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Wire in the Blood - Series 4, Episode 1
#12 Time to Murder and Create
- 邦題:「DOMIN8」(DVD)/「ドミネイト」(CS)
- 脚本:Patrick Harbinson
- 監督:Andy Goddard
- 初回放映:2006-08-11 (AU)
事件概要
農場でドラム缶に入れられた女性の白骨死体が発見される。キャロル・ジョーダンの後任として着任した警部補(Detective Inspector)のアレックス・フィールディングが捜査にあたる。アレックスは心理学者と協力した経験がなく、トニーのプロファイルには懐疑的。
遺体は当初、行方不明のトイントン夫人だと思われていた。トイントンは7年前、妻の浮気現場を見て愛人を殺害した。妻はそれ以降行方不明となっていた。だがトニーは、怨恨ではなく連続殺人を疑う。実際に、その後2人目の遺体が発見される。歯形や脚の治療痕から、2番目の遺体がトレントン夫人で、最初の遺体は6年前に家出をしたフィービー・ダグラスと判明。
フィービーは家を出た後、母親宛に「真の自分を見つけた」「可能性が広がった」という手紙を書き送っていた。トニーは、何者かがフィービーをそそのかして家出させ、手紙を書かせたと判断する。フィービーの部屋には、男の前で跪く女性を描いたポスターが貼られていた。女性を奴隷として描くWebサイトにも同じ画像。フィービーは「支配される」ことを望む従順な女性だが、自分の母親のような退屈な世界を嫌い、「支配者」と出会ったのをきっかけに家を出たものと思われた。フィービーが友達に「今から彼に会う」と手紙に書いていたことから、トニーは、謎の「支配者」がフィービーを誘い出すまでは実際に会ったわけではなく、インターネットを介してコンタクトしていたと推測する。
トイントン事件当時、リチャード・クロス警視は農場を捜索しており、フィービーの遺棄現場も調べていた。つまり、遺棄されたのはその最中か後ということになる。その当時、農場の隣にはマティソン運輸という会社があり、ドラム缶の製造元とも取引があった。事件当時の写真にマティソン運輸のトラックが映っていたため、アレックスは当時勤務していた運転手を調べ、「犯人が運転手のはずはない」というトニーと対立する。
4ヶ月前に失踪した女性サリーの父親が現れる。他に犠牲者がいないか、全国の行方不明者を調査したため、何か進展があったと思ったのだ。サリーもやはり手紙を書き、フィービーと同じ文言を書いてきていた。トニーは失踪者の手紙から、同じ文言が入っているものを絞り込む。
ポーラの元へ「ジョアンという女性が失踪した」という通報が入る。ジョアンは保険会社に勤務していたが、突然会社を辞め、上司宛にフィービーと同じ文言を使ったメールを送っていた。同僚のアマンダがサリーのニュースを見て気づいたのだ。アマンダは上司のルーミスのパソコンを覗き見て、そこにジョアンの写真を見つけたため、彼を疑っていた。だがトニーは、犯人と被害者の関係は日常的に顔を合わせる関係ではなく、もっと距離があるものだと確信していた。アレックスはトニーにプロファイリングを依頼する。
技術者のティムは、ジョアンのパソコンから消されずに残っていたクッキーを発見。それはZaddar.ComというBDSMサイトだった。ジョアンはそこで数名の相手とチャットしていたが、この地域にいる相手はハンドル “DOMIN8”、本名スタンリー・マルデンという人物だった。住所はマティソン運輸。
マティソン運輸に「スタンリー・マルデン」という従業員はいなかったが、サイトの使用料は社長の許可で支払われていた。トニーは、社員のロジャー・グレイソンが言った「バニラほど意外だ」という言葉に注目する。「バニラ」とは、SMの世界で「その手の趣向を持たない人」の意味で使われる俗語だった。犯人は「バニラ」の意味を知るロジャーだった。
