通算20話「秘め事の代償」
フロリダに住む若い女性が、両親とのビデオチャット中に何者かに刺されて死亡する。通報した隣人は現場の近くで昏倒しており、通報した前後の記憶が混乱している様子だった。
- 脚本:Craig O’Neill, Pam Veasey
- 原案:Story by : Andrew Karlsruher
- 監督:Jerry Levine
- 初回放映:2015-11-15
malware(マルウェア):ユーザーに害を与える悪意のあるソフトウェア
フロリダ州タンパで、両親とビデオチャットをしていた若い女性イザベルが殺害される。両親はスキーマスクを着けた男に娘が刺される場面を見てショックを受ける。近所に住むトリスタン・ジェンキンスが現場を目撃して通報し、その後中庭で倒れていた。
イザベルは犯人と争ったすえ、身体を何度も刺されて失血死していた。遺体がきちんと寝かされていたことから、知り合いによる犯行という可能性が高い。レイヴンは現場でイザベルのPCからデータを抽出する。
ネルソンとクラミッツは、イザベルのPCに大量のマルウェアを発見して驚く。データの中には、スキーマスクをかぶった男の写真があった。口の中に血液が映っていたため、イザベルを刺した時に動脈血が口に入り、現場で吐き出した可能性があった。唾液の跡は見つかるが、DNAは身元不明。
エイヴリーはトリスタンの事情聴取を行う。トリスタンは動揺して記憶が混乱していたが、エイヴリーからの質問で徐々に状況を思い出していく。だがPTSDを発症し、犯人の顔を思い出せないようだった。エイヴリーは、トリスタンが嘘を言っているとは思わないものの、何かを隠していると思う。
クラミッツは感染元の機器のシリアルナンバーを発見。それは寝室にある大人のオモチャだった。ネットワークに接続され、遠距離恋愛の恋人がバーチャルにセックスを楽しめる商品。同じ商品を購入してみたところ、まったく同じマルウェアに感染していた。つまり、製造段階ですでにマルウェアを搭載していたということになる。感染させた犯人はバーチャルセックスに割り込む「サイバーレイプ犯」だったが、殺人犯ではなかった。
ネルソンは、イザベル個人だけではなくビデオチャット全体が侵入を受けていることに気づく。犯人は世界中のあらゆる場所でのビデオチャットに侵入し、会話を覗き見ることができた。
クラミッツは、故意にPCを感染させてビデオチャットで犯人をおびき出すことを思いつく。犯人は接触してきたものの、次々にIPアドレスを変更して追跡不可。だが犯人と接触はしているので、ネルソンはWi-Fiスニッファを仕込んで周辺のWi-Fiを検知し、位置を絞り込むという方法を試す。そこで見つかった回線は「イジーの部屋」という個人宅のもの。それはイザベルの自宅だった。犯人はイザベルの近所に住み同じプロバイダーを使っている。電波の強度から正確な位置を割り出してみたところ、通報者した隣人のトリスタンであると判明。
その頃エイヴリーはトリスタンに通報時の音声を聞かせて、記憶を取り戻させようとしていた。トリスタンは取り乱すが、その後冷静になり「トイレに行かせてほしい」と言い、そのまま逃亡する。
トリスタンは部屋にこもりきりで、ネットに依存した生活を送っていた。エイヴリーには家族の話をしていたが、現実ではなく大勢の人のビデオチャットに割り込んで会話を聞き、彼らを家族だと思い込んでいたのだ。イザベルのこともよく知っていたが実際に会ったことはないだろう。エイヴリーは、トリスタンがイザベルを刺し、ショックで記憶を失ったのかと疑う。
現場で発見された犯人の唾液は、トリスタンとは一致しない。トリスタンは犯人ではなく、本当に犯行を目撃して通報しただけだった。姿を消したのは、犯人の顔を思い出して復讐するためだったのだ。
