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Dexter - Season 6, Episode 3

#63 Smokey and the Bandit


概要

若い女性の遺体が発見され、デクスターは自宅から現場へ向かうが、警部補に昇進したデボラは警察署で管理職の業務に就く。

被害者は売春婦で、殴られた傷と首を絞められた跡があった。デクスターは被害者の歯が欠けているのを見て、中学時代に憧れた連続殺人犯「歯の妖精」を思い出す。オレゴン州で売春婦ばかりを狙って15人殺害し、側切歯を抜いて遺棄した殺人犯だ。もし同一人物なら70歳を超えているはず――とデクスターは考え、遺棄現場に近い老人ホームを調べて、「歯の妖精」らしき老人、ウォルター・ケニーを探し出す。

デボラは人事に横槍を入れようとするラグェルタを押し切って、シカゴから転属するマイク・アンダーソンを殺人課に採用。

ヘビ殺人は薬物関連の可能性が低くなったため捜査は行き詰る。クインは情報を公開しようと提案し、ラグェルタもそれに賛成する。デボラは犯人逮捕後の裁判のことを考えて反対するが、結局ラグェルタに押し切られてしまう。

トラヴィスは監禁しているネイサンに「神に許しを請え、心から謝罪をしろ」と迫り、ネイサンは泣きながら謝罪をする。老人はしばらくネイサンの様子を観察していたが、やがて「準備ができた」と言う。

デクスターはケニーに接触し、薬局への送り迎えなどの雑用をこなしながら、ケニーが本当に「歯の妖精」であるという証拠を掴む。ケニーは子どもの頃、売春婦だった母親に虐待され、側切歯を折ったことがあるのだった。

デクスターがケニーを「次の獲物」に定めて計画を練っていると、タイミングよく本人から呼び出しがかかる。だが実はケニーの方もデクスターをこっそり調べて本名や警察関係者であることを掴んでいた。デクスターはわざと車をぶつけてケニーを捕らえ、彼の自宅でラップ巻きにする。だが、ケニーの望みが「歯の妖精」として人々の、特に息子の心に残ることだと知ったため、切り刻まずに枕で窒息させ、連続殺人犯ではなく「孤独に自然死した偏屈な老人」として葬り去る。

マスオカは金髪のセクシーな実習生、ライアンに「アイストラック・キラー」事件の証拠品を見せる。ライアンは証拠品の義手をこっそり持ち帰る。

デクスターはケニーの血を箱にしまおうとするが、そこで箱を落とし、スライドグラスを床にばらまいてしまう。

一方、マイアミの市街地では4頭の馬がマネキン人形を乗せて闊歩する。しかしその「マネキン」にはネイサンの切断された頭部や手足が取り付けられていた――。


感想

トラヴィスはいったい何をやろうとしているのか。犯行の全貌がまだ現れず、見ている側はジリジリしてくるのに「まだまだ」とおあずけされているような感じだ。デクスターは別の遺体から別の連続殺人犯を追いかけてるし。しかも少年時代に「憧れのヒーロー」だった人物。今ではすっかり老人になってしまい、歯を抜くのも遺体を遺棄するのも力がなくて思うようにいかない。エロ本の趣味も下品(笑)。

デクスターはかつてのヒーローを殺しただけでなく、彼が求めていた(歪んだ)栄光をばっさりと剥ぎ取ってしまう。残されたのは、歯の妖精でも何でもない、ごく普通にありふれた死を遂げた老人。デクスターも、年を取って人殺しができなくなった時のことを考えているのだろうか。デクスターの場合、女性が標的になることもあるけれど、大多数はそれなりに力のある成人男性だからなぁ。殺すのもたいへんだし、殺した後の遺体の解体とか、殺し部屋の準備と後始末とか、体力がなくなってくるとキツいんじゃないのかな。トリニティはよく続いたよね。

……と、本人が考えていたのかどうかは知らないが、箱を落としてスライドガラスがバラバラになってしまったのは、本人が何らかの「仕切り直し」を必要としている(あるいは「導き」を求めている)ことの象徴なのだろうか。1話ではあんなに絶好調で何の迷いもなさそうだったのに。このスライドガラスは、デクスターが自分に許している唯一の「戦利品」であり(だから収集しないと気がすまない)、日付やイニシャルなど被害者に結び付くものはいっさい記入しないことになっていた(DNAは仕方ないけど)。原作では、この1滴の血を見ただけで犯行のすべてをまざまざと思い描くことができるという設定だったはずだが、TVシリーズではそうではないのかな。

また今回は、このシリーズの原点ともいえる「アイストラック・キラー」の話題が突然復活。これもこの後の伏線になるのだろう。

メインのストーリーラインがちょっと停滞したタイミングのエピソード。秩序を求めているのはむしろ視聴者の方かもしれないが、秩序が乱れたところからドラマは始まるようなもの。淀みを抜けて、今シーズンも力強く泳ぎきってほしい。

Yoko (yoko221b) 2012-11-30