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Dead of Winter

小説版CSI:NY第1弾。著者はエドガー賞受賞作家のスチュアート・カミンスキー。大雪のニューヨーク。マックとエイデンは高級アパートのエレベータで、住人が射殺された事件を担当。ステラ、ダニー、フラック刑事は、重要な証言を控えた証人が、警官二人に守られていながらホテルの部屋で殺害された事件を担当する。マックは、CSIのトップであるためか、両方の事件の捜査に参加している。


書誌情報

Dead of Winter

CSI:ニューヨーク 死の冬

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内容・感想

マックス・アラン・コリンズの小説が「ドラマのノベライズ的面白さ」とすると、カミンスキーの作品には「オーソドックスなミステリ的面白さ」を感じる。科学捜査云々よりも、普通にミステリとして面白い。

最初、気温が0度を下回った、という記述を読んで普通に「氷点下か~」と思っていたのだけど、よく考えるとアメリカだから華氏だよね。華氏で0度だと、摂氏ではマイナス17.8℃。これは寒い! 後半の方で気温は「15度まで上って」いるのだが、これは摂氏でマイナス9.4℃。ニューヨークってモスクワ並に寒いんだなぁ。

マックの事件では、とある高級アパートで住人のチャールズ・ルトニコフが射殺される。彼は下の階の、比較的家賃の安い部屋に住んでいたのだが、死んでいたのはペントハウス直通のエレベータ。犯行が行われたのはミステリ作家、ルイーザ・コーミエの住んでいた階であり、また弾道検査からも、撃った人物の身長はルイーザとほぼ同じということもわかる。さらに、調べていくうちにルトニコフがルイーザのゴーストライターだったことも判明。それが判明したのは、マックの依頼で言語学者がルイーザの本を鑑定したからなのだが、語彙や記号の使い方などで書きぐせを分析していくところが面白かった。

この事件は、犯人は早々に見当がついてしまい、後はトリックの解明が重要な点になる。凶器の拳銃をどこに隠したのか? という点が、いかにもミステリ作家らしいトリックだ。何かを隠すのに最も適した場所は、オープンな場所(盗まれた手紙!)と、一度探した場所。前半ではマックもエイデンもそれにまんまと引っかかり、ルイーザに「私の小説の主人公なら、銃のシリアル番号を調べたでしょうね」なんて嫌味を言われてしまう。

ステラの事件は、法廷で証言する予定だったアルバータ・スパニオが殺害された事件。彼女はホテルに宿泊し、居場所を誰にも知らせず、外部への連絡はいっさいせず(携帯電話も持たない)、部屋の外では警官二人がガードしていた。だが、その朝時間になっても起きないので、警官二人が扉を破って部屋に入ると、アルバータはベッドで刺されて死亡していた。浴室の窓が開いていたが、そこから出入りできるのは、子どもかひどくやせた女性ぐらいしかない。

アルバータはマフィアのボス(だと思う)、アンソニー・マルコの公判で証言する予定だった。現場の証拠から、アンソニーの弟ダリオの経営する店で働くビッグ・スティーヴィーの存在が浮かぶ。仲間には、超小柄な元ジョッキーのジェイクもいた。捜査の途中で、見張りの警官のうちの一人が殺害される。スティーヴィーの家に赴いたドン・フラックは、格闘の末肋骨を折られるという怪我をするが、拳銃でスティーヴィーの足を撃つ。

ドラマではいまいち影の薄いドン・フラックが活躍するのは良いのだが、こういう時って単独で捜査に行くものなんだろうか。ドラマではたいてい2人一緒だよね……。その時点での情報では、それほど危険はないという判断だったのか? でも、その後怪我を押してジェイクのアパートへ行ったときも1人だった。殺された警官はフラックと警察学校で一緒だったのだそうだ。

こちらの事件は、最初にいかにもと思われた状況証拠はレッドヘリングで、スティーヴィーは実は囮だったという話。そこから状況を組み立て直していくと、犯行が可能だったのは一人だけ、という結論になるわけだ。これは証拠からというより、状況から消去法で考えていくというパターンなので、科学捜査というより、やはりオーソドックスなミステリの展開であったと思う。

エピローグも良かった。事件解決後、クレアさんの墓前にたたずむマックのもとへ、ステラ、エイデン、ダニー、ドンの4人がやって来る。その日はマックのanniversaryだから、ということなのだが、おそらく結婚記念日だったのだろう。作中でマックが何度となくクレアのことを思い出している描写があるのだが、このせいだったのか。お墓の管理人さんが皆に小さな石をひとつずつ渡して、それを故人の思い出のために墓前に並べるシーンが良い。

Yoko (yoko221b) 2006-02-26