F14. ボビーが麻薬の取引中に殺したのは誰ですか?
ボビーとローラに麻薬を売った売人の正体については、一部で混乱があるようですが、撮影台本でも映画でも(注意深く見れば)、その人物はクリフ・ハワード、すなわちディア・メドウでデズモンド捜査官に鼻をつかまれていた保安官補です。
ローラは泥酔し/ハイになっており、ボビーが誰を撃ったのかよく把握していませんでしたが、クリフ保安官補の金髪を見てボビーの友人のマイク・ネルソンと間違え、「マイクを殺したのね!」とボビーをなじったのです。
[ちなみに、クリフ・ハワードはテレサ・バンクスと同じトレーラー・パークに住んでいました。これは映画からカットされたシーン(詳細は”missing scenes”を参照)で明らかにされています。このシーンがないので、デズモンド捜査官がトレーラー・パークに戻ったシーンと管理人が彼をクリフ保安官補のトレーラーに案内したシーンは意味がわかりづらくなっています。]
※訳注: カットされたシーン集は、TWIN PEAKS ONLINEにあります(FWWM Missing Scenes)。
F15. デイヴィッド・ボウイが演じた人物は何だったのですか?
ボウイはフィリップ・ジェフリーズ捜査官の役を演じました。ゴードン・コールは彼をクーパーに「長い間行方不明だった」と紹介しています。撮影台本では、ジェフリーズは2年間行方不明だったことになっていますが、彼はフィラデルフィアのFBIオフィスのエレベーターから出て来る前に、ブエノス・アイレスのホテルにチェックインしています。ブエノス・アイレスのシーンは映画からはカットされました。
FBIオフィスのシーンでのジェフリーズの台詞:
-ジュディのことは話さない。本当に、ぼくたちはジュディについて何も話すつもりはないんだ。彼女のことは置いておいてくれ(ただしこの後、ジュディに言及している)。
-(クーパーを指差して) ここにいるのは誰だと思う?
-すべて話したい。だがまだやることが沢山ある。(台本にはあるが映画では言われていない台詞) だがひとつだけ言っておく。これに関してジュディは決定的だ(Judy is positive about this.)。
(この時点から、彼の台詞に「コンビニエンス・ストア」のシーンが混ざる)
-(続けて) おれは連中の集会にいた。あれは、コンビニエンス・ストアの上にあった。あれは夢だった……我々は夢の中で生きている。
-何かを見つけた…… (台本のみ「シアトルのジュディのところで……」とある) そして、それは、そこにあった……。
-(叫ぶ) 指輪……指輪だ……
台本に入っているが映画には入っていないシーンで、ゴードン・コールがインターカムで誰かを呼ぼうとする箇所があります。誰も答えないので、コールは「メイデイ (緊急事態)!」と叫び、それを聞いたジェフリーズは壁のカレンダーを見て「5月(メイ)? 1989年?」とつぶやいて姿を消します。
これも映画には入っていませんが、ブエノスアイレスのホテルで、ジェフリーズが「突然ホテルの2階の廊下に登場」(ロビーにいたはずなのに)する箇所があります。彼の背後の壁は「黒く焦げて煙があがり」、脅えたメッセンジャーが彼に、どこに行くのか聞きます。
これらの項目についてはネット上で詳しく議論されています。主な理論には、次のようなものがあります。
- 彼がその後に言った、“ボブ”とMFAPを含む「集会(one of their meetings)」にいたという言葉を考えると、「これを誰だと思う?」が示唆するものは、クーパーが未来(過去?)において“ボブ”やブラック・ロッジと関りを持つことについて、ジェフリーズが何か知っていたのではないかと思わせます。
- コンビニエンスストアのコメントと「夢だった」という言葉は、第2話に出てきたクーパーの夢との関連を意味しているとも考えられます(「我々は夢の中に住んでいる」という言葉にもさまざまな仮説があります)。
- 彼がシアトルのジュディのところで見つけた「何か」は指輪だったのではないでしょうか(F19を参照)。
- 彼がカレンダーの日付(年)を見て驚いているという事実は、ロッジでは時間が正常に経過していないという仮説を支えています。アニーがローラのベッドに出現するシーンや、赤い部屋でのクーパーとMFAPの対話を思い出してください。
最終的に、この暗号的なシーンから、ネット上に1つの仮説が提示されました。ジュディと指輪と「何かを見つけた」という言葉により、次のような筋書きが考えられるようになります。
- ジェフリーズはジュディとの関わりによって指輪に導かれ、指輪によってロッジに導かれました。ジェフリーズは3年間行方不明でした。ジュディとリーランド/“ボブ”の間に明確なつながりはありません(ジュディについては、F21を参照してください)。
- デズモンドはテレサ・バンクス事件の捜査によって指輪に導かれ、指輪によって消えました。デズモンドは1年間行方不明でした。テレサはリーランド/“ボブ”に殺されました。
- クーパーはローラ・パーマー事件の捜査によってロッジに導かれました。指輪との関りは明示されていません(ローラの夢を除く)。クーパーは一種の行方不明状態になっています。ローラはリーランド/“ボブ”に殺されました。
- 台本には「コンビニエンス・ストア」のシーンにMFAPの「すべては循環する」という台詞がありますが、映画にはありません。
F16. 仮面の意味は?
