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Wire in the Blood - Series 4, Episode 3

#14 Hole in the Heart


You carry on living. It's all you can do.

事件概要

放火殺人事件が発生。現場には黒焦げになった2名の遺体があった。不動産業者のアーメド・カーンはベッドに手錠でつながれて寝かされ、もうひとりのダーブリッジはカーンの会計士で椅子に座ったまま焼け死んでいた。

カーンが離婚調停中だったため、財産をめぐる争いかと思われたが、トニー・ヒルは、この事件は「サディズムではなく生贄」であり、割れたガラスを片付けて火を放ったのはダーブリッジ本人であると判断する。ダーブリッジはその後、椅子に座ったまま自らも焼け死んだのだ。事実、手錠を購入したのがダーブリッジであることが、販売店の防犯ビデオで確認された。

その後、主教のジェレミー・サッカーが教会で殺害される。下着姿で柱に縛り付けられ、身体には7箇所の刺し傷。首にはコンパスが突き刺さっていた。トニーは7つの傷という数に意味があるのではないかと示唆する。そして、血痕をたどって鐘楼に入ると、そこでは若い女性が首を吊って死亡していた。女性の名はメリー・ナイト、麻薬依存症の売春婦だった。

トニーは主教の首に突き刺されたコンパスが、フリーメーソンのシンボルであることに気づく。だが、フリーメーソン・ロッジのマスターを務める判事のスティーヴン・ハインズは「フリーメーソンは秘密結社などではなく社交クラブのようなものだ」と一笑に付す。

だがその後、ハインズ判事が自宅で殺害される。判事は首を切断され、「サロメ」の洗礼者ヨハネのように盆に乗せられていた。そして、浴室ではダニー・エリスという若者が死亡していた。

トニーは、カーン、主教、判事の遺体の状況が、それぞれ聖ローレンス、聖セバスチャン、洗礼者ヨハネの殉教場面を模していることに気づき、一連の殺人劇は、排他的な自殺主義カルトによるものではないかと思い始める。カーンは街の再開発を計画しており、廃墟となった教会を買い取ってナイトクラブにしようとしていた。その取引を許可したのがサッカー主教。そして判事は男娼を自宅に入れた。トニーは、メリーの葬儀を執り行った牧師のタリスがダーブリッジの自宅にも出入りしていたことを思い出す。警察がタリスの自宅に急行するが、その時タリスはすでに、石を抱えて桟橋から河に飛び込んで自殺していた。タリスの自宅からは、それまでの3人の加害者たちの指紋が検出される。タリスが3人に殺害と自殺を命じ、その後自分も自殺したものと思われた。

アレックスは、リーダーのタリスが死んでカルトは終わったと思うが、トニーは「タリスはリーダーではない」と言う。これまでのサインから、メンバーは7人いるはずであり、リーダーは最後まで死なず、死ぬ時は全員を道連れにすると確信しているためだった。今まで判明している信者はタリスを入れて4名。あと2名の信者と教祖が1人いるはずだ。トニーは教祖の人物像を「教養があり権威のある白人男性。教職か管理職に就き、自殺防止ヘルプラインを手伝い、そこで信者を得ている可能性がある」とプロファイリングする。

メリーがいた刑務所の同房の受刑者から、彼女が「マーティン・マン」と名乗る男性の訪問を受けていたことがわかる。マンは他にも、ジューン・プリンスという受刑者を勧誘していたらしい。刑務所の面会者は指紋と写真を記録されているはずだったが、写真は薬品で黒く塗りつぶされ、指紋はタリスと一致。だが目撃証言はタリスの人相と一致しない。

ハインズ判事の自宅では、以前にも男娼が麻薬の過剰摂取で死亡した事件があった。判事はその時、鍵を盗まれて侵入されたと主張していた。だが当日の通話記録を調べると、死亡時刻の前後に自宅から電話が架けられていることがわかる。その番号にダイアルしてみると、何とイーデン次長の私用電話につながった。ちょうどその時、次長に来客があり、トニーは「開けないで! 狙われています」と警告するが次長は扉を開け、外に立っていたジューン・プリンスの手製爆弾が炸裂する。イーデンは咄嗟に扉を閉め、命は助かった。

判事はその夜、若者を死なせてしまい、パニックを起こしてイーデンに電話した。その時イーデンは判事の言い分を信じたが、その後に判事の素行を知ったのだった。

トニーは大学で宗教美術史の講義を聴講し、その時にサットン教授こそがカルトの教祖であることに気づく。サットンはトニーのプロファイリングに合致し、自殺防止グループで相談者に個人的に接触してオルグしたこともあった。だが証拠は何もない。トニーはサットンに面談し、彼の口にした一言から、最後の信者がカート・メリックであることを見抜く。カートはトニーが自殺を思いとどまらせた学生で、いったんはトニーのカウンセリングを受けたものの、その後希望を取り戻し、トニーのもとを離れて救世軍を手伝うようになっていた。トニーのカウンセリングを止めたのは、サットンの影響を受けたためだった。

今までの信者は、自分の得意なことや専門技術を生かして犯罪を行ってきた。カートは生化学者で専門はウィルス。ウィルスを使ったバイオテロを起すおそれがあった。サットンは勾留され緊急配備がしかれる。トニーは、以前にカートが飛び降りようとしたビルの屋上へ行き、そこで鳩小屋とカートを発見する。カートは腺ペスト菌を媒介するように鳩のエサに細工したのだった。トニーはカートを説得して鳩を放すことを思いとどまらせるが、カートはその屋上から身を投げる。サットンも留置場で聖書を喉に詰めて自殺する。


感想

冒頭の宗教儀式などの場面が、第2シリーズの「ウィッチ・コード」を思い出させる。でも「ウィッチ・コード」は結局ひとりの妄想だったわけなので、実体のあるカルト集団って、そういえば今回が初めてだろうか。トニーが “Asahara cult in Tokyo” とさらっと口にした時は少々びびった。

前半のフリーメーソンを示す要素がいろいろ示されていたのが、例によって後半でくるっと引っくり返され、そのために少々説明不足の印象が残った。一連の被害者を選択した理由は、やはり彼らの堕落や罪(7つの大罪?)が原因だったのだろうか。主教の首にコンパスを刺した意味は? タリスは誰も殺していないのか? 何だかいろんな意味で前半と後半の事件に統一感がないような……「こういう犯罪だったのか」と理解させる力が少々弱いかなと思う。

犯人が前半で既に登場していたこと、それによってカートが最後の信者であるというつながりが説明されていた点は良かったと思う。でもその反面、サットンにそれほどのカリスマ性を感じなかったという不完全燃焼感もあったりして……なんて、好き勝手なこと言ってるなぁ。

とはいえ、このエピソードは事件よりもトニーの「心に開いた穴」を描く物だったのかなぁという印象もあり。キャロルが去ったことは、思いのほかトニーの心に大きな風穴を開けていたのだろうか。そして今回の、カートの最期……。この後トニーはどうなっていくのだろうという不安感を感じる。アレックスとも良い信頼関係を築いていってほしいなぁ。キャロルになかった要素としては、ベンの存在が良い感じに作用してくれそうな気がするのだが、どうだろう。

そして後半ではイーデン次長が! この次長はシリーズ3からの登場で、初代のブランドンと比べてあまりシンパシーを抱けないキャラだったので、次長が黒幕でもまぁいいかとか思ってしまった(すいません)。

ところで、場面転換の際にはさまれる空撮映像を見て思ったのだけど、ブラッドフィールドってけっこう大都会なのね。

Yoko (yoko221b) 2008-06-27