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#21 Big Rock Mesa


事件概要

デイヴィッド・ホロウェイ、フレディ・ローガ、ジェニー

ビッグロックメサで山火事が発生し、数日後に鎮火するが、焼け跡で男女3名の遺体が発見される。死亡していたのはホームレスのフレディ・ローガと恋人のジェニー、それにホームレス支援のボランティアをしていた法学生デイヴィッド・ホロウェイで、いずれも他殺。ジェニーは頭を殴られ、フレディは刃物で刺され、デイヴィッドは銃で頭を撃たれていた。

火災の原因は放火で、2回行われていた。目撃情報などから最初の放火を行ったブレイク・ハンフリーが逮捕されるが、ハンフリーは2度目の放火には関わっていなかったとわかる。

学生とホームレスの足取りを追い、ビッグロックメサの住宅地に被害者と同じ痕跡を発見。その地域の住民たちはホームレスを嫌い、彼らを追い出そうとしていた。事件当時、住民たちは避難命令に従って家を離れていたというが、調べてみるとパトリック・デントンら数名が残って独自に消火活動をしていたとわかる。

デントンは警察に対し「避難していた」と嘘をついたので、それを根拠に捜索令状を取る。デントンと隣人が3人を殺害し、隠蔽のための放火したらしいとわかり、デントンと隣人のジョー・ライト、ダイアナ・バートが逮捕される。だがデントンは現場の床を漂泊して証拠を消し、ジョーも凶器を処分しており、検察側の物証は弱い。デッカーは弁護側が「侵入者を撃退しようとして撃った」と正当防衛を主張することを見越して取引しようとし、「被告人は何ら脅威でない被害者を冷酷に殺した殺人者よ」と言うルビローサと対立する。

デントンは取引を受け入れ、「車庫で物音がしたので泥棒だと思い、1人を撃った。後の2人はジョーとダイアナが殺した」と述べ、その後「正当防衛を信じてもらえない」と思って放火したことを認める。

ジョーとダイアナは取引を断り裁判に臨む。その時、弁護人の言葉がきっかけでビッグロックメサの住民たちが立ち退き裁判を起こされていたことがわかる。訴えているのは「正しい課税の会」というグループで、火災多発地域の居住を禁止すれば、防災のための行政コストを大幅に削減できるというのが理由だった。事件とは無関係かと思われたが、グループの代表はペパーダイン大学の教授。被害者のデイヴィッドは彼女の学生で、そもそも訴訟を提案したのはデイヴィッドだった。

デイヴィッドは飲酒運転で逮捕された時に社会奉仕を命じられ、ホームレスのためのスープキッチンでボランティアを始めた。そこでホームレスの人々と親しくなり、彼らがそれぞれに深い事情を抱えていることを知り、期間が終わってもボランティアを続けていた。そしてビッグロックメサの住民たちがホームレスを追い出そうと嫌がらせを続けていることを知り、訴訟を思いついたのだ。だが、真の狙いを知られないよう、デイヴィッドは表立って動いていなかったという。

改めて状況を調べてみると、デントンは自宅に侵入した(迷い込んだ)デイヴィッドらと鉢合わせし、彼が訴訟に関わっていることを知って怒りにまかせて彼を射殺し、その動機である訴訟の件を隠していたことがわかる。デッカーは取引を中止してデントンを再起訴。

弁護側はあくまで「被告人はホームレスによって生活を脅かされ、家と家族を守ろうとした」と主張する。デッカーは、戦場で心を病んだ退役軍人や、DV被害者である女性たちなど、多くの人々が様々な理由で家を失ってホームレスになるのであり、それは誰の身にも起こり得ることなのだと説く。さらに、陪審に対して「路上でたむろし、ハイになり、外で用を足して小銭をせびるホームレスたち」の姿を思い起こさせて「怒りを感じたでしょう」と語りかけ、「怒りによる殺人は正当防衛ではない」と主張する。

