- E47. ジャコビー医師を襲ったのは誰(第7話)?
- E48. リーランドのように、一夜にして髪が真っ白になるというのは、実際に有り得ることなのでしょうか(第8話)?
- E49. あの信号にはどんな意味があるの?
- E50. 街の人が手を震わせている場面にはどんな意味があるの(第27話)?
- E51. この番組はどんな賞を受賞していますか?
- E52. ウィンダム・アールの詩を書いたのは誰? 正確な語句は?
- E53. TPの俳優の中で、「X-ファイル」に主演しているのは誰ですか?
- E54. デイヴィッド・ドゥカヴニーはどのエピソードに出ていますか?
- E55. 「X-ファイル」でTPとの「クロスオーバー」エピソードは制作されるのですか?
- E56. ハンクのドミノの数字には何か意味があるのですか?
- E57. クーパーの夢の中で、赤い部屋のカーテンをよぎる影は何ですか(第2話)?
- E58. ベンは背後に何を見て驚いたのですか(第27話)?
- E59. TPのアイデアは、夜のソープ・オペラ「ダラス」から得たものですか?
- E60. 「赤い糸の縫い目」とは何ですか?
- E61. ピッツバーグで、クーパーに何が起きたのですか?
- E62. 巨人のせりふ「同一人物だ」とはどういう意味ですか?
- E63. ブラック・ロッジはクーパーをツイン・ピークスに誘い出したのですか?
E47. ジャコビー医師を襲ったのは誰(第7話)?
ジャコビー医師が公園でマディ(ローラに変装)をこっそり見ていたときに、後ろから彼を襲撃した人物については、シリーズ中では明確にされていません。
マーク・アルトマンの”Twin Peaks: Behind the Scenes”(「書籍その他」のP1を参照)で、著者は第7
話のあらすじに次のような注を入れています。
「ジャコビー医師を襲った人物は番組中では明らかにされていないが、マーク・フロストによると“ボブ”に憑依されたリーランドであった。彼はマディが家を出るのを見て後をつけた。ジャコビーが彼女に危害を加えるのではないかと恐れて医師を襲い、ジェームズとドナが到着したのでその場を去るしかなかった」
これは、第10話でも裏付けられます。ここでジャコビー医師はクーパーに催眠術をかけられ、ジャック・ルノーを殺害した人物を特定しようとします。クーパーは、ジャコビーが病院でオイルの焦げる匂いのことを口にします。匂いについて、ジャコビーは、四阿で襲われたときに同じ匂いがしたと言います。後になって、その焦げたような匂いはリーランド/ボブと関連していることがわかります(E34を参照)。これも、リーランド/ボブがジャコビーを襲ったことの手がかりのひとつです。
E48. リーランドのように、一夜にして髪が真っ白になるというのは、実際に有り得ることなのでしょうか(第8話)?
この話はalt.tv.twin-peaksニュースグループで何度も議論されてきました。「友達の友達が」とか「親類のひとりが」同じような経験をしたという話は多数ありますが、明らかに「都市伝説」と言われるものです。
このようなことが有り得るという医学的または科学的な証明はなされていません。人間の髪の毛が急速に抜け落ちてしまう(さまざまな要因による)とか、急速に色が変わるということはありますが、新しい髪に生え代わるには、同じ色の場合も違う色の場合も、通常の髪の成長サイクルと同じ、つまり数週間という期間が必要です。
したがって、これも「ツイン・ピークス」のライターがどこかから引用したものではないでしょうか(E16を参照)。しかし、これには映像的な理由もあるかもしれません。
From: david eugene vinson
Newsgroups: alt.tv.twin-peaks
Subject: UNCONNECTED THOUGHTS
Date: 17 Feb 1994 22:29:45 GMT
…
2) タコーマにいる従兄弟によると、レイ・ワイズがある地方紙のインタビューに答えて、リーランドの髪が白くなったのは、マディと彼自身の殺害シーンにおける血の色とのコントラストのためだったと言ったそうです。他にこの話を聞いた人はいますか? 白に赤というのは確かに印象的ですね。
E49. あの信号にはどんな意味があるの?
