小説版CSI:マイアミ第7弾、著者は今回もドン・コルテス。環境コンサルタントが気球の上で目を撃ち抜かれて死亡し、ホレイショとカリーが捜査を担当する。当初は自殺かと思われたが、凶器を捜索中のカリーは不審な人物を見かけて自殺説に疑いを抱く。デルコとウルフは、クルーザー船が海賊に襲われ、それが大規模な銃撃戦に発展した事件を担当。ナタリアとトリップは、コラムニストが自宅で殺害された事件を担当。被害者は暴露本的な小説を執筆していたため、モデルにされた人々には皆それなりの動機があった。
ドン・コルテスの小説としては、これが5冊目になる。相変わらず小説版のホレイショは、ちゃんと鑑識チーフの仕事をしている。ただし人海戦術でエヴァグレーズ一帯を捜索するとかいう重労働には加わらないらしい。ホレイショとカリー、ナタリアとトリップというTVではあまり組まないチームワークが見られて良かった。
メインはやはり、ホレイショ担当の気球事件。最初は自殺だと思われたが、「何かおかしい」と引っかかりを感じたカリーが捜査を続けるうちに、思わぬ事件とのつながりが浮上する。そのコンサルタントは環境の調査をしていたのではなく、どうやら伝説の麻薬王「ロドリゴ」が遺したお宝を探していたらしい。奇抜な手法をいくつも使って警察を出し抜いたあげく、ある時ふっつりと消息を絶ったロドリゴ。長年ロドリゴを追っていた元捜査官(現在は引退)は、彼は莫大な財産や美術品を持って故郷であるキューバに亡命し、カストロの庇護の下で悠々自適の生活をしているのではないかというのだが……。
という、このお宝ストーリーがいかにもマイアミらしくて面白い。最初の方で、被害者が環境コンサルタントとして調査していた内容の話が出てきて、こっちは無関係なのかと思ったらちゃんと伏線になっていたことが最後でわかる。
デルコとウルフの担当する海賊事件は、事件が大規模な銃撃戦に発展したことから「実はこのクルーザー船が麻薬でも密輸していたのでは?」という疑問が生じるのだが、密輸していた物は実は……という所にトリックがあって面白かった。で、この船のシェフが「ヤマダ・オサム」さんという日本人で、まともな日本人名だ~♪と思っていたら、苗字と名前が逆になっているっぽい? Mr. OsamuじゃなくMr. Yamadaと呼んであげてください……。
ナタリアの事件は、真相解明自体は単純なものだが、それに至るまでの聞き込みが面白い。被害者が、小説執筆中のコラムニストだったので、モデルにされた人たちを一人ずつ訪ねて事情を聞く。これが、売名のためにプライベートビデオをわざと流出させているセレブとか、元公民権運動の活動家とか、カエル大好きな女性研究者とか。活動家の話では、アメリカの人種問題に関する歴史的な話があって興味深かった。
そうやって別々の事件を追いかけている捜査員たちが、自分たちの抱えている事件のことをお互いに話し合ったり、人手が足りないからとウルフがカリーの事件のヘルプに借り出されたりする所なども、TVでは見かけないので(役者さんの撮影スケジュールがあるから難しいのかな)、これも新鮮で良いなと思った。
そして! ホレイショがマリソルを思い出している場面がある~~! いや、シーズン4を見た時はマリソル話はつまらないと思っていたのだけど「亡き妻を思い出すホレイショ」というモチーフ自体は悪くないなと思った(マリソルごめん!)。彼女は、ホレイショの人生の暗い大地をほんの束の間かけ抜けて行った清流のような存在なのだそうだ。ほほ~。まぁ、ここで語られるマリソルは「若く、溌剌として生気にあふれた」女性で、末期がん患者とは思えないのだけど、そのへんはもういい。これはドラマ本編でも思ったのだけど、結局マリソルは最初から「想い出のひと」という属性をもって生み出されたキャラなんだろうなぁ。
— Yoko (yoko221b) v