通算130話「軍事司法統一法典32条」
Without a Trace/FBI失踪者を追え! シーズン6
- 脚本:Byron Balasco
- 監督:Martha Mitchell
- 初回放映:2008-01-17
失踪者:ローラ・リチャーズ
退役軍人病院で義肢制作を手伝っていたローラ・リチャーズが失踪。ローラは万引きで逮捕され、5週間の社会奉仕として病院で働いていた。ローラは美大を出ており、タトゥーを描いた義肢が好評だった。
ローラは中古車販売店を経営する父親と同居しているが、親子仲はあまり良くなかった。軍人病院での奉仕は元軍人である父親のコネだったが、ローラはそれに憤慨していたという。母親を早くに亡くし、父親は彼女を厳しく育てたというが、戦地のトラウマから奇矯な行動を起こすこともあったことがわかる。
職場で彼女の周囲をうろついていたレイナーという不審な従業員がいることがわかり、調べてみると医療記録を改ざんして詐欺に加担していた疑いが生じる。レイナーはローラに現場を見られたことを認めたが、黙っているかわりに車検証を偽造するという取引に応じたという。
ローラのPCには兵士が負傷した写真が残されていた。写真の兵士ダニエル・エレビーも片脚を失って入院しており、その時ローラが親身に話を聞いてくれたため、友達になっていた。ローラはダニエルと話した次の日に「町を出る」と言ったが、行先や期間については言わなかったという。
ローラが偽の車検証で売った車が発見され、購入した男キャメロンが逮捕される。キャメロンは車と引き換えに工業用の溶剤の材料を提供したことを認め、取引の場に「ウィル」と名乗る男がいたことを供述する。取引場所を聞き出して向かってみると、そこで作られていたのは爆弾だった。爆破対象は、軍の訓練施設らしい。
「ウィル」の正体は政治学を学ぶ元大学院生のウィル・ヘリングと判明。テロ攻撃を予告して退学になっており、ローラは彼に同調して協力者になっていた。
ローラのPCに保管されていたダニエルの写真はイラクで同行取材していた記者が撮影したものだが、その後に部隊長のチーバー中尉にカメラごと押収されていたことがわかる。
マローンはエレナとともにチーバーの自宅へ向かうが、そこでチーバーは胸を撃たれて死亡していた。その後の調べで、チーバーは軍法32条の審問に召喚されていたことがわかる。ダニエルが片脚を失った時の戦闘では戦友のエリックが戦死しているが、それが友軍の誤射であった可能性があった。
ウィルは爆弾の信管を持っているところを逮捕される。彼は軍の施設を爆破する計画を立てていたことを認めるが、直前になってローラが心変わりし、爆弾を破壊しようとしたという。ローラはダニエルと出会って恋をし、誠実な兵士たちを傷つけるのは間違いだと思ったようだ。
ダニエルは再び取調べを受け、ローラとのことを認めるが、結局は妻のために別れたという。エリックが戦死した時のことについては「混乱の中で皆が脅えており、中尉が死んだイラク人の手に武器を持たせた」と言う。ローラは父親が苦しむ姿を見ていたため、「隠し通すと苦しみは消えない」とダニエルを説得し、エリックの遺族に事実を話した。
2人はチーバーに会って事実を話すよう説得しようとするが彼は怒り、銃を取り出してダニエルと争った。ローラは2人が争う隙に銃を拾い、チーバーを撃ってしまったのだった。ダニエルはチーバーの車でローラを逃がし、その後のことは知らないと主張する。
チーバーの車はローラの父親のガレージで発見される。父親はローラと和解し逃亡をほう助したことを認める。どうやらカナダへ出国したらしいとわかるが、マローンは手配を急がなかった。
組織的人身売買事件
ヴィヴィアンはマース刑事とともにタスクフォースを立ち上げ、新規メンバーとして応募してきた捜査官の面接を行う。
マース刑事はボルティモアにいる情報提供者に会いに行くが、その際「脅しをかけよう」としてヴィヴィアンのIDでSWATを要請。話を聞いていなかったヴィヴィアンは驚き、マース刑事に注意をする。
面接に来た捜査官はいずれもヴィヴィアンに評価されなかったが、その後に会いに来た若手のコリアーは、非合法の堕胎手術を捜査した経験があり「1人の男が3人の手術費用を支払った」件を調べてみてはどうかと提案する。
ヴィヴィアンの捜査は、失踪者・アンジェラの捜索を終え、その背後にある組織犯罪を摘発するという主目的に焦点を定めた。新しいメンバーを入れようとするのだが、面接に来た捜査官はどうもダメダメっぽい。一人だけ若手のコリアーが良い提案をして来るのだが、コリアーを演じた俳優さんの出演は今回のみ。ということは、やはり彼も採用されなかったのか……。
メインの事件は、傷病兵の記録を改ざんする詐欺から軍施設への爆弾テロへと話が広がり、結局は友軍による誤射事件が背景にあったとわかる。
アンジェラの失踪を届けた時点で、「2日間職場に現れず、車は病院の駐車場に置いたまま」だったのだが、その間彼女がどこで何をしていたのか、タイムラインがいまいち不明確だったように思う。職場に車を置いたまま、2日間どこで寝泊りをしていたのか?チーバーの自宅へ行ったのはどのタイミングだったのか?(父親のセリフからは、失踪後FBIが捜査を始めた後のようだが)
バラバラの場面が1本の時間軸に集約されていくプロセスの説得力が今回は足りなかったのではないか。
また、最後はマローンもローラの手配を急がず、見逃すつもりのようだが、それで良いのか?
ローラはダニエルに対して「隠し通すとその苦しみは消えない」と言って、事実を明るみに出すよう説得したのだが、その彼女自身がチーバーを撃ってそのまま逃亡では、あまりに整合性を欠く行動にならないだろうか。ちゃんと警察に出頭して正当防衛を主張するべきではなかったかと思う。
マローンの父親のことなど、内面を描写する場面が多かっただけに、この矛盾は残念だ。
2025-10-14