけだったが、次の被害者はケン・エリオットという60歳の男性だった。トニーは、犯人が被害者の性別を変えたことや、刺し傷が多かったことから、彼らは暴力性を増し、一連の犯行の終焉が見え始めていると思う。であれば、次の被害者は本来の標的であるグレゴリーか、あるいはジーン・ローソンである可能性が高い。
アニー・ライスは現場近くの交通監視カメラをチェックし、フランシーンとケンの事件の当時、同じ車が映っていることに気づく。車の所有者はジーン・ローソンの夫デイヴィッドだった。トニーはケヴィンに電話し、家の様子を細かく聞いて、リモートでプロファイリングを行う。ケヴィンは家の中を見て回り、家の中が極度に整頓されていることを報告。アニーはデイヴィッドを逮捕しようと言うが、トニーは、「何かが欠けている」と悩む。それは、「自分の妻がその一員であるグループのメンバーを次々に殺す」ことへと彼を駆り立てているのは何か、そしてジーンが犠牲にならないのはなぜかということだった。
ケヴィンは書斎に入り、不気味なイラストと “Time to Die” のタイプ文字で埋め尽くされた日記を見る。ケヴィンは「犯人は彼だ」と言うが、トニーは「違う、彼女だ」と叫ぶ。陪審員の評決は、無罪11人に対して有罪が1人。ジーンだけがグレゴリーの有罪を信じたのだ。ケヴィンはジーンの姿を探すが、彼女は警備をすり抜けてグレゴリーのもとへ向かっていた。
グレゴリーの経営する店に忍び込んだジーンは、背後から彼を襲って袋をかぶせ殺害。駆けつけたトニーは、トゥルーディが失踪当時に来ていたセーターを発見する。トゥルーディ事件の真犯人は、やはりグレゴリーだった――。
感想
頭に袋をかぶせられた被害者、タイプされた “Time to Die” や “THEY DID NOT LISTEN” の文字、不気味なイラストの映像が怖い~。快楽殺人ではなく正義を希求する気持ち、犯罪への強い憤りからやむにやまれず殺したのだろうかと思うと、何だか背筋が寒くなる。ジーンが犯人とわかった瞬間、ダイアナおばさんが車中の犯人を見て笑顔になった理由もわかって怖さ倍増。
結局犯人に先を越されてグレゴリーを殺させてしまったうえ、グレゴリーがトゥルーディ事件の真犯人だった(のだよね、あれは)――という、何ともやりきれない結末。自らの失敗を噛み締めるトニーの姿が痛々しかった。しかしグレゴリーが以前に逮捕され起訴されたとき、セーターが見つからなかったのはなぜだ。その当時はどこかに預けていた?
ジーンがケン・エリオットを殺したのはいつだろう。セオリーどおりに女性から殺していったとすると、フランシーン→ソニア→ダイアナときて、自分をとばしてエリオットかな。警察が気づいて警備をつける直前ということだろうか。そして警備がついたことで他の陪審員をあきらめ、本来の敵であるグレゴリーを襲ったのか。警察が気づかなかったら本当に11人殺すつもりだったのか? 綴じタイプの日記帳のページにどうやって文字をタイプしたのか?
……などという疑問は残るものの、ストーリーは面白かった。写真を見ながら、あるいは失踪事件の現場に立って「事件の世界」へと没入していくトニーの姿が印象的。庭で遊んでいた子どもがさらわれるフラッシュバックの映像と音楽がとても良かったと思う。子どもの頃を思い出す時にふと甦る「人さらい」への恐怖のような感覚を感じる。夕暮れ、空き地、ボール遊び、知らない人――この世とは違う別の世界にさまよいこんでしまいそうな、そんな不思議な不安感を感じる演出だった。
再現実験で新聞紙を口に詰め込むトニーの様子もすごい~。あんな状態で袋被って、うっかり死んじゃったら、現場に来たキャロルもさぞあきれることだろう。
このエピソードでは、トニーとキャロルの間の「距離」も何だか気になってしまった。キャロルの彼氏だという弁護士も登場するのだが(マイケルはもう一緒に住んでいないのかな)、何だか今にもキスしそうな感じじゃないですか?
— Yoko (yoko221b) 2008-02-27