イザベルのPCから「性的暴行を受けた。父に言うと脅しても止めない。通報する」というビデオ日記が復元される。加害者や暴行の詳細は不明。イザベルは結局通報せず動画を削除していたが、加害者は通報されることを恐れて殺害したのではないか。
トリスタンのHDDからは、イザベル殺害の映像が発見される。犯人の人相はわからないが、装着しているブレスレットの意匠が確認できたため、フレンド・アジェンダの自撮り画像と照合する。タンパ在住者で52人まで絞り込めたが、イザベルの友達で該当者はなし。
そこで犯人のDNAから得た情報に注目。犯人は遺伝性のマルファン症候群を受け継いでいる可能性があった。その病気の支援団体の関係者との血縁関係から絞り込んでみたところ、該当者が発見される。イザベルが信頼していた上司のニールだった。
その頃ニールは、イザベルの両親に彼女の私物を引き渡していた。そこにトリスタンが現れ「イザベルを殺したのはお前だ」と言い銃を向ける。エイヴリーがオフィスのPC画面に割り込んで説得し、トリスタンは説得に応じて銃を置く。イライジャはトリスタンを逮捕するが、イザベルの父親がニールを射殺してしまう。
……う~ん、このエピソードはちょっと説明不足と捜査の手際の悪さが気になってしまった。
まず現場検証が足りていない。普段だと、犯人は別の場所にいることが多いのだが、今回は物理的に被害者の部屋に侵入して刺殺している。ビデオチャットやマルウェアよりもまず現場でしょ!何のためにラッセルがいるんだと思ってしまった。スキーマスクは水に浸かっていたかもしれないが、侵入経路や足跡、防犯カメラ映像、ニールや関係者のアリバイ等、ちゃんと調べたのだろうか。今回の事件、イザベル殺害に関してはそもそもサイバー犯罪課を呼ぶような事件とは思えない。
犯人の画像を見てからラッセルが「口から血を吐き出したかも」と言って部屋を調べさせる場面。上のあらすじでは一緒にまとめてしまったが、実際には画像が出た後けっこう時間がかかっている。ちょっと遅すぎない?
捜査の時系列もよくわからない。トリスタンはイザベルを助けようとして倒れ、警官に助けられていた。病院に行ったかもしれないが、その後すぐエイヴリーの事情聴取を受けているはず。であれば、クラミッツが仕掛けた囮のビデオチャットでトリスタンのプロバイダーが検出されたのは、どういう仕掛けで?新規のビデオチャットが始まったら自動的に割り込みを起動するようになっているのか。
そして最後のブレスレット。居住地で52人まで絞り込めたなら、そのプロフィール画像をざっと一覧表示すれば、すぐにニールが見つかったのではないか(友達でなかったのは、イザベルに切られたからか)。
そんなこんなで、色々ちょっとどうなんだと思ってしまったエピソードだった。
事件以外のところで、ネルソンにジョーダンという兄がいることが判明。ブロディが逮捕された時に弁護を頼みに行ったというので、弁護士なのだろう。何かやらかして捜索を受けている様子。ブロディはこっそり調べるが、結局何か言う前に強制捜査が入ってしまい、兄弟の仲には亀裂が入ったまま。ここでクラミッツのIDを使ったこと、後々問題になったりする?
ところで、この「秘め事の代償」という邦題、最初はトリスタンがイザベルのチャットをこっそり覗き見していたことかと思ったが、トリスタンはむしろイザベルとの交流や家族のことを現実だと信じ込んでいる様子。この邦題はイザベルが性暴力のことを自分だけに「秘めて」しまったことだろうか。通報するか、あるいは誰かに打ち明けていれば、誰がどう見てもニールが最有力容疑者になるので、その危険を冒して殺そうとまではしなかったかもしれない。その「代償」としては重すぎる結果になった。
使用楽曲
- Square Dance by Beat Ventriloquists(大人のオモチャの宣伝動画を見る)
- Electric Blue by Crowns of 84(家宅捜索と血液の分析)
2025-05-25