Law & Order:UK S4-5 Mortal

Law & Order UK シーズン4 Law & Order: UK

通算44話「罪の定義」
高齢の女性が自宅で死亡する。ヘルパーの女性は「孫娘が食事を与えず、多めに食べさせたら解雇された」と主張するが、孫娘は「医師の指示による食事制限」だと反論する。

Law & Order:UK シーズン4(字幕版)
Law & Order:UK シーズン4(吹替版)

  • 脚本:Nick Hicks-Beach
  • 原案:Doug Palau, Ed Zuckerman
  • 監督:Joss Agnew
  • 初回放映:2013-08-11

Crown v. Connie Moran

アパートに住む83歳のジェニー・モランが自宅で死亡しているところを発見される。扉は外から破られ、銀の置時計がなくなっていたが、外傷などは見つからず死因は餓死と判断される。

孫娘のコニーによると、コンゴ出身のセシルという女性が身の回りの世話をしていたはずだが、彼女の姿はない。調べてみるとビザの期限が切れて表向きはコンゴに帰国したことになっていた。不法滞在のままジェニーの家に住み込んでいたようだ。

銀の時計は質屋で見つかるが、持って来たのはセシルと恋人のオリビエだった。セシルに事情を聞くと「時計はもらったもので、自分はジェニーに食事を多めに与えたため、コニーに解雇された」と言う。コニーは祖母に対してごくわずかな食事しか与えなかったというのだ。解雇された後ジェニーのことが気になって様子を見に行ったが、鍵を返却したためオリビエが扉を破った。ジェニーが死亡しているのを見たが、すでに手遅れであり、送還を恐れて通報しなかったのだ。

コニーはセシルを解雇したことを否定し、ジェニーは腎臓が悪かったので医師の指示を受けて食事制限をしていたのだと主張する。だが主治医は「ジェニーは医師を変えたので最近は診ていない」と言う。連絡してきたのはコニーだったが、その後別の医師に見せた形跡はなかった。

その後、コニーがジェニーのアパートの共同借地人になっており、ジェニーが死亡した現在は単独所有者になっているとわかる。コニーはアパートを担保に大金を借り、自分が取締役を勤める会社を建て直していた。それが殺害の動機と判断され、コニーは逮捕される。

凶器も証拠もないことからバーカーは難色を示すが、ソーンは「彼女は祖母の死に責任がある」と判断し、コニーは謀殺罪で起訴される。

公判が始まり、弁護側はジェニーが病死であることを印象付けていく。セシルが証言することになるが、その直前、突然彼女の送還が決まる。何とか証言することはできたが、バーカーはタイミングの良すぎる送還命令を不審に思う。聞いてみると匿名で通報があり、発信元はコニーの携帯電話だった。

証言台でそのことを追及されたコニーは動揺し、祖母が死を望んでいたと言い出す。ジェニーは生きる希望を失っていたが、カトリックにおいて自殺は絶対に許されない罪であり、墓地に埋葬してもらうこともできなくなる。身体を傷つけない方法なら神の意思であると考え、ジェニーを餓死するに任せたのだった。

コニーは謀殺において無罪の評決を受ける。


本家の元エピソードはシーズン4「許されざる罪」で、事件の経過はほぼそのままだった。ただ結末が異なっていて、本家は自殺ほう助罪で取り引きをしたが、こちらは謀殺のまま起訴を進めて無罪。謀殺ならこれは無罪だろうな――と思った。

本家と同じように、自殺ほう助罪にすることも可能だと思ったが、こちらはおそらく、ソーン検事と母親の葛藤を描くために、敢えて暴走ぎみに謀殺で突っ走ったのだろう。ラストの教会の場面はとても良かったと思う。

さて英国では、自殺は法律上どのように扱われているのか。

下記の論文によると、英国では伝統的に自殺を罪とする考え方が強く、尊厳死(延命治療の中止)を認める一方で、安楽死・慈悲殺は殺人とされてきた。自殺は1961年の法制定で犯罪ではなくなったが、自殺ほう助は違法。その結果、安楽死や自殺ほう助が処罰されないスイスに渡航して実行するという事案が起きるようになった。

ジェニーもスイスに行っていれば法律上はお咎めなしで済んだのだろうが、宗教上の問題は解決されない。

現在はどうかというと、このエピソードの放送から12年経った今年の6月、終末期の患者が死を選ぶ権利を認める「終末期患者支援(終生)法案」が下院で可決された。施行にはまだ準備が必要なので、実質的に有効になるのは4~5年先になるようだ。

2025-11-14

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