通算31話「明日へ…」
政府機関の人事管理局がハッキングされ、職員らの個人情報を記したファイルが関係機関に送られる。人事管理局のシステムに脆弱性があったのだ。発信元をたどると、ある民家に行き着くが……。
- 脚本:Pam Veasey
- 監督:Eriq La Salle
- 初回放映:2016-03-13
legacy footprints(レガシー足跡):ネット上に意図せず残した足跡
CIAや国防総省などにメールが届き「人事管理局がハッキングされた」と通知される。メールには政府職員の個人情報を記した調査票が添付されていた。国外からのサイバー攻撃であれば戦争につながる恐れもある。
送信元には偽装の形跡がなく、ヴァージニア州のヘイゼルトン家から送信されていた。踏み込んで調べたところ、犯人は13歳の息子ジェイクらしいとわかる。ジェイクは自宅におらず、HDDを持って逃げていると思われる。クラミッツは部屋の機器を調べ、ジェイクが天才的な能力を持っていることを見抜く。部屋にはバックアップが隠されていた。
ジェイクのバックアップデータから犯行の証拠は見つかるが、人事管理局の脆弱性はすでに修復されていた。おそらくジェイクがやったのだろう。彼の目的はテロや金儲けではなく、脆弱性を知らせることだった。
ラッセルはジェイクの妹エマに話しかけ、「ウィザード」という人物の情報を得る。ジェイクは「ウィザード715」というユーザーとメッセージを交換しているが、非公開のフォーラムを使用しているので内容はつかめない。レイヴンらはネットに残された「レガシー足跡」を探す方法を思いつく。
ウィザード715の居場所を突き止めて急行すると、そこではウィザードらしき人物が腹部を撃たれて倒れていた。HDDはジェイクが持って逃げ、「エコー」という人物が追っているという。
「ウィザード」ことジェラルド・フェンウィックは病院で死亡。「エコー」の氏名はジェフリー・スティーヴンスと判明。エコーは他の2人とは異なり、機密情報を悪用しようと考えたようだ。
レイヴンとネルソンはウィザードのPCを解析しようとするが、ガードが固く中を見ることができない。指紋認証がかけられているが、生体検知も組み合わせているので、生きて脈のある人間の指でないと反応しないのだ。ラッセルはウィザードの指の皮膚を剥ぎ取り、それを自分の指に被せて指紋認証を突破する。
クラミッツは、ジェイクが「ウィザード」を名乗る何者かと連絡を取り合っていることを知る。おそらく「エコー」がなりすましているのだろうが、ジェイクはまだウィザードの死を知らず「ウィザードが子どもの頃に夏を過ごした場所」で会おうとしていた。
ジェイクはネットカフェにいた所を目撃されていた。追われているので、目立たないよう電車やバスを避けて徒歩で移動するはず。携帯を機内モードにしてWi-Fi接続を使っているので、周辺のネットワークをすべて自宅と同じ「ヘイゼルトン・ホーム」という名前に変えて強制的に接続させるという方法を思いつく。
ジェイクが接続したことがわかり、ラッセルが母親の携帯からジェイクに電話をかける。だが、場所を言いかけたところで「エコー」の追手がかかり、ジェイクは逃げ出し、銃声が聞こえる。DCには銃声検知システムがあるので、音響センサーで場所を知ることができる。それを利用し、現場は「コミュニティ・プール」とわかる。
イライジャらが現場へ急行すると、エコーがジェイクを撃ち、HDDを奪って逃走しようとしていた。エコーはSWATチームとイライジャに制圧され逮捕。クラミッツはプールに飛び込み、ジェイクを救出する。ジェイクの行動は犯罪ではなく「責任ある開示」として扱われることになった。
4か月後、ネルソンはFBIアカデミーを卒業し、正式に捜査官としてエイヴリーのチームに配属される。レイヴンは犯歴があるため捜査官にはなれないが、アドバイザーとして残留。イライジャとストーカー女性のトラブルに巻き込まれて負傷したラッセルは、退職してフランスへ渡り、恋人のグリアとともにワインを楽しんでいた。
2シーズン、全31話続いた「CSI:サイバー」の最終話。放映された時点ではまだ打ち切りは決まっていなかったはずだが、それにしては最終回風味の強い内容だった。CSI:NYでもそういうことがあったが、「次シーズンは期待できない」という予感が内々にあったのかなと思った。クリフハンガー禁止令は出ていただろう。パイソンとの最終対決があんな感じだったのも、次シーズンに持ち越せなくてラストシーンを急遽付け足したのかもしれない。銃声一発暗転の「レッドセル・エンディング」にならなくて良かった。
D・B・ラッセル役のテッド・ダンソンが降板することだけは事前に決まっていたはず。こちらも殉職じゃなくて良かった。
あの状況でラッセルが撃たれた、というのが謎だったが、おそらくストーカーが銃を出したところへラッセルが来合わせ、銃を出して威嚇。ストーカーがそれに気づいてラッセルの方を向いたところでイライジャが銃を出し発砲。同時にストーカーも発砲してラッセルが被弾――となったのだろう。
それにしても、イライジャのストーカー女性、エイヴリーの恋敵、ラッセルの彼女という「部外者系女性キャラ」が皆似たような髪型(ロングのブルネット)だったのはなぜ?というか、思い出してみるとイライジャの妻とクラミッツの姉もそうだったような気がする。流行の髪型なのだろうか。
事件の方は、フィナーレらしい大がかりな機密漏洩事件――かと思ったら、発信元の偽装もなくあっさり犯人判明。犯罪目的ではないので隠す必要もなかった、ということなのだろう。メールで送られたのは長官や軍のトップなど、ある程度プロフィールを知られている人ばかりで、脆弱性の方は自ら対応済み。シリーズ史上最も手のかからない犯人だったかも。
そういう犯人なので事件描写も少なく(銃声検知システムの仕組みはもうちょっと説明してほしかったが)、少年は無事に保護され、犯歴も付かず円満解決。更生プログラムが廃止されてレイヴンとネルソンがどうなるのかが、残り時間で説明されていた。FBIアカデミーって4か月で修了できるものなの?というところが意外だったけれど、ともあれネルソンは捜査官、レイヴンはアドバイザーとしてチームに残留することになった。
ラッセルがいなくなっても続けられる体制にはなっていたが、「CSI:Cyber」シリーズはここで完結。サイバー犯罪に対抗するというコンセプトは悪くないし可能性はあったと思う。ただ、やはりサイバー犯罪だけに特化してしまったせいか、ネタ切れ感が表出するのは早かったし、犯人を優秀だ、天才だと「持ち上げる」のはどうかなと思った。このような犯罪が可能なのは「犯人が天才ハッカーだからだ!」というのは、ストーリー構築としても少々手抜きに思える。犯罪ドラマは、犯行の様態だけでなく、そのもとになった動機=人間ドラマの部分が描けていなければ。
サイバーだけに絞らず「CSI:シリコンバレー」みたいな感じで、ハイテク犯罪と通常の事件の両方を扱えるようにした方が良かったのではないだろうか?
……と、最後にいろいろ言ったけど(最後以外でもいろいろ言ったけど)、2シーズン31話にわたってサイバー犯罪に取り組んできた皆さんお疲れ様!ドラマは終わってもサイバー空間の安全を守り続けていてほしい。シリーズ終了後、アメリカのネット社会は大変なことになるからね。
2025-06-17