通算113話「復讐する過去」
サムの姉が失踪。現地警察から連絡を受けたサムは「家族の用事で」と言って休暇を取るが、失踪の件はすぐにマローンのチームに知られてしまう。
WITHOUT A TRACE/FBI 失踪者を追え! 5thシーズン 後半
- 脚本:Gwendolyn M. Parker, Jan Nash
- 監督:Jonathan Kaplan
- 初回放映:2007-03-25
失踪者:エミリー・レイノルズ
サムの姉エミリー・レイノルズが失踪。駐車場に荷物とスタンガンが残され、何者かに襲われて拉致された可能性があった。サムは現地警察のキング刑事から連絡を受け、捜査への協力を申し出る。マローンには「家族の用事で」とだけ伝えるが、エミリーの件はヴィヴィアンに捕捉されていた。
エミリーの夫アンドリューは弁護士で、しばらく出張して戻ったばかり。しばらく前からエミリーの様子が変で、口座から2万ドルを引き出していたという。また、隣人は不審な車を目撃していた。
自宅付近で目撃された車が発見される。持ち主の男性は、アンドリューの依頼でエミリーを調べていたことを認め、彼女が男性と抱き合う姿を撮影していた。だがアンドリューは妻の浮気を信じず「調査は事務所の情報漏洩がきっかけだった」と言う。相手の男性は以前自宅へ来たことがあり、エミリーからは「大学時代の友人のデール」と紹介されていた。
マローンのチームが捜査に加わる。デールの本名はデール・エンティと判明。デールは取調べに応じ、自分が養子にした息子のランディは、エミリーが産んだ子だと言う。ランディは悪性リンパ腫で骨髄移植が必要だが、エミリーは不適合。父親は不明だが、エミリーは「連絡してみる」と言ったという。サムはエミリーの出産について何も知らなかったが、姉は16歳の時、一時的に家出したことがあったと語る。
エミリーのカードが使用されたことがわかり、防犯カメラに映った男性が緊急手配される。
エミリーが数日前、実家のあるケノーシャに行ったことがわかり、サムが実家へ向かう。ヴィヴィアンは昔の事件の記録を調べ、サムと姉と母親がジョー・ヘンリーという男の失踪について証言していたことを知る。ジョーは母親の交際相手で、エミリーの家出はジョーが失踪した少し後だった。
防犯カメラの男はジョーの息子のジェフ・ヘンリーと判明。ジェフは自宅におらず、同居の女性はエミリーが会いに来て血液検査を頼んでいたことを話す。ジェフは移植の話に疑いを抱いてエミリーを尾行し、「パトリシア・スペード」(サムの母)宛の封筒を持ち帰っていた。サムはそれを見て、エミリーの居場所を確信する。
かつてのジョー・ヘンリーの家へ行ってみると、エミリーがジェフに銃で脅されていた。サムはジェフを射殺し、駆けつけたマローンには「骨髄検査に関する金銭トラブル」と報告。
マローンは、ランディの父親がジョー・ヘンリーであることを見抜き、サムに本当のことを話すよう迫る。サムは「私がジョー・ヘンリーを殺した」と告白。ジョーに姉がレイプされている現場を見たサムは、シャベルでジョーを殴り殺し、エミリーとともに遺体を近くに埋めた。
サムは「実際に起きたことをなかったことにできない」と言い、支局長にすべて話す決意を固めるが、調査官の話にマローンが強引に同席。調査内容は発砲の件のみに限定され、マローンは「君を失うわけにいかない」と、ジョー・ヘンリー殺害および遺体遺棄を隠蔽する。
サムは現在の職にとどまり、ランディへの骨髄移植はパトリシアに適合の可能性があるとわかる。
これはいくら何でもやりすぎでしょ!無茶苦茶すぎ!
「転落」でアビーの義父に怒鳴り散らした場面がこのエピソードの伏線だったことはわかったが、ちょっと無理がありすぎる。今まで4シーズン普通に暮らしていて唐突にトラウマ発動って何なの。
ジョーがエミリーをレイプしたことは許されないことだし、サムが夢中で殴ってしまったのはわかる。しかし遺体を埋めて知らん顔して警察の取調べをかわし、そのまま進学してFBI捜査官になった?で、今まで普通に仕事として犯罪と接しながら、シーズン5になって突然トラウマ発動。ぜんぜん説得力がない。
100×100歩譲ってサムが遺体を埋めたことは認めるとしても、それをマローンが隠蔽してしまうのは絶対に絶対にあり得ない、かなり悪質な犯罪ではないか。
通常なら「遺族の気持ちはどうなる」となるところだが、おそらく唯一の遺族であるジェフはサムが射殺。父親も息子も、エミリーを守るためにサムが殺したという結果になった。あの場面は正当な発砲と認められるだろうが、物語の構成としては「サムを処罰しなくても傷つく人はいない」という状況を作りたかったので、そのためにジェフを殺してよい場面に持って行った――としか思えない。ストーリー作りとしても、説得力のある展開とは思えなかった。
他にも、説明不足の点が多かった気がする。
その当時少年院に入っていたジェフの存在をエミリーはどうやって知ったのか、ジェフはエミリーを尾行したというが、人気のないところを狙って拉致できるほど行動を把握できたのか、パトリシア宛の封筒は何だったのか、なぜサムはそれを見て場所がわかったのか、などなど。確認のために見直す気力もない。もう知らん。
ひとつ面白いなと思ったのは、エミリーが自己啓発に傾倒していたというところ。彼女なりのトラウマ克服方法なのかもしれないが、そういえば自己啓発セミナーの出て来るエピソードがあったよね、と思って探してみたら、シーズン2の「人生のルールと嘘」だった。ここで、サムが自己啓発セミナーにハマっていたという過去が明かされるのだが、まさかこの話が今回の伏線という可能性は、ないと思う。
それにしても今シーズン、捜査官の個人ドラマが多い割にストーリーアークとして進んでいかない感がある。マローンとアンのラブストーリーは新生活を予感させていたのに、アンが流産して破局。ダニーとエレナは交際するところまでいったのに、誘拐事件でぎくしゃくして後戻り。サムは過去と決着を付けようとしたのにマローンの隠蔽工作でこれも後戻り。こういう所がダメなんじゃないのかな……少しずつで良いので、人間関係を育んでキャラを成長させてあげないと。
そうだ、個人ドラマといえば、冒頭でサムの部屋にいたブライアンって誰?
2025-07-16