ロジャーはかつてZaddar.netというIT企業を経営していたが、不動産で失敗して破産し、マティソン運輸では雑用係だった。かつてのサイバー界の帝王が、今では運輸会社の雑用係。トニーは、その不満が女性たちに対して噴出していると理解する。アレックスらはロジャーの家へ急行し、パソコンを押収しようとする。トニーは、玄関の素材が磁石であることに気づいて警告するがすでに遅く、パソコンを持った警官は消磁ループをくぐり、データを消去してしまった。アレックスは、ロジャーの妻リンダの背中に血がついていることに気づき、彼女もともに連行する。
トニーはロジャーを尋問するが、なかなか自分のペースに引き込めない。ケヴィンは、ロジャーが他の遺体を遺棄しそうな場所として、彼がかつて買収した製鉄所の跡地を挙げる。アレックスは現地に急行し、ジョアンが監禁されていた部屋と壁に埋め込まれたカメラを見つけるが、人の姿はなく、部屋は既に片付けられていた。
アレックスはトニーの指示を受けながらリンダを尋問する。その様子を見ながらトニーは、リンダが女性たちを殺していたと気づく。夫は生きた被害者を、妻は死んだ被害者を楽しむ。女性たちがゆっくりと苦しみながら死ぬのを、壁に埋め込んだカメラでリンダは見ていたはず。であれば、現在も信号を発信しているので、スキャナーで捕捉できる。アレックスは現場で信号をスキャンし、ジョアンを発見し無事救出に成功する。
感想
このシリーズから、キャロル・ジョーダンに代わりアレックス・フィールディングが登場。アレックスの階級は、字幕では「警部」だったけれど Detective Inspector なので「警部補」とした。キャロルもDI時代は「警部補」で、Detective Chief Inspector に昇進して「警部」になったはずなので。
キャロルは「ヨハネスブルグに赴任した」という説明だけでいなくなってしまった。中の人の都合なのはわかるが、本当に一言も言わず、手紙もなく旅立ってしまったのね。ネルソンはキャロルが連れて行ったのか、それとも弟のマイケルが面倒見ているのだろうか。
レギュラーキャスト、特に主役級の俳優の交代はドラマ全体のカラーを左右するくらい大きな問題(Law & Order は例外かも)。さらに、周辺のレギュラーをそのままに主役のみが交代した場合、新しい主人公になかなか馴染めないこともある(Murder One なんかはそうだったな~)。その点、キャロルからアレックスへの交代は、スムーズに成功していると思う。最初のうちこそ対立する場面もあるが、アレックスがプロファイリングを受け入れつつも、彼女が決定的な証拠の存在に気づくというバランスが良かったと思う。アレックスがキャロルを敵視したり否定したりするのではなく、ちゃんと敬意を払っているところにも好感を持った。
撮影セットや演出方法が変わったことも「新しいシリーズ」を受け入れやすくしている要素かもしれない。警察署は改装された(移転した?)し、映像効果も何となくオシャレになったというか……アメドラっぽくなったような気がする。場面転換にストック映像をはさむという、CSI などではよくある演出方法も、このシリーズでは珍しいのではないだろうか――今までは夜景などの風景が挿入されても、そのまま次の舞台へと流れるように視点が移行していったのだけど、今回は本当に挿むだけって感じ。荷物を持ったジョアンがふっと消えるシーンでは「WAT か!と思った。
ケヴィンとポーラのコンビも、しっかりした刑事という感じで頼もしい。第1シリーズから続けて登場しているのは、トニーとケヴィンと検死官の先生だけかなぁ~。
トニーが心理学者であることをロジャーに見抜かれていたけれど、ロジャーは最初から知ってたんじゃないのかな。だって顔写真つきで新聞に載ったし、ロジャーは絶対にあの記事を読んだと思う。
ところで、冒頭でトニーがプロファイリングした事件に弁護人から疑問が出されていたが、この事件はどうなったのだっけ。プロファイラーが病気だったといったところで、DNA等の物的証拠が適正な手続きに則って採取・鑑定され認められていれば、それがどれだけの意味を持つのかと思う。
— Yoko (yoko221b) 2008-03-01