通算23話「レイヴンの涙」
ある銀行のATMから紙幣が次々に吐き出されたり、思わぬ大金が口座に入金されるという事態が発生し、街は大混乱に陥る。残高の少ない利用者に大金が送られているため、犯人は「サイバー・ロビンフッド」と呼ばれる。
- 脚本:Kate Sargeant Curtis, Michael Brandon Guercio
- 監督:Louis Shaw Milito
- 初回放映:2015-12-20
whaling attack(ホエーリング攻撃):企業の幹部に標的を絞った釣りメール
バーナビー銀行のATMから紙幣が次々に吐き出され、現金を出していた若者が射殺され、金を奪われる。ATMは不正に操作され、防犯カメラも録画が停止されていた。該当のATMには「Payback Time(お返しの時間)」というメッセージが繰り返し送られていた。
犯人は銀行の幹部に向けて「ホエーリング(捕鯨)」と呼ばれるフィッシングメールを送り付けていた。まずメールを送り、権限を得てネットワークを支配し、ATMや防犯カメラを操作するという段階を踏んでいた。
バーナビー銀行では、他のATMからも大量の紙幣が出る事例が続出し、ソーシャルメディアでは「祭り」の様相を呈する。ただし、誰のカードでも良いわけではなく、あらかじめ決められた利用者のみが「大当たり」で大金を得る仕組み。どうやら、口座残高の少ない者ばかりが選ばれている様子。
ATMの前で利用者を射殺した犯人は、匿名で送られてきた写真により逮捕される。該当のATMで監視カメラは止まっていたが、犯人は紙幣の取り出し口にカメラを設置し、大金を手にして喜ぶ人の姿を見ていたようだ。予想外の強盗事件が起きたため、犯人は捜査に協力したものと思われる。
銀行は応急措置としてATMの電源を切って停止させるが、すると今度は口座に大量の入金が入り、利用者には「返金します」というメッセージが送られる。銀行は全口座を凍結し、取引を停止すると表明するが、犯人はネットワークを支配しているため凍結しても解除が可能だ。
クラミッツは、犯人の「返金」という言葉が貸越手数料の返金であることに気づく。利用者が小切手で送金する際、銀行は処理順序を故意に並べ替え、手数料が最大になるよう操作していた。そうやって不正に取得した手数料を「返金」していたのだ。
その後、返金があった人となかった人の間で争いが起き始める。犯人は「争いを止めろ。敵は銀行だ」というメッセージを発信する。
その後、現金輸送車が紙幣をまき散らしながら暴走する。犯人は仮面を着け、運転席から紙幣をばら撒き逃走。駐車してあった輸送車を盗んだことから、犯人は輸送車のある場所や侵入経路を知る内部の人間である可能性が高い。
ラッセルは輸送車を運転していた人物の写真で手の静脈パターンを分析。静脈パターンは個人差があり、指紋以上に正確な同定が可能である。バーナビー銀行の駐車場にアクセスできる従業員と比較した結果、AJ・キムが特定され拘束される。キムはハッキングを認め、銀行が不正に手数料を取っていたことを非難する。だが、キムを拘束した後にもワシントンDCにいる顧客全員に10万ドルが入金される。キムは共犯者の存在を否定する。
ネルソンは銀行のシステムに別の脆弱性を発見していた。悪用すれば、電信送金で自由に金を送れるようになる。この脆弱性に対してはレイヴンがパッチ対応を行うが、レイヴンが処理した後、何者かに削除されていたことがわかる。
量刑審理を控えているレイヴンは動揺するが、自分のコードを識別できる人物として、コードの記述方法を教えた元カレのジャクソン・リッチモンドの名前を挙げる。ジャクソンはレイヴンの審理で証言することになっており、その件で彼女に接触したばかりだった。ただし、それは事件の前であり、レイヴンがコードを書くこともわかっていなかった。
ジャクソンの狙いは銀行ではなくレイヴン本人。接触した時にレイヴンのスマートホンをハッキングして侵入し、偶然に銀行の脆弱性を発見して送金を行ったのだ。自分だけではなく大勢の口座に送金したのはカムフラージュのため。
レイヴンは自ら囮としてジャクソンに会い、銀行から送金したことを自白させる。
レイヴンの量刑審理でエイヴリーは、ジャクソンとの接触を隠していたことを根拠に「彼女は重要なメンバーだが、まだ学ぶことがある」と証言。レイヴンは「釈放」がお預けになったことにショックを受ける。
ATMから次々と吐き出される紙幣が風に舞う、夢のような光景。アメリカのATMって紙幣が風に飛ばされるような方向で出て来るのだろうか。日本だと、取り出し口の蓋が開いて「穴の中」に入った状態であるし、大抵は屋内にあるので、多少の強風でもああはならないと思う。
不正に手数料を取っていた銀行への義憤という動機、大金を目にした人々の行動やそれによる思わぬ「副作用」という人間心理の面での面白さはあるのだが、偶然に脆弱性を発見した便乗犯とレイヴンの囮捜査というインパクトでちょっとかすんでしまったかもしれない。AJ・キムは「え、この人が主犯で良いんだよね?」と思ったくらい扱いが軽かった。
そのキムを特定したのは手の甲の静脈パターン。犯罪における最大の脆弱性は人間の肉体なのだと、改めて感じさせる。
イライジャの私生活のあれこれは興味ない。小切手の手数料の仕組みもいまいちピンと来なかったが、ま、いっか。
使用楽曲
- Million Bucks (feat. Swizz Beatz) by Maino (冒頭)
2025-06-06