場面々々の間に繰り返し挿入される映像(木々の間を風が吹きぬけるショットのよう
に)に、色を変えている信号の映像があります。このシリーズが最初に放映された時に
は、これらのシーンが何かストーリーに関係あるのでは、とか、その前後の場面の予
兆や余韻なのでは、という仮説を多くの人が立てていました。
すべての場面にあてはまる説はなかったので、結局はその場面の雰囲気のために入
れられたのだろうということになりました。
From: Joseph Saponaro
Subject: Re: Comments on the series.
Organization: Department of Computer Science, University of Edinburgh
Date: Thu, 20 Oct 1994 16:26:29 GMT
あの信号は……んー。あの繰り返される映像はとても深い(とてもわかりにくい/商品化された)もののようです。あの映像はとても美しく、効果的でクリアーな参考場面/ビジュアル・イメージですが、それ以外に孤独の象徴でもあるように思われます。シリーズには宇宙的なイメージの葛藤や孤独の場面が多くあるので、信号はその個人を表しているようにも思われます。信号は、夜中に孤独に色を変えていますから。
少なくとも数回は、誰かが孤独になったり、迷っていたり、孤立無援だったり、葛藤していたりしている場面の直後に挿入されています……。それと、私はあの信号自体がスパークウッドと21号線の交差点にあると思うのですが、そこはストーリー上、ひじょうに重要な行動がとられた場所でもあります(ローラは殺害された夜、そこでジェームズの車から飛び降りて森の中へ向かいました)。
これは確かに不思議な映像ですね。
ある人は、停止信号と木々にそよぐ風を「ビジュアル・ハイク(俳句)」と評しました。筋書きやストーリーを進める要素ではありませんが、なぜか心の琴線に触れる見事な映像です。とても洗練された、あるいは無気味(スプーキー)な、そして魅惑的な映像と言えるでしょう。
E50. 街の人が手を震わせている場面にはどんな意味があるの(第27話)?
説は3通りあります。おそらく関連していると思われます。
1) 手の震えは、そのエピソードのラストで“ボブ”が現れる(グラストンベリー・グローヴにスポットライトがあたり、手が現れ、“ボブ”の本体が現れて「出たぞ!」と叫ぶ)ことの前兆なのです。また、劇場版のラスト近くで、片腕の男とLMFAPがガルモンボジーアを返してくれという場面でも、“ボブ”の手が震えていました。
2) 劇場版でテレサ・バンクスとローラの左腕が動かなくなったことと関連しています。ただし、第27話で震えていたのは「右手」でした。また、劇場版では腕の麻痺と「ふくろう」の指輪が関連していましたが、シリーズにはそれは出て来ません。
3) カフェインの禁断症状説:
From: Atreyu
Newsgroups: alt.tv.twin-peaks
Subject: Re: Hand Seizures
Date: Sun, 21 May 1995 21:50:03 -0700
誰か気づいてました? 番組との直接の関連でいくと、こうです。
1. 番組では、エンジン・オイルとコーヒーが等価である。
2. 川に何か異変がある – 誰が言ったか忘れちゃいましたけど。
3. 手が震えている人は、その前後にコーヒーを飲んでいる。
言い換えると、コーヒーは我々にとってのエンジン・オイルなのです。ガタガタいわないようにする潤滑油が必要なのです。「質の悪いコーヒー」を飲むと、ソワソワしたりブルブルしたりガタガタしたりするのです。
どういう意味かはわからないんですが……
E51. この番組はどんな賞を受賞していますか?
1990年10月13日、”TV Guide”誌の”Cheers ‘n’ Jeers”(最高&最低)より:
最低: 「ツイン・ピークス」がエミー賞を取れなかったこと。14部門にもノミネートされながら(これはシリーズとしては最高)、ABCの一風変わったゴシック・ソープ・オペラが受賞したのは、テレビ部門ではなく編集とコスチューム・デザインのみでした。ピークスの魔法は解けかけているのでしょうか。メディアはデイヴィッド・リンチ(写真)の談話を、まるで現代の御神託のように恭しく書き写し、タイアップ商品は大売れの様相を呈しています。しかし、番組自体も脚本や監督に新しい基準を設定し、エミー賞を取る価値はあったはずです。
91年の1月には、3部門でゴールデン・グローブ賞を受賞しています。
- 最優秀ドラマシリーズ
- 最優秀主演男優賞 (カイル・マクラクラン)
- 最優秀助演女優賞 (パイパー・ローリー)
E52. ウィンダム・アールの詩を書いたのは誰? 正確な語句は?