だが評決は殺人に関しては3名とも無罪、放火罪は評決不能という結果に終わる。


感想

このエピソードは当初「ラニヨンキャニオン」と「ヘイデントラクト」より前に放送する予定だったとのことで、TJがメキシコでどうしたかは当然、話題にも上らない。

事件は殺人と放火で、検察側の手痛い敗北となった。

最初の方で住民としてリー・ターゲセンが登場していたので「この人が犯人かしら」と思っていら案の定。何てわかりやすい人選。そして弁護人はブラッドリー・ウィットフォードだ。「ホワイトハウス」の頃と比べるとさすがに顔が老けているし、何より声が運昇さんではなかったので別人に見えた。

ホームレス問題というのも大都市が抱える悩ましい問題で、おそらく多くの人は「いろいろ事情はあるだろうしホームレスになったことは気の毒だけど、家の近所には来ないでほしい」「大人しくシェルターにでも入っていてほしい」と考えているのではないかと思う(私も含めて)。なのでデッカーの弁論は、悪いけどあまり心に響かなかった。

デッカーはホームレスのネガティブな側面をこれでもかとばかりに具体的に描写し、陪審員に怒りを自覚させたところで「怒りにまかせて人を殺した場合、それは正当防衛にはなりません」とひっくり返し、弁護側の主張の根拠を崩すつもりだったのだと思う。被告人に対する尋問でも、現場の様子を再構成して「その時に感じていたのは恐怖ではなく怒りでしょう」と強調していた。

だが恐怖と怒りは相反する感情だろうか。見知らぬ侵入者に対する恐怖が、自分の生活を脅かす訴訟の黒幕であることを知って怒りに変わる。その過程にはおそらく何段階ものグレーゾーンがあったはずで、恐怖と怒りを同時に感じていたとしてもおかしくないと思う。デッカーの弁論は弁護側の主張を崩すほどの力はなく、自分たちの安全を脅かすホームレスへの怒りと、「自分が侵入者を撃退しても逮捕されるかもしれない」という恐怖を陪審員に感じさせたのではないか。

私が被告人の証言に矛盾を感じ有罪だと思ったのは、デントンが家の中に向けて銃を撃ちデイヴィッドを殺したことよりも、殺人をごまかすために放火をしたことだ。火災多発地域に住みながら保険をかけず、さらに放火までするなんて、それが家を守りたい人間のやることだろうか。雨が降らなければ、自分たちが焼け出されてホームレスになる可能性もあった。隠蔽工作までしようという時には、そこそこ冷静な計算がはたらいていたはずで、結果まで考えていなかったというのも不自然な気がする。実際のところ、デントンはその可能性をどう考えていたのだろう。訴訟を起こされ、勝っても弁護料で家を失うという状況だから、最悪家が焼けてもいいと文字通りヤケになっていたのか。

このあたりは、放火罪に対する考え方の違いもあるかもしれない。放火罪、何で評決不能になってしまったのだろう。

もうひとつ、どうしても思い出さずにいられないのが、92年にルイジアナ州で日本人留学生が射殺された事件だ。この事件ではハロウィンパーティで家を間違えた少年が侵入者として射殺され、撃った男性は無罪になった。州も状況も違うとはいえ、あっちが無罪でこっちが有罪だと、少々モヤモヤしたかもしれないなーとは思う。

なのでいろいろ総合して、放火罪はともかく殺人で無罪という結果にそれほど違和感はない。この後、おそらくデイヴィッドの両親はデントンに対して訴訟を起こすだろうし、防災コストをめぐる訴訟もあるから、無罪になってめでたしめでたしというわけにはいかないだろう。

#clear タイトルの「ビッグロックメサ」はGoogleマップで見つからなかったので、代わりにペパーダイン大学の場所を貼っておく。台詞に「サンタモニカ山地」とあったので、この周辺なのは間違いないだろう。ズマキャニオンも確かこの近くだった。

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Yoko (yoko221b) 2014-01-18