これにはあまり多くの答えはありません(台本の中では仮面が出てこない)。ネットの中からコメントをランダムに示します。
- 「トレモンド夫人の孫がローラに告げます: 『仮面の下の男がページの破かれた本を探している。彼は隠し場所に近づいている。今は扇風機の下にいる』彼は明らかに“ボブ”のことを話しています」
- いまだによくわからないのですが、トレモンド夫人の孫が言ったことは、“ボブ”が仮面の下の男でリーランドが仮面だという意味でしょうか、それとも、リーランドが仮面の下の男で“ボブ”が仮面だという意味でしょうか。
- 白い仮面について驚いたことがあるのですが、これについての話は出ていないようですね。それは、仮面に目の穴がなく、かぶることができないということです。孫が魔術師であれば(クレジットにはそう書かれている)、これが「過ぎ去りし未来の暗闇をとおして/魔術師は見ようとする」ということなのでしょうか?
「考えてみましょう。この白いマスクと、ウィンダム・アールがクーパーに送った白い仮面(これはキャロラインのデスマスクだと思いますが)の間には、何かつながりがあるのでしょうか?
- 「気がついたことがあります。ピエール・トレモンドとデイヴィッド・ボウイ、そしてコンビニエンス・ストアの上にいる数名の人々は、フクロウの仮面をつけていました……。キュートな魔女の仮面かとも思ったのですが……やはりこれは様式化されたフクロウだったのだと思います」
- 「孫がかぶっていた仮面には、男根を連想させる特徴があり、彼は「仮面の下の男を見ろ」と言っています。これはリーランドのこと — 彼の殺人/近親相姦を表しているのだと解釈しています」
F17. 電気のような音はどんな意味があるのですか?
電気的な音は、「ロッジ・ワールド」でも「物理的」TPワールドでも数多くの言及があり、映画での出現箇所すべて、また考えられる関連性や重要性をリストアップすることはほとんど不可能です。
「ロッジ・ワールド」の例をあげてみます。
- コンビニエンス・ルームのシーンで、人々は(口の中から見える)「e-lec-tri-city」(デ・ン・キ)と言っている。
- ローラは寝室で雑音を聞き、閃光を見ている。
- ジェフリーズがコンビニエンス・ルームの説明をする際に雑音がしている。
- 映画の最後に “The Electrician” (コンビニエンス・ルームのシーン?)がクレジットされている。
「物理的」TPワールドの例をあげてみます。
- 映画の冒頭(リーランドがテレサを殺害するシーン)に雑音がある。
- トレーラー・パークでの、電柱と電線のシーン。
- クーパーとセキュリティ・カメラ、およびその映像。
- ジェフリーズがブエノスアイレスから戻る時の、エレベーターからの出現と焦げた壁(F15を参照)。
- ゴードン・コールの動作しないインターカム
- 天井の扇風機
- 道路の信号
一説によると、電気はロッジの住人が物理的な世界に入る時の媒体です。また別の説によると、電気とはフクロウと同じように、ロッジの住人がそばにいることを示すサインにすぎないとされています。
この点についても議論が続けられています。
F18. インディアンの合図のような音はどんな意味があるのですか?
電気と同じように(F17を参照)、多くの仮説が立てられている側面ですが、決定的な情報はあまりありません。
MFAPは「私は腕だ、そして私はこのような音がする」と言って音を出します。この音は、クーパーがトレーラー・パークの周囲を見ているシーンと、片腕の男がリーランドとローラをトラックで追跡している時にもかすかに聞こえていました。
シリーズ内のオイルが焦げた匂いと同じように(「TVエピソード」のE34を参照)、これはロッジの住人がそばにいるという一種の信号なのです。
F19. 指輪の意味は?