Date: Wed, 17 May 1995 10:36:54 +0800 (WST)
From: Sandra Bowdler
Subject: Windom Earle’s poem
ウィンダム・アールが3人の女王に送った詩は、パーシー・ビシュ・シェリーが1820年に書いたものです。彼の引用はあまり正確ではありませんでした。以下に全文を紹介します。
“Love’s Philosophy”
The fountains mingle with the river,
And the rivers with the ocean,
The winds of heaven mix for ever
With a sweet emotion;
Nothing in the world is single;
All things by a law divine
In one another’s being mingle –
Why not I with thine?See the mountains kiss high heaven,
And the waves kiss one another;
No sister flower would be forgiven
If it disdained its brother:
And the sunlight clasps the earth,
And the moonbeams kiss the sea;-
What are all the kissings worth,
If thou kiss not me?
※以下『シェリー詩集』(上田和夫訳 新潮文庫)より引用。
「愛の条理」
泉は川とまじり
川は海とまじる
空吹く風はいつも
やさしいこころとまじる。
世にひとりのものはない
あらゆるものが聖なるおきてによって
ひとつの精神に寄りあっている。
わたしがあなたに寄りあえないのは なぜ?山は天にくちづけし
波はたがいに抱きあう
雄花をあなどるなら
雌花はゆるされるはずがない。
陽光は大地をかきいだき
月のひかりは海にくちづけする。
あなたがわたしをこばむなら
このよろこばしい仕事に価値があろうか?
E53. TPの俳優の中で、「X-ファイル」に主演しているのは誰ですか?
この情報はアニサの好意によるものです。
TPの俳優たちが何人もX-ファイルに出演している主な理由は、地理的な近さです。X-ファイルはバンクーバーで撮影されており、TPが撮影されたのは、そこからすぐ近くのワシントン州でした。したがって、その付近に住んでいる俳優たちが採用されたのです。
X-ファイルに出演しているTP俳優をリストにしました。
氏名/X-Fのキャラ(エピソード)/TPキャラ
- デイヴィッド・ドゥカヴニー/フォックス・モルダー/デニス&デニース・ブライソン
- クレア・スタンスフィールド/ジャージー・デヴィル(同左)/判事の助手シド
- ジャン・ダーシー/判事(続スクィーズ)/シルヴィア・ホーン
- マイケル・ホース/トスカニ保安官(変形)/保安官助手ホーク
- マイケル・アンダーソン/Mr. ナット(サーカス)/LMFAP
- ドン・デイヴィス/ウィリアム・スカリー大佐(昇天Part3、海の彼方に)/ガーランド・ブリッグス少佐
- フランシス・ベイ/ドロシー(不老)/トレモンド夫人
- ケネス・ウェルシュ/ミレニアム・マンことサイモン・ゲーツ/ウィンダム・アール
- リチャード・ベイマー/不明(Sanguinarium)/ベン・ホーン
E54. デイヴィッド・ドゥカヴニーはどのエピソードに出ていますか?
トランスベスタイトのDEA捜査官、デニス/デニース・ブライソンとして、第18話~第20話に出演しています。
E55. 「X-ファイル」でTPとの「クロスオーバー」エピソードは制作されるのですか?
この手の噂は絶えませんが、クリス・カーター(X-ファイルの制作者)によると、そこに真実はまったくないそうです(もっとも彼自身はTPのファンですが)。
X-ファイル/TPのファンによる「クロスオーバー」作品は、アーカイブに入っています。
E56. ハンクのドミノの数字には何か意味があるのですか?
ほとんどのエピソードでは、ハンクは3の目が2つ並んだドミノを着けています。しかし、第15話では、ハンクがレストランでノーマ母娘やアーニーと同席している場面で、ハンクのループタイには4の目のドミノが付いています。
目が変わったのは、ハンクが殺害した人数と関係があるという仮説を立てている人もいます。
しかし、単に3の目のドミノが紛失したため別のを使用した、というのが真相のようです。
E57. クーパーの夢の中で、赤い部屋のカーテンをよぎる影は何ですか(第2話)?
