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#20 Hayden Tract


事件概要

セレステ・ケルマン他

カリフォルニア州の上院議員、セレステ・ケルマンがゲーム会社の前で演説中に銃撃され死亡する。死者は議員を含め7名。犯人は事件の直前、「娘をどこへやった!」と叫んでいた。逃走経路から宅配業者のジョン・フリーマンが犯人らしいとわかる。フリーマンは数年前に行方不明になった娘のアリエルをずっと探し続けているらしい。

だが調べを進めてみると、フリーマンは偽名で本名はラリー・シェパード。結婚歴も子どももなく、統合失調症を患っているとわかる。ラリーはケルマンが議員になる前に製作したゲーム「シャドウヒル」のストーリーに影響され、自分に娘がいるという妄想を持っていたのだった。

ラリーがアクセスしているゲームサイトがわかり、そこで囮捜査を行いラリーは逮捕される。弁護人は「心神喪失ではない無罪」すなわち、ラリーは誰も撃っていないと主張する。弁護についたのは悪名の高いハーン弁護士で、弁護料が出る間は取引をせず事件を長引かせ、依頼人の金がなくなるとさっさと取引に転じるという行為を繰り返していた。ルビローサは「心神喪失での無罪を主張すべき」と考えるが、デッカーは「それは弁護側が考えることだ」と退け、死刑求刑の方針を固める。

一方TJはセザール・バルガスの目撃情報を求め、単身メキシコに入国、セザールの愛人に接触する。

コニーは医療刑務所の実態にショックを受け、独断でラリーの姉に接触し「心神喪失を認めるなら無罪で取引し、病院に収容しても良い」と話を持ちかける。ラリーは「心神喪失による無罪」に主張を変え、デッカーはルビローサが勝手に動いたことを知って叱責する。

LAに戻ったTJは駐車場で2人組の男に襲われるが撃退。2人の狙いはTJを拉致することと思われた。TJは犯人がケイシー・ウィンターズの住所のメモを持っていたことを知り、ケイシーと子どもたちを実家へ避難させる。

判事はラリーの答弁変更を認めるが、デッカーは「病気のせいで犯罪を犯したとは思えない」と、ルビローサに否定材料を探させる。ルビローサはラリーが「アリエルの母親は流産しかけてアルコールの点滴を受けた」と話している映像を見て、恋人が実際に妊娠していたのではないかと思いつく。

ラリーは発症した当時は学生で、恋人は妊娠していたが、ラリーの病気を知って別れ、中絶していた。「アリエル」というのはラリーが子どものために考えていた名前で、捜索用ビラに使っていた写真は恋人の昔の写真だった。ラリーは中絶を知り恋人に「俺と娘を引き裂くものは殺してやる」という脅しの手紙を送っていた。それらの事実を突き付けられてラリーは恋人や議員を罵り暴れ出す。デッカーは「あの様子を見れば陪審は死刑判決を下すぞ」と弁護人に迫る。

デッカーは死刑を求刑しようとするが、そのためには被害者の証言が必要。だが生き残った被害者たちは「法廷で見世物にはなりたくない。私たちの傷ついた姿は被告人を喜ばせるだけ」と証言を拒む。結局弁護側は仮釈放なしの終身刑を受け入れ、デッカーは仮釈放の可能性を残さないため、証言の代わりに検視官に解剖所見を読み上げるよう求める。

事件後、モラレスは病欠のTJに電話をかけるが、TJは応答しなかった。


感想

テレ東の邦題、何とかして。ネトゲ依存と統合失調症は違うでしょう?

冒頭で議員が銃撃されていたので、アリゾナで下院議員が銃撃された事件が元ネタなのはすぐわかった。事件が起きたのが1月だったのは何となく覚えていたけので、このエピソード放送の前の年かと思ったら何と同じ年、放送の4ケ月くらい前の発生だった。ということは、事件の直後に脚本が執筆されたということで、放送当時は事件の記憶も新しく生々しい印象だったのではないかと思われる。実際の事件では、議員は重傷を負ったが命はとりとめ、6月に退院。

現実の事件が元ネタといっても、事件の最初の方だけで、その後の展開は別だ。議員が標的になったことで政治的な背景が疑われるが、結局は統合失調症による妄想が原因らしい。心の病気と刑事責任の問題というのも悩ましい話で、本家でも何度も取り沙汰され、そのたびにモヤモヤした気持ちを抱え込むことになってしまう。作り手さんの側にも葛藤があるのだろうか、それがデッカーとルビローサの対立に表れているような気がした。とはいっても、ルビローサがデッカーに話を通さず独断で動いたのはやはりイカンと思うのだな。ルビローサが「NYでも同じことをした」というのが気になるが、そのエピソードを見るまでには、まだ何年もかかりそうだ(本家はまだシーズン8あたりなので……)。

しかし真剣に悩むヒマもなく、なぜかTJの事件が割り込んできて話が変な方向に。TJは前回、ウィンターズ殺害の黒幕だったバルガスの情報を集めていたが、どうやらメキシコでの活動場所を探し出したらしく、単身現地入り。米国からメキシコへ、あんなに簡単に銃を持って入国できるものなのか(てっきりタンクの中に銃を隠していると思った)。

しかし結局手を出さないまま帰国して、手下に襲われて拉致されそうになったが撃退。ケイシーを巻き込んだことに気づいて実家へ避難させ、仕事を休んで再びメキシコへ行ったのか? イーストパサデナでは、ウィンターズの遺族のことを考えて突入もためらうほどだったのに、今回の無謀な行動は何なのだろう。マリソルが来たからって何もマイアミ化しなくても。

最後のシーンでは、TJの携帯電話だけが空しく鳴り続ける。いったいそこはどこなのか? TJはメキシコで決着をつけることができたのか?

TJがメキシコへ行っていたと仮定して、ありがちな展開としては

あたりか。シーズン2が作られていれば明らかになったのだろうか。

このエピソードの放送は5月16日で、その3日前にNBCはLOLAの打ち切りを発表した。プロデューサーのルネ・バルサー氏はファンに向けたビデオメッセージで「今シーズンはクリフハンガーで終わるから、番組を更新するよう局に働きかけてほしい」と呼びかけたという。「クリフハンガー」というのは、この「ヘイデントラクト」のラストを指しているようだが、実際の放送順では「クリフハンガーで終わる」ことにはならず、この後に「ビッグロックメサ」と「エンジェルスノール」が続いている。もっと言うと、この時点で未放送だったウィンターズ時代のエピソードもまだ5話ほど残っていたはずだが。

これは想像だが、プロデューサーとしては、「ビッグロックメサ」や「エンジェルスノール」に人気俳優(主役クラスの)をゲスト出演させて視聴率を押し上げ、次シーズンへの更新を勝ち取り、最後にこのエピで次につなげるつもりだったが、局側は更新するかどうか微妙だったので順序を入れ替え、クリフハンガーを目立たなくした――ということだったのではないだろうか。打ち切りの判断がギリギリのタイミングだったことは、Deadlineの次の記事からも想像される。

上掲記事によると、2011年の番組ラインナップに関するプレス用の資料に、LOLAシーズン2の写真が入っていたとのこと。おそらく印刷の時点ではまだ更新か打ち切りか決まっていなかったのだろう。リング製本なので打ち切りになったら破り取るはずが、一部残ってしまったものと思われる。

タイトルの「ヘイデントラクト」はカルバーシティの中の地区名。

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Yoko (yoko221b) 2014-01-17