Table of Contents

Law & Order - Season 5, Episode 11

#99 Guardian


事件概要

People v. Jerome Kamen

デイケアセンターのゴミ捨て場で、若い女性の遺体が発見される。死因はヘロインの過剰摂取。元恋人が見つかり、氏名はケイティ・ブランチャードと判明。ケイティは裕福な家の娘だったが、ドラッグに溺れて現在は勘当の身でリハビリ施設を転々としていた。政治家だった父親のケン・ブランチャードは数年前に事故死し、その後は父親の親友のジェローム・ケイメンが父親代わりだった。

母親は「すべてドラッグに使ってしまうから」とケイティには金銭を与えず、末の妹に近づくことも禁じていたが、イェール大学に通う弟のマシューだけはケイティと連絡を取っていた。ケイティに住居を与え、生活の面倒をみていたのはケイメンだったことがわかる。刑事たちはそれ以上の関与を疑うが証拠はない。車を調べようにも令状が取れそうにないので、ケイメンがケイティの荷物をまとめて住居を引き払ったことを理由に、証拠隠滅 (hindering prosecution) で逮捕する。車内にいる時に逮捕すれば、令状なしで車を調べることができる。

車内からは嘔吐の跡が発見され、ケイメンはケイティ殺害容疑で再逮捕される。弁護人は「警察は『相当な根拠』がないことをわかっていて、わざと依頼人が車に乗るまで待っていた。これは明らかに違法な捜索だ」と、車内で発見された証拠の排除を要求。判事はその言い分を認め、証拠を排除する。他に有力な証拠がないため事件は棄却されてしまう。

マッコイとキンケイドは改めてケイティの身辺を調査し、ケイメンがケイティの信託財産を横領しており、ケイティもそれに気づいていたらしいということを知る。ケイメンは窃盗罪で逮捕され、そこで捜索は可能になるが、ケイティの死と直接結びつく証拠は見つからない。ケイティが自分で麻薬を注射していたことは仲間たちの話で明らか。ケイメンが金(=麻薬)を与えていたことを理由に責任を問えるか、検事たちの意見は分かれる。

マッコイはケイティへの麻薬供給ルートを明らかにするため、元恋人のヴァイクを改めて取り調べる。「お前が売った麻薬で過剰摂取を起こしたとわかれば、故殺罪になる」と脅されたヴァイクは、「ケイティに直接売ったのではなく、弟のマシューに売った」と言い出す。

マシューは当初「自分は何も知らない」と主張していたが、マッコイの追及に対して「ケイティと一緒に麻薬をやった。ケイティが痙攣を起こし、パニックになってジェリー(ケイメン)を呼んだ。ジェリーが来て、ケイティのことは自分に任せてここから出て行けと言った」と認める。

ケイティに麻薬を与えたのはマシューなので彼にも責任はあるが、彼は姉を助けようとしてケイメンを呼んだ。ケイメンはケイティを車に乗せたが、病院に連れて行かず、途中でゴミ捨て場に放り出して死なせたので、より責任があるということになる。しかしそれを証明する証拠(車)はすでに排除されている。マッコイは「ケイティがケイメンを脅迫していたという動機を示せば、陪審員を納得させられるのではないか」と言い、シフもそれを認めてケイメンは起訴される。

法廷でケイメンは、マシューの証言を否定して「事件の夜ケイティには会わなかった」と主張する。マッコイは「それでは車にあった嘔吐の跡はどう説明するのか」と質問するが、その証拠はすでに排除されているので、弁護人はその場で審理無効と処罰を申し立てる。マッコイは「その証拠はケイメンの罪状を証明するために使えないだけで、ケイメンの証言の信頼性を問うためには使えるはずだ」と反論。今回は判事はマッコイの言い分を認め、証言の信頼性 (credibility) に関しては許可、責任 (liability) に関しては却下すると判断する。

証言の信頼性を失った弁護側は取引に応じる。ケイメンは「ケイティはジャンキーで、遅かれ早かれ死ぬ。誰かが決断しなければならなかった」と主張。マッコイは「決断するのは貴方ではない」と言うが、ケイメンは「私はケンの親友で、彼が自分の子どもたちを任せられる唯一の存在だった。私はブランチャード一家の面倒を見て、財産を管理し、子どもたちの尻拭いをしてきた。当然その資格があるはずだ」と言い返す。だが結局は、マッコイの「第1級故殺罪と窃盗罪」で長期の実刑という条件をのまざるを得なかった。


感想

今回も証拠の排除をめぐって判断が二転三転。弁護士役が The Wire のクレイ・デイヴィスこと Isiah Whitlock Jr. だったので、“sh*——–t!” こそ言わないが、もう最初からワルにしか見えなかった。

車はいったん押収すれば調べ放題のはずなのだが、今回はたまたま人権意識の高い判事だったため証拠は排除されてしまう。その後「credibilityに関しては許可するがliabilityに関しては却下」という、何だか玉虫色のような判断がなされるのだが、法律家でもない陪審員にそれをどう理解しろというのか。いったん認められてしまったら証拠は証拠ではないのか?

……と、弁護側もそう考えたのかどうか、ともかく結局は取引に応じる。だがケイメン(どうもカタカナで書くと「イケメン」を連想して良くないなぁ)は最後まで被害者姉弟に対して傲慢なまでに支配的だった。

ところで、前から気になっていたのだけど hindering prosecution(字義通りに解釈すれば訴追手続きの妨害)って、日本でいう犯人隠避や証拠隠滅を含む罪らしいのだが、司法妨害 (obstruction of justice) とは別なのだろうか? それともNY州ではこう呼ぶというだけ?

判例(詳細は未確認):

Yoko (yoko221b) 2010-05-30