第2話の撮影台本によると、鳥の影だそうです。
E58. ベンは背後に何を見て驚いたのですか(第27話)?
第27話で、ベンはオフィスでオードリーに、ミス・ツイン・ピークス・コンテストに出場して自分の主張を伝えてほしいと話しています。ここで彼は、ジャックが急に南米に戻らなければならなくなって出発したと告げ、オードリーは後を追います。彼女は、ジョシーの顔が見えるとつぶやいていたピートをつかまえて、空港まで運転してもらいます。一方ベンのオフィスでは、ベンが背後に何かの音を聞いて振り返りますが、彼が何を見たかは明らかになっていません。
ピートのつぶやきに基づいて、彼はジョシーの存在を見たか感じたかしたのだろうとする仮説もあります(E37を参照)。しかし、これも答えが得られない疑問のひとつです。また、今のところ撮影台本での答えのチェックは行われていません。
E59. TPのアイデアは、夜のソープ・オペラ「ダラス」から得たものですか?
夜に放映されていたソープ・オペラ「ダラス」では、ボビーがTV番組のアイデアを持つ男と出会います。彼は丸太を持つ女性や片腕の小人について語りました。その人物は、それきり番組には出ませんでした。
「ダラス」は「ツイン・ピークス」よりずっと前に放映されたので、これが「ツイン・ピークス」のインスピレーションとなったのではないかと考えている人もいます。「ダラス」の放映開始が「ツイン・ピークス」より前なのは確かですが、「ツイン・ピークス」の放映が始まった時にもまだ続いていました。このような類似は、放映中の「別の」ソープ・オペラ番組に対するちょっとしたお遊びの引用だったのでしょう。
E60. 「赤い糸の縫い目」とは何ですか?
「ヨーロッパ版」パイロット・エピソード(E10を参照)では、片腕の男がクーパーに電話して、テレサ・バンクスについて知っている、彼女を殺した犯人を知っている、「赤い糸の縫い目」について知っていると言います。
これについては、その後シリーズでも劇場版でも出て来ません。一説によると、それは劇場版の中で、飛行場の「暗号メッセージ」のシーンに出て来るリルのドレスの縫い目ではないかと言われていますが(「劇場版」のF12を参照)、ドレスを縫っていた糸は赤ではないので、有力説とはいえません。
このシーンは劇場版より前に書かれたので、単にテレサ・バンクス事件について詳しいことを語ることにより、クーパーに対して自分の知識を「証明」し、自分のヒントを信用させようとするためのものにすぎなかったと言えそうです。
「ヨーロッパ版」パイロットのこのシーンは、第2話のクーパーの夢の部分に組み入れられ、片腕の男からの電話のシーンはカットされたので、縫い目については劇場版で言及する必要はないとされたのでしょう。
E61. ピッツバーグで、クーパーに何が起きたのですか?
“ボブ”がリーランドを通してクーパーに「告白」するシーンで、“ボブ”はクーパーを嘲ります。
「そのようなことをした……刃物を持ってな…
…ピッツバーグの時と同じだな、クーパー」
これを聞いてクーパーはたじろぎます。ピッツバーグで彼を襲った悲劇について知っている人物がツイン・ピークスにいるはずはないからです。
“ボブ”が言っているのは、クーパーとウィンダム・アールと彼の妻キャロラインとの間に起こった出来事のことです。クーパーとキャロラインは2人ともアールに刺されました(シリーズ最終話の赤い部屋のシーンによる)。クーパーは後のエピソードでその事件の一部をトルーマン保安官に語っていますが、すべてを語ったわけではありません。詳しくはクーパーの自伝『ツイン・ピークス クーパーは語る』に書いてあります(この本については「書籍その他」のP1を参照)。
E62. 巨人のせりふ「同一人物だ」とはどういう意味ですか?
