通算125話「父と息子」
教室で人種差別的な発言をして非難された大学生が、寮の部屋から失踪。恋人によると、彼は差別主義者ではないが、このところ様子が変だったという。父親は腰痛の持病で働くことができず、経済的な問題を抱えていた。
Without a Trace/FBI失踪者を追え! シーズン6
- 脚本:Jose Molina
- 監督:Martha Mitchell
- 初回放映:2007-11-15
失踪者:トム・スウィーニー
大学生のトム・スウィーニーが寮の部屋から失踪。彼は教室で人種差別的な発言をして黒人のクラスメートと争い、その様子を動画に撮影されてネットに公開され、非難の集中砲火を浴びていた。恋人のレイチェルは、トムは差別主義者ではないと言うが「このところ様子が変だった」と不安を口にする。
トムの父親のジムは腰痛がひどくて働くことができず、母親のゲイルが長時間働いていた。ジムは市販薬で痛みを抑えることができず、傷病手当が打ち切られたため違法な薬物に手を出していた。トムとは薬物のことで口論したという。
争った相手の学生アレン・ヘイズも一時的に姿を消していたが、騒ぎになったので祖母の家に行っていたという。アレンの話から失踪直前にトムのいた場所がわかり、防犯カメラを調べたところ、トムが男性と口論した後、車に乗せられていた映像が発見される。
前の週にトムと友人のブライアンがまとまった現金を引き出していたことがわかり、ブライアンに事情を聞いたところ「スポーツ賭博をして負けた」と言う。その時、賭博場で働いていた女性とトムが親しく話していたことがわかり、事情を聞いたところ、トムは彼女の父親で賭場を経営するアーサー・リグスに会いたがっていたという。トムを車に押し込んだ男性はリグスだった。
トムはリグスがゲイルと一緒にいるところを見て不倫だと思ったが、不倫は20年前のことで、トムの父親は実はリグスだった。ゲイルは妊娠がわかってリグスと別れ、ジムには事情を話したが、トムには秘密にして20年間連絡を絶っていた。だが家計が苦しくリグスに金を借りた。ゲイルはトムの誤解を解こうとして事情を話したという。トムが教室で差別発言をしたのはその翌日のことだった。トムは自分が父親と違うことを幼少期から感じており、居場所のない思いを抱えていたようだった。
リグスが10万ドルを引き出そうとしたことがわかり、身柄を確保して事情を聞くと「トムを誘拐されて身代金を要求された」と話す。トムを車に乗せたことは事実だが、トムは彼の話を聞こうとせず、途中で帰ってしまったとという。
犯人から電話がかかり、リグスに身代金の受け渡し場所を指定する。逆探知は失敗したが、現地に張り込んで待ち伏せたところ、犯人が現れる。身柄を確保して覆面を取ると、それはブライアンだった。
トムはリグスと別れた後、ブライアンの部屋に行ってすべての事情を打ち明け、リグスを破滅させたいと口にしていた。金に困っていたブライアンは誘拐を演じて身代金を奪おうともちかける。トムはいったん同意したものの、いざという時に「やはりこれは間違っている」と言い出したため、ブライアンはトムを殴り倒して単独で受け渡し場所に現れたのだった。
トムはブライアンの部屋で気を失っているところを救助され、病院で手当てを受ける。
人種差別的な発言をして争いになる冒頭場面。その後に全世界から非難されているのが差別発言をした白人学生の方であることに時代を感じてしまった。2007年はこうだったのかと。2016年以降だと、身の危険を感じたのは黒人学生の方だろう。
とはいえ、争った相手のアレンも寮の部屋にいないのに「失踪者」とされていないのはなぜ?単に時間的な問題だろうか。
今回の原題「アブサロム」は旧約聖書の登場人物。ダビデ王の息子アブサロムは、父に対して反乱を起こすが反撃されて捕らえられ、父の腹心だったヨアブに殺害される。アブサロムがトムのことなら、ダビデ王はどちらの父なのか……ストーリーの流れからはリグスの方かなとは思うが、いまいちピンとこない感がある。
リグスに身代金要求が来た時点で、これは狂言だろうなと思ったら、やはりそうだった。だが、トムはリグスを振り払ってブライアンの所へ行ったということは、寮に戻って来ているはずだが、それは記録されていないのだろうか。ブライアンはトムと同室になるはずが、運良く一人部屋が当たったわけなので、同じ寮に住んでいると思ったのだが。
ともあれ、最後は家族の和解を感じさせる場面で良かった。
2025-09-14