テレサの指輪については、さまざまな仮説が立てられてきました。デズモンド捜査官や、おそらくローラ(列車の車両で)に対しては一種のテレポーテーションの力があるようですが、なぜテレサ・バンクスに対して同様の力がなかったのかはわかりません。これはローラの夢の中で、MFAPが手にしており、クーパーはそれに対して警告をし(おそらく、現実でも彼女の手にありました)、片腕の男もそれを手にしていたので、ロッジと何か関係があることはわかっています。
面白いことに、劇場版に登場したテレサの指輪は、シリーズには出てきていません。クーパーは一時的に指輪を巨人に取られますが、これは劇場版に出てくる、フクロウの洞窟の記号がついたものとは違います。これが同じ指輪を意味しているのかどうかは、わかりませんが。
また、指輪はクーパーの自伝にも登場します(「書籍その他」のP1を参照)。
これは、alt.tv.twin-peaksニュースグループでも、最も議論されるトピックのひとつです。
F20. 「ガルモンボジーア」とは何?
これは、2つの側面で議論されています。
- ガルモンボジーアは、ロッジのどのような働きに適合するのか?
- 「ガルモンボジーア」の語源は何か?
幸い、リンチは映画の最後の赤い部屋のシーンの字幕で、ガルモンボジーアを定義しています(と思われる)。「痛みと苦しみ」が摂取されていく(MFAPがクリーム・コーンを食べるという形式で)ため、ガルモンボジーアとはロッジの住人のための食べ物か一種の「ドラッグ」ではないかと思われます。これは、TVシリーズの次のような数々のコメントとも整合します。
- “ボブ”は「恐怖を食らう」(「TVエピソード」のE19とE37を参照)
- ロッジの入り口は恐怖か愛を通じて到達される
- 恐怖を感じつつブラック・ロッジに向きあうものは脆弱である(E44を参照)
しかし、この理論により、他の多くの疑問も生じてきます。
- マイク(片腕の男)は善であるのか(TVシリーズの描写のように自分からMFAPを切り離し、“ボブ”を止めようとしていたのか)、あるいは、彼は悪であるのか(映画の描写のように、MFAPと“ボブ”を補助してガルモンボジーアを集めていたのか)?
- リーランドは過去、どのようにして“ボブ”にガルモンボジーアを提供していたのか?
- “ボブ”はどうやってリーランドの血(ローラの血? 本人の血?)をガルモンボジーアに変えたのか?
などなど。alt.tv.twin-peaksでは議論が続いています。
「ガルモンボジーア」という言葉自体の語源について。この言葉もその一部も、どの言語のどの言葉からも派生していませんが、トウモロコシ類を表す言葉と関連づけようとしている人が多くいます。これは、ガルモンボジーアの物理的形態がクリームコーンだからです。
最も有力な説のひとつに、「アンブローシア」に由来するものだという説があります。これはフルーツのデザートではなく、ギリシャ/ローマ神話で「神々の食べ物」という意味です。これは仮説にすぎませんが、FWWMでの描写とつじつまが合っています。
またこの言葉は、録音して逆に再生するとさまざまな意味があるとする説もあります。一時期ネット上に流れた噂は、逆に再生すると”I am/was/saw Windom Earle”(私はウィンダム・アールである/であった/を見た)であるというものですが、これは(他の多くの逆転解釈と同じように)ひじょうに主観的であり、根拠に乏しいものです。
F21. サルは何と言ったの?
映画の最後にあるサウンドトラックのごくごく微妙な部分が、FBI本部のジェフリーズ捜査官(デイヴィッド・ボウイ)のシーンがあるために、特に重要になりました(F15を参照)。
映画のラスト近く、ローラが殺されてリーランドが赤い部屋に入るところで、短い不思議な映像がいくつも挿入されます。この中に猿の顔(コンビニエンス・ストアのシーンで仮面の下に見える猿の顔に似ている)もあります。この猿の顔のシーンで音量を上げると、猿が(ひじょうに小さい声で)「ジュディ!」と言っているのが聞こえるでしょう。
ほとんどの方は、聞こえるかどうか半信半疑でしょう。しかし信用してください。この言葉は確かにサウンドトラック上にあり、これはデイヴィッド・リンチが配置したものです(F7を参照)。映画の録画状態が悪い場合やTVセットのサウンドが非力な場合は聞こえないかもしれませんが、たしかにこれはあります。また、リンチのリクエストどおりにサウンドの音量を上げている劇場で上映された場合も、はっきり聞こえます。
この猿の言葉にどういう意味があるのかはわかりませんが(猿がジュディを呼んでいるのか? 猿がジュディなのか?)、ジェフリーズ捜査官と(なぜか)ロッジをつなぐものであることは確かです。
F22. 天使の意味は?
