User Tools

Site Tools


dexter:s06:064_a_horse_of_a_different_color

Dexter - Season 6, Episode 4

#64 A Horse of a Different Color

  • 邦題:「光と闇」
  • 脚本:Lauren Gussis
  • 監督:John Dahl
  • 初回放映:2011-10-23

概要

デクスターはハリソンを連れて、ブラザー・サムによるニックの洗礼式に参加する。そこへ呼び出しがかかり、デクスターは4頭の馬が発見された現場へ向かう。馬が乗せていたのはマネキンと切断した人体をつなぎ合わせたもので、人体はどうやら1人の人間のもの。馬の額にはΑとΩを組み合わせたマークが描かれていた。

傷口を比較した結果、ヘビ殺人と同一犯であるらしいとわかる。また傷口からは酸化鉄が検出されたことから、年代物の鉄製の刀で殺害された可能性がある。

アンダーソン刑事は「ヨハネの黙示録に登場する四騎士ではないか」と思いつき、2つの事件に見られる3つの「タブロー」(劇的場面)を指摘する。四騎士は「ヨハネの黙示録」の6章、ヘビは13章に登場する。「秤に載せた腸」は直接の記載はないが、秤は「神の審判」の象徴としてよく用いられるモチーフ。

デクスターは切断された被害者の目の中から「1242」と書かれた紙片を発見。最初の被害者を改めて調べたところ、腸の中から「1237」と書かれた紙片が発見される。騎士の事件はヘビ事件の5日後に起きていることから、この2つは何かの日数を表しているという可能性が生じる。デボラは一連の事件の犯人をドゥームズデイ(最後の審判の日)キラー=DDK と名付ける。

デクスターは遺体の切断面を調べ、切り方が雑で荒っぽいことに対し、犯行現場の見せ方やマネキンとのつなぎ目が緻密で丁寧であることを不審に思う。つまり、遺体を切断した人物と、その後の仕上げをしたのは別人ではないか。

ラグェルタは騎士事件の記者会見をしようとするが、マシューズの横槍でデボラが担当することになる。ラグェルタは「あなたらしく、自然にやれば良い」とアドバイスし、会見に臨んだデボラは思わず放送禁止用語を口にしてしまう。だがこの会見が思わぬ好評を博し、マシューズは上機嫌。

マスオカの所へ「アイストラック・キラーの腕がオークションにかけられているが本物か」という問い合せが入る。驚いたマスオカがオークションサイトにアクセスすると、確かに腕が出品されており落札寸前。マスオカは急いで入札しようとするが、タッチの差で間に合わず。「証拠品を保管庫で眠らせるなんて」とライアンが証拠品から持ち出して、家賃を払うために売ったのだ。マスオカは利用されたことに怒り、ライアンをクビにする。

ハリソンが虫垂炎で手術を受けることになり、デクスターは急いで病院へ向かう。ブラザー・サムも手術のことを知って病院に駆けつけ、デボラを驚かせる。サムは自分の生い立ちを語り「刑務所で新入りの囚人を殺そうとした時、窓から差し込む光を浴びて目が覚めた」と話す。デクスターは「ハリソンを助けてくれればその代償に何でも差し出そう」と真剣に神に祈り、手術は成功する。

エンジェルとクインは宗教関係の聞き込みを行い、タラハシ大学のジェームズ・ゲラー教授のことを知る。ゲラーは黙示録の専門家だったが、古代の剣(「ヨハネの剣」と言われているもの)を盗んで大学をクビになり、3年前から行方不明とのこと。

トラヴィスはカフェのウェイトレス、エリンとデートし、そのまま一夜をともにする。翌朝、トラヴィスが目を覚ますとエリンは台所で縛られており、その横には老人の姿があった。

デクスターはデボラから「コーラルゲーブルスの植物園で、例のマークと血痕が見つかった」という連絡を受けて現場へ向かう。血の跡をたどって温室に入ると、そこには天使のような衣装を着せられて吊るされているエリンの姿があった。そこには罠がしかけられており、助けようとした警官が足を引っ掛けてしまう。トラップがはずれて凶器が落下し、エリンは首を刺されて即死。羽音に気づいて戸棚を開けると、そこからは大量のイナゴが飛び出してくる。見物人もパニックを起こして逃げ惑うが、デクスターはそこで、イナゴを避けようともせずに恍惚とした様子で立ちつくしているトラヴィスの姿に目を留める。


