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witb:s02:005_the_darkness_of_the_light

Wire in the Blood - Series 2, Episode 2

#5 The Darkness of the Light

  • 邦題:「ウィッチ・コード」(DVD)/「修道院の死体」(CS)
  • 脚本:Alan Whiting
  • 監督:Nick Laughland
  • 初回放映:2003-12-21 (Israel)

事件概要

ホテルの増設工事現場で、3体の人骨が発掘される。古い人骨をわざわざ掘り出して、新しい遺体の上に乗せて埋めたものと思われた。さらに、その現場の近くでは、10年前にリンダ・オズボーンという女性が刺殺された事件(未解決)も起きていた。ただしリンダは埋められていない。

いちばん上に埋められていたのは女性の骨で、これは死後約500年という古さ。その下の2体はリチャード・カーターとリアン・ウィリアムズ。両親に交際を反対され、数年前にかけおちしたと思われていた。リチャードの車は燃やされていたという。

その夜、現場のホテルで火災が発生し、宿泊客が死亡する。原因は放火の疑いが高かった。火元の部屋に滞在していたのはジャーナリストのジョアンナ・ドレーパーで、外出していたため火災にはあわず、そのまま行方不明となった。

その後、再び遺体が発見される。やはり新しい遺体の上に古い遺体を乗せて埋めたものであった。トニーは、埋められていた死者たちもリンダも全員、頭を北にしていたことに注目する。500年前の埋葬方式では、死者は頭を西向きにしていたが、キリスト教の教義に背いた者だけは頭を北向きにすることになっていた。

トニーは現場付近の森を調べ、木に人物の絵が彫られていることに注目する。それは四角形を形成する4本の木に彫られており、その中心には水仙の花を置いた祭壇のような場所があり、頭上には木の枝がアーチを形作っていた。

キャロルはホテルの保険が増額されたことに気づいてオーナーに事情を聞こうとするが、その途中でオーナーは突然倒れて死亡する。

河に沈められていたジョアンナ・ドレーパーの車が引き上げられる。誰も乗っていなかったが、後部座席にはラップトップパソコンと聖書が入っていた。聖書の中には、トニーが発見した物と同じ絵の写しがはさまれていた。

トニーは、一連の殺人が儀式であることを確信する。事件にはすべて火が関係し、しかも火が子どもに向けられるという特徴があった。キャロルが気づいてケヴィンをドレーパー家へ派遣すると、ちょうど火災が起きていたところだった。ジョアンナの夫と2人の子どもは無事に救出される。

一連の殺人の被害者はすべて、500年前の教区の境目の外側に埋められていた。その当時、教区の境目は、人々の生活にとって世界の端でもあった。加害者は500年前の世界に生き、その時点の目で物事を見ている――トニーはそう確信する。その仮説に基づいて捜索した結果、ジョアンナ・ドレーパーの遺体がやはり北向きに埋められているのが発見される。殺害自体に儀式の形跡がないのに、埋葬には儀式の様相がある。トニーはその矛盾に悩む。

トニーは、500年前の遺体は魔女として処刑された女性ではないかと思いつき、キャロルとともに教会へ調べに行くが、魔女裁判は民事法廷で裁かれるので教会には記録がなかった。また、1431年に教派が分裂したために記録は不完全であった。分裂の原因はジャンヌ・ダルクの処刑で、英国を支持する者は残り、ジャンヌは真に神の声を聞いたと信ずるものたちは地下へ潜行し秘密組織になったという。トニーは、犠牲者は魔女ではなく異端者であり、それゆえにジャンヌと同じく剣で殺されたのではないかと思う。

ドレーパーは、ジョアンナが取材で「司祭(priest)と会っていた」と言った。それはカトリックの呼び方である。キャロルらはカトリック教会に向かうが、司祭の自宅にはすでに火が放たれていた。幸い消し止めることができたが、自宅内は血で染まっていた。司祭の遺体はかつての教区の外に、全身をめった刺しにされ、やはり頭を北向きにして置かれていた。トニーは、遺体に刻まれた「怒り」の強さが解明できず悩む。

トニーは最初から事件を整理し直し、やっと正しい結論にたどり着く――被害者は剣ではなくナイフで刺されていた。つまり儀式ではなく殺人である。殺害方法に儀式の様相がなく埋葬にのみそれがあるのは、別の人格が行っていたから――2人の共犯ではなく、1人の人間に宿る別々の人格。すなわち妄想性の統合失調症患者である。その人物は木々を使って寺院(Abbey)すなわち死者が旅立つ場所を作っていたのだ。その人物は500年前に存在した分派の儀式を再現し、ジャンヌ・ダルクになりきって異端者を刺殺した。異端者とされた被害者たちは、ただタイミング悪くその聖域に踏み込み、犬におしっこをさせた女性であったり、そこで愛し合ったカップルにすぎなかった。だがジョアンナ・ドレーパーが調査のためその場所を訪れ、ジョアンナが司祭と話す場面を見た犯人の中に、陰謀の構図が生まれた。司祭が最も酷く刺されていたのはそのためであろう。リンダの事件は10年前。妄想症は通常、10代後半~20代で始まるため、現在はおそらく20代後半から30代。ジャンヌになりきっていることから性別は女性――トニーは次々に犯人像を描き出していく。

キャロルらは付近に住む該当者をしらみつぶしに調べ、イザベル・ロアマスを発見。だが彼女は不在だった。ドレーパーの家へ向かっていたのだ。イザベルは庭に火を放ち、息子サイモンの部屋の浴室に石油を撒いていた。サイモンは間一髪で助け出され、イザベルはそのまま浄化の火を放って焼死する。


感想

魔女/異端というヨーロッパ的な素材や、現実と妄想の世界が交錯する、目眩を起しそうなカメラワークが印象的。シリーズの中の1話というより、独立した映画のようだった。

ただし謎解きの面は少々疑問が残る。イザベルが500年前の埋葬様式や異端審問をどうして知ったのか(トニーと同じ資料を見たのだろうか?)、女性ひとりで大の大人を何人も殺して運んで埋めることが可能だったのか、放火の手口はどうだったのか。ホテルオーナーの突然死は事件とは無関係だったのか(無関係としか思えないけど)。また、キリスト教についての知識が足りないせいで、理解が及ばない部分があったように思うので、それもちょっと残念。たとえばchurchとabbeyの違いがどういう意味を持つのか、あまりピンと来なかった。

だが疑問点は置いておいて、物語のおどろおどろしさや映像の不気味さ、イザベルの表情の恐さがとても良かったと思う。真相を知ったうえでもう一度見直してみると、冒頭からすでに、現実場面と妄想場面が交互に現れていたことがわかる。ジョアンナの部屋の発火やポルターガイスト現象も、おそらく妄想場面なのであろう。物が勝手に飛び交っていたのは、イザベルが自分で投げていたのかもしれないが(想像すると変)。冒頭にトニーの同僚の葬儀、ラストにキャロルが友人の子の代母になる受洗式のエピソードがある、つまり死と誕生が配置されているのも何だか象徴的だ。

そうそう、現実の司祭とイザベルの妄想上の司祭の区別がつかなかったのだけど、演じていたのは同じ人なのだろうか?

Yoko (yoko221b) 2008-01-27

witb/s02/005_the_darkness_of_the_light.txt · Last modified: 2020-04-30 by Yoko