不思議なことに、FWWMの撮影台本には天使の記載がまったくありません(ローラとドナの会話のシーンにも、ローラの部屋の絵にもなく、列車の車両の中でロネットが天使を見る場面も、映画の最後でローラが天使を見る場面もない)。したがって、天使のコンセプトは最後の方でリンチが加えたものに間違いありません。
ローラの部屋の絵から天使の姿が消えたのは、彼女の絶望的な状況を表したものであること、ロネットは車両の中で天使によって救われ/見守られていたこと、ローラが映画の最後で地獄から「救われた」または逃れたことは、確かでしょう。ネット上では、天使の出現は、ローラがそこをホワイト・ロッジに変えたことを表しているという説があります(「TVエピソード」のE39およびE40を参照)。
劇場公開された当時のコメントをジム・ペルマンがまとめたものが近日公開されるので、そちらも参照してください(訳注: その後の状況は未確認。TWIN PEAKS ONLINEにあるかも?)。
天使については、alt.tv.twin-peaksで継続して議論されています。
F23. これ以外に映画はありますか?
「TVエピソード」のE46を参照。
F24. 青いバラの意味は?
これは、ゴードン・コールの暗号の中でデズモンドが説明していない唯一の要素である(F12を参照)ため、仮説にすぎませんが、超自然的な出来事を示す暗号としてコールが用いたのではないかと思われます。コールが以前にロッジまたはその住人と接触したかどうかは、定かではありません。
自然界には青いバラは存在しないので、合理的または科学的に説明できない、「あり得ない」事件を表していると言えそうです。
また、ブリッグス少佐とウィンダム・アールが言及している「プロジェクト・ブルーブック」の一環として、UFOに関係する(または関係すると思われる)事件を表しているかもしれません。
シアトル・アート・ミュージアムでフィルム管理人をしているグレッグ・オルセンによると、ロサンゼルスでリンチが住んでいる通りは、ブルー・ローズ街だそうです。
また、これは60年代のスティーヴ・リーヴスの映画「Hercules(ヘラクレス)」に由来するものではないかとする説もあります。この映画で、ヘラクレスの試練は青いバラを得ることでした。
映画関連のもうひとつおまけの説として「The Brotherhood of the Rose」説があります。この映画でロバート・ミッチナムが演じる高級軍人は、余暇に薔薇を育てていました。映画の中で、彼は青い薔薇を作ります。
F25. 氷のパックを持った女性を演じたのは誰?
デズモンドとスタンリーがテレサ・バンクスのトレーラーを捜査する際に、頭に氷のパックをあてた老女が、玄関のところにちらりと登場します。デズモンドは彼女にテレサを知っていたかとたずねますが、彼女はそのまま立ち去ります。
この女性を演じた女優の名はクレジットされていますが、一説によると実はデイヴィッド・リンチが演じており、女優の名前 Ingrid Brucato は “c in our drag bit” (われらが女装の男c)のアナグラムではないかということです。
かなり疑わしい説ではありますが、Ingrid Brucato という名前の女優(またはエキストラ)がいることも証明されていないので、この噂は流布され続けています。
F26. カールの「おれはいろんな所をうろついてた」という台詞の意味は?
デズモンドとスタンリーがテレサのトレーラーを去る時に、トレーラー・パークの管理人をしているカールが「おれはいろんな所をうろついてた……今はここに落ち着きたいよ」と言います。
カールは捜査官に疑われていると感じており、刑務所には行きたくない(すでに行ったことがある)という意味ではないかという説があります。
また別の説では、カールはフィリップ・ジェフリーズ(後で出て来る)や、デズモンド捜査官※(これも後で出る)のような経験があったのではないかと言われています。つまり、ブラック・ロッジへ行ったのではないかということです。
※訳注 原文は Agent Stanley になっているが、デズモンドの間違いであろうと思われる。
これにも、もうひとつおまけの謎があります。この台詞は劇場版の撮影台本には載っていません。また、この場面の他の台詞も、誰かがどこかに行くといった内容ではありません。したがって、これはリンチが後から追加したものか、または俳優ハリー・ディーン・スタントンによるアドリブではないでしょうか。