感想

今シーズンのメインストーリーがようやく本格稼働し始めた。聖書の「ヨハネの黙示録」になぞらえた犯行であることがわかり、容疑者は「ドゥームズデイ・キラー」と命名される。トラヴィスと一緒に行動している謎の老人は、どうやら黙示録の研究家であるタラハシ大学のジェームズ・ゲラー教授と判明。ヘビ殺人、四騎士に続く殺人が警察の目の前で起こり、デクスターとトラヴィスが遭遇。正確にはデクスターがトラヴィスを一方的に発見したわけだが、どうやら現場にいるトラヴィスの様子を見て、彼が殺人犯だと直感し、次の標的に定めたようだ。デクスターの獲物は本来「悪事を犯しながら、法の裁きを逃れてのうのうと生きている悪人」であるべきで、警察が追っている犯人を横取りしちゃいかんとおもうのだけど(トリニティでもジョーダンでもそれで危ない目に遭っているのに)、こんな猟奇事件の犯人ともなると自分の手で仕留めないわけにはいかないのかもしれない。

その一方でハリソンが手術を受けることになり、待合室で待ちながらブラザー・サムの身の上話を聞いたりする場面も。デクスターもこの先、光を見ることがあるのだろうか。……あまりそういう(つまり、闇を克服して善なる光へ向かうべきだという)方向に安易に流れてほしくないなぁと思いつつも、やはり避けられないのかもしれないとも思う。快楽殺人犯でありながら同時に良き父、良き兄であろうとする矛盾に対するジレンマが、たまに画面の向こうから感じられることがあるので。前回、スライドの秩序がバラバラになってしまったのはそういうことなのだろうか。この先デクスターがあっさり悔い改めて善人になってしまうのはつまらないけれど、デクスターはハリソンを助けてくださいと神に祈り、その代償を差し出そうとさえしている。じゃ、神様が殺しを止めろと言えば止めるつもりなのか?

さて「ヨハネの黙示録」について。これは新約聖書の最後に収録されている文書で、聖書にしてはあまり説教くさくなく(失礼)預言とも幻想ともつかない不思議な世界が描かれている。内容は何となく知ってはいたものの、ちゃんと読んだことはなかったので、泥縄だけど新約聖書翻訳委員会による『ヨハネの黙示録』を読んでみた。なるほど、「アルファにしてオメガ」というのもこの黙示録に出てくる文言なのね。

「四騎士」は黙示録の六章で、子羊(キリストのこと)が第一から第四の封印を解いた時に1人ずつ現れる(図1、デューラーによる木版画)。馬の色は白・赤・黒・蒼白(緑?)で、それぞれに征服者・戦争・飢餓・死を象徴し、天罰の執行者と解釈されるとのこと。特に「蒼白い馬」はよく使われる有名なモチーフだ。黒い馬の騎士は手に秤を持っているが、人間の腸は乗っていないと思う。

そしてヘビはアンダーソン刑事によれば13章に登場するというが、それが13章のどこを指しているのかよくわからない。13章は2匹の獣が登場し、「獣の数字が666である」という、あの有名なアレがある箇所なのだが、この「獣」は豹に似ていたり子羊のような角があったりして、あまりヘビのようには見えない。「ヘビ」はむしろ、12章から登場している「赤い巨大な竜」のことではないかと思う。「7つの頭と10本の角があり、頭に7つの王冠をかぶっている」ということなので頭の数は合っているし、ベアトゥス写本の竜(図2)はけっこうヘビっぽく見える。この竜はウィリアム・ブレイクの「レッドドラゴンと太陽をまとう女」の絵(図3)でも有名。トマス・ハリスは小説『レッド・ドラゴン』のモチーフとしてブレイクの絵を用いている。竜はサタンの化身とされるが、20章では「竜=太古のヘビ=サタン」が1000年間縛られる(図4、ルドンによるリトグラフ)場面があるので、やはりこれがヘビということで良いと思う。

図1 hermitage.rdy.jp_csi_img_apocalypse_4_riders_duerer.jpg

図2 hermitage.rdy.jp_csi_img_apocalypse_dragon_woman_beatus.jpg

図3 hermitage.rdy.jp_csi_img_apocalypse_red_dragon_blake.jpg

図4 hermitage.rdy.jp_csi_img_apocalypse_old_serpent_redon.jpg

Yoko (yoko221b) 2012-12-15

dexter/s06/064_a_horse_of_a_different_color.txt · Last modified: 2024-03-02 by 127.0.0.1