最終話(#29)でクーパーは、別世界から来た小人と老ウェイター(セニョール・ドルールカップ)と巨人に赤い部屋で出会います。そこで、老ウェイターは彼にコーヒーを出し、その後突然巨人と入れ代わり、巨人が「同一人物だ(one and the same)」と言ってLMFAPの隣の席に戻ります。
当然ながら、意見はさまざまです。
- 巨人と老ウェイターが「同一人物」である
- LMFAPと老ウェイターが「同一人物」である
- LMFAPと巨人が「同一人物」である
この3つの仮説をめぐる議論はalt.tv.twin-peaksで活発に交わされており、この問題についても全員を満足させる結論は出そうにありません。
アラン・ウォルワースの意見はこうです。
いつも驚かされるのは、ただひとつの『正しい』解釈への執着ということです。ツイン・ピークスの場合は特にそうですね。『同一人物だ』の重要性は、もどかしいほどに(これを重要と考える人々のために、わざとそうされたのではと思いますが)曖昧です。この問題に対するディベートに費やされた時間とエネルギーは、それ自体が多義性を証明していると言えます。この点で、番組に関する他の多くの問題と同じように、我々が「同一の」見解に達することはなさそうです。
E63. ブラック・ロッジはクーパーをツイン・ピークスに誘い出したのですか?
alt.tv.twin-peaksニュースグループでは長い間、ブラック・ロッジの住人がローラ・パーマー殺害事件を使ってクーパー捜査官をツイン・ピークスにおびき出し、彼を捕らえて利用したのではないか、そして第3シーズンでは“ボブ”に乗っ取られたクーパーが「真の悪役」となるのではないか、という議論がなされてきました。ブラック・ロッジかホワイト・ロッジがアニーを送り込んでクーパーを無防備にしたのではないかという説さえあります。この説の根拠は、アニーが赤い部屋から無傷で脱出したことです。
脚本家たちはそう考えていたのでしょうか? ニュースグループの読者と脚本家のハーレー・ペイトンの間で交わされた電子メールから、この説に対するペイトンの応答と、番組のプロットがどこまで考えられていたかという部分を引用します。
アニーの性質は、第3シーズンの結末で明らかにするつもりでした。これは、プロットのクリフハンガーを処理する方法なのです。まず提示して、後で解明するわけです。物語としてはかならずしもベストの方法ではありませんが、制作現場に混乱がある場合――デイヴィッドが突然現れては消えたり、マーク・フロストが映画の監督をしていたり――には、ベストの方法なのです。
「ボブは最初からクーパーを狙っていた」説については……
まず、クーパーは番組の「真の悪役」ではありません。また、“ボブ”も最初からクーパーを狙っていたわけではありません。いずれにしても、我々のような行き当たりばったりの制作方法では、あまり先の話まで前もって考えておくことはできないのです。クーパーが鏡の中にボブの姿を見る、というひじょうにドラマチックな場面は、制作の最後の週に決まりました。したがってその説は後知恵であり、くり返しますが間違っています。
悪がクーパーを追っているというのは、まんざら間違いでもありません。アニーに関しては、彼が恋をしたために危険にさらされたのです。しかし、クーパーはアニーへの愛によって今までになかった清廉さを得ることはなかったものの、第2のチャンスを与えられました。
アニーについての仮説は面白いものですが、これも間違っています。悲しいかな、アニーは――少なくとも当初の設定では――悩める乙女というもので、それ以上のものではありませんでした。しかし、番組が継続されれば、彼女をめぐる関係や過去や重要性といった要素を深めることができたでしょう。ホワイト・ロッジの使いということもあり得ました。これはとても良いアイデアだと思います。しかし番組が終わってしまったので第3シーズンはなくなり、彼女はブラック・ロッジにもホワイト・ロッジにもいないということになりました。
「ファンが人物の過去や動機に関してさまざまな仮説を立てるのは、脚本家の意図と同じぐらい面白い」というのは、まさにその通りです。作品とは、いったん発表されると自分の手を離れてしまうものです。そして、それに伴うさまざまな解釈はすべて--私の意見では--画面に現れたものと同じぐらい妥当なものでした(です)。さてもう一度繰り返させてください。脚本家は視聴者と共に想像し、このようにしてキャラクターたちの多くは役柄の厚みを増していくのです。また、時には無から有を生じるようなこともあります。人物名はお気に入りの映画から取ったり、それらを組み合わせたりしたものも、暗示的な名前もあります。そこでまた名前に込められた意味をさぐる想像が交錯していくでしょう。葉巻は単なる葉巻かもしれません。しかしほとんどの場合は……。