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CSI - Season 6, Episode 18

#135 The Unusual Suspect


You have to be really smart to make people think things happened that never did.

事件概要

ステイシー・ヴォルマー殺害事件

女子高校生ステイシー・ヴォルマーの遺体が、シャワーカーテンに包まれ校庭の花壇に埋められているのが発見される。

ステイシーは夜間ひとりでテニスの練習をした後、更衣室でシャワーを浴びようとした時に、シャワーヘッドに仕込まれていた苛性ソーダで火傷をし、パニックを起こしてシャワーカーテンで身体を覆って更衣室を跳び出し、階段で足を滑らせて転がり落ち、頭を打って死亡し、その後校庭に運ばれて埋められたものと思われた。

同級生マーロンの家の浴室からは漂白された衣類、排水溝からステイシーの血と毛髪が発見される。マーロンは犯行を自白して逮捕、起訴されるが、証人として出廷した妹のハンナが「犯人は自分だ」と証言して周囲を驚かせる。法廷は72時間休廷し、その間にCSIは証拠を再検討することになる。

ハンナはまだ12歳だが、IQ177と判定され、6年飛び級してマーロンと同じ高校に通っていた。ハンナは、ステイシーに苛められた仕返しをしようとしてシャワーに苛性ソーダを入れたと主張する。ハンナの部屋からは、動機を裏付ける証拠が見つかる。またハンナは化学の成績が良く苛性ソーダの特性にも通じていた。自宅の浴室はマーロンと共有なので、マーロンを指していたはずの証拠はハンナの犯行と仮定しても説明がついてしまう。遺体の運搬もカートを使えば可能と思われた。

一方マーロンは、自分がステイシーを殺したと言い、ハンナは自分をかばっているだけだと主張する。サラはハンナ犯行説に傾くが、ニックはマーロン犯行説を維持。検事もマーロンの公判を継続するが、陪審員は無罪の評決に達する。

サラはハンナに対し「罪を犯して逃れられると思ってはいけない」と警告するが、ハンナはサラの耳元で「本当はマーロンが殺したの」とささやく――。


感想

法廷の場面でいきなり「話が違~う!」となってしまい、限られた時間で証拠を洗い直す――という、「猶予24時間」を思い出させるエピソード。タイトルはもちろん、「ユージュアル・サスペクツ」のパロディですな。

CSIの仕事は証拠を収集して分析することだが、今回は犯行を積極的に示す「~が犯人でなければこうはならない」という証拠が登場しない。「~が犯人であるという仮定に矛盾しない」という証拠ばかり。容疑者が1人だけで、しかも犯行を認めていればそれで十分なはずだったが、第2の容疑者が現れることで、その証拠に翻弄されるはめになってしまう。

今回グリッソムはまったく登場せず。グレッグもいなかったかな。捜査の中心はニックとサラだった。特にハンナとのやり取りはほとんどサラが担当し、サラ自身とハンナの共通性のようなものも感じさせていた。サラも聡明な少女で、マリファナを隠し持つような兄がいたことが言われていた――が、その設定まだ有効なのかな? この件はサラ自身の背景に何か関わってくるのだろうか。サラの父親を殺したのは本当は母親ではなくサラだったとか、まさかそういう伏線ではないと思うけど。&bigsmile;

それにしてもスッキリしない話! 州と連邦の二重性を利用して一事不再理の網を抜けるのは、だからこういう事件でこそやってほしいわけよ!

こういうストーリーを提示されると「本当はどっちがやったのかな?」ということをどうしても考えてしまうので、自然と細かい点に目が行ってしまうわけだが……細部をつめるという点では、今回のエピソードはいささか杜撰だと思う。他のエピソードと比べて特に、というわけではないが、話の性質上つっこまないわけにはいかないだろう。

というわけで、以下疑問点:

しかし最大の疑問点はやはり、被告人のマーロン本人が有罪を主張しているのに、なぜ弁護士が無罪を主張しているのか? ということだろう。

アメリカの刑事裁判では、(ずっと前に習ったところでは)検事が起訴した後にまず罪状認否という手続きがあり、そこで検察の主張を認めるかどうかを確認されるはず。そこで、有罪を認める場合はその場ですぐ量刑に入る(日本では、形だけでも一応審査をするらしいけど)。無罪を主張して争う場合は、判事が保釈金の金額を決めて、その後改めて公判手続きに入るんだったと思う。被告人が未成年だと審査するのだろうか? それにしても代理人たる弁護士と主張が正反対ってあり得ないのでは?

(……と思ったが、現実には被告人が有罪を認めていても身代わり犯人の可能性が高い場合、日本では弁護人が無罪主張をすることもあるということがわかったので、下に追記した。)

公判が始まってからも、被告人が主張を変えて起訴事実を認めるとか検事と取引するとかは可能なはず。公正な裁判を受ける(自分の無実を主張する)のは被告人の「権利」なので、その権利はいつでも放棄できるのではないのだろうか。

ハンナ役の子がとても良かったのでその点で多少は相殺されるものの……色々な点で「惜しい」エピソードだった。

それにしても弁護士の最終弁論、「マーロンみたいな生徒には苛性ソーダは扱えないし、彼が図書館になど行くわけがありません」って何気に失礼だな。


【2007-08-18 追記】

下記のブログに関係のありそうな話題があったので、紹介されていた『季刊 刑事弁護 No.22』(2000年4月10日)を読んでみた。

この号の特集記事は「刑事弁護の論理と倫理」で、中に「こんなとき、あなたならどうしますか?」というアンケートが記載されていた。その設問C〈自動車運転中に過失で人をはねて死に至らせたとして起訴された被告人が、「実は運転していたのは自分の妻であるが、自分が罪を認めたい」という場合〉がこのエピソードに近いと思う。

回答の中では「身代わりをやめるよう説得し、受け入れられない場合は辞任する」というものが多かった。このような場合、弁護人は真犯人を明かす義務はないとされている。かといって、被告人の言うとおりに有罪の答弁を行うと、それは犯人隠避罪になるおそれがある。また、無罪の人に対して有罪の主張をすることはやはり弁護士倫理に反するとのことだった。というわけで次に多い回答は「真犯人を明かさない範囲で無罪を主張する」というもの。供述の矛盾を指摘するとか、それこそ「証拠に聞く」かたちで検察の主張を覆すのだろうと思う。ただしそれがすべてではなく、依頼者の意向に沿って有罪を主張するという回答もあった。

以上は日本国内の弁護士の回答例。このアンケートには「海外編」もあって、アメリカ合衆国(カリフォルニア州だが)の弁護士の回答も1例あった。この弁護士さんも、自分なら辞任するだろうと回答しているが、同時に「有罪」答弁をせずにすむ解決方法も紹介されている。たとえば「不抗争(no contest plea)」の答弁をすれば、有罪と答弁せずに(つまり、嘘を言わずに)有罪答弁と同じ効果を得ることができるとか(何のためにそんな制度があるんだろう)。

いずれにしても、このような事件で弁護人がどうすべきかというのは、弁護士倫理や依頼人との関係など様々な視点があり、ひとつの正解があるというものでもなく、ひじょうに難しい問題であるということはよくわかった。CSIの守備範囲からも少々はずれたテーマになると思う。


単語帳

Yoko (yoko221b) 2007-05-15