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csi_ny:s01:003_american_dreamers

CSI: NY - Season 1

#3 American Dreamers

  • 邦題:「アメリカン・ドリーマーズ」
  • 脚本:Eli Talbert
  • 監督:Rob Bailey
  • 初回放映:2004-10-06

- His name. It's the only thing we don't know.&br;- Now we never will.

事件概要

バスに乗っていた白骨

観光バスで白骨死体が発見された。服を着せ帽子をかぶせた状態で、座席に座らされていたのだ。最初は悪戯かと思われたが、店で売っている処理済の骸骨とは違う特徴があった。骨の並べ方はでたらめで、解剖学的知識を感じさせない。使用した接着剤からは、部分的な指紋が採取できた。骨の主は白人男性で、年齢はおそらく十代。頭には殴られたと思しき傷跡。骨に堆積していた黒い汚れは、ディーゼルエンジンの排気ガスによるものだった。

マックは、指紋からバスターミナルで働く男を見つけ出すが、男はただ悪戯をしかけただけだと主張。マックは付近で排気孔を見つけ、白骨のあった場所にたどり着く。そこにはイニシャル入りのバックパック、スケッチブック、ポケットナイフ、「Bright Lights, Big City」という84年に発行された小説があった。ニューヨークで遊び暮らしていた男が、街に殺される前に去って行く話だという。衣服の中にはヨレヨレの紙片があった。ダニーは現場にあった鉄パイプから指紋を採取。エイデンは頭蓋骨から顔面を復元。パイプの指紋も骨のDNAも、データベースには入っていなかった。

モーランドという夫婦が現れ、バックパックとナイフは息子アーロンの持ち物だというが、それ以外の持ち物やスケッチブックの絵には見覚えがなさそうだった。アーロンはミュージシャンで、白骨から復元した顔とも違っていたため、別人と思われた。

マックとステラは、被害者が遺したスケッチの風景から、彼がホームレスの少年たちを収容するシェルターにいたと判断。だがシェルターの管理者は彼を見分けることができなかった。被害者の衣服からブランドと製造年がわかったが、市場に出ていないものだった。おそらくクリーニング店の運搬をしていたものと思われ、身元には結びつかなかった。マックは、被害者の持っていた紙片からようやく文字を読み取ることに成功。それは質屋の質札だった。それを頼りに質屋へ行くと、ほんの数時間の差で受け出されたという。マックは、警察が被害者を探していることを犯人が知ったと判断。質屋の監視カメラに顔は映っていなかったが、ダニーが映像をさらに精査すると、その客が出て行く前にギターに触っていたことがわかる。

ギターに付着したDNAから導かれた人物は、バックパックとナイフの主、アーロン・モーランドだった。失踪時のアーロンの写真から現在の顔を予測してみると、それはシェルターで働いていたジョエルだった。彼は死んだ少年に持ち物を売っており、腕時計の質札も渡したが、金が少ないことに怒って彼を殴り殺したのだという。相手の名前は知らなかった。10数年ぶりに見つけた息子が殺人事件の容疑者として連行される様子を、両親は黙って見守っていた。白骨となって発見された少年の身元は、結局わからないままだった――。


感想

バスで楽しそうに観光するカップル。最後尾の席の乗客に「写真撮ってくれない?」と頼んだら、その相手はなんと骸骨!

……という、都市伝説にありそうなちょっとユーモラスな場面から始まるのだが、調べてみると殺人。その白骨があったと思わしき場所で遺品がいくつか発見されるあたりから、大都会に出て来たが夢破れて一人孤独に死んでいく若者、という悲しい話になっていく。こういうしんみりしたトーンがこのシリーズの基本にあるのかな。

その物悲しさを受け止めるマックの存在感と、ダニーとエイデンという二人の部下の活躍がうまく調和して、今回は密度の高い話になったように思う。白骨が出てきたので、もしかして骨相の専門家テリーが? と期待したのだが、ここでは復元の専門家はエイデンのようだ。ダニーは店の監視ビデオを精査して、通常は画面に映らない場面の映像を復元することに成功。こういう各人の専門性が発揮されるところは良いなぁ。

【追記 2006-02-07】

身元不明の若者の遺品にあったBright Lights, Big Cityの翻訳『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』を読んだ。ジェイ・マキナニーのデビュー作で、80年代アメリカの青春文学とかニューリアリズム派とか、そのへんに分類される、らしい。

最後にマックが引用した一節は、第8章の末尾にあった。「だが、きみは幻滅に充ちた未来への予感と共に一人残される。きみは忘れるだろう。読みとばした本は、時がたてばその印象も色あせていき、ついにはそのタイトルしか憶(おも)い出せなくなる。きみは過去のすべてを忘れていくのだ。(p.183)」

この小説は二人称で書かれている。その視点の位置が気になった。一人称ほど主張がなく、三人称ほど離れていない。形としては傍らで語りかけているようだが、主人公の内面に入り込んだ描写もある。自己と他者の境界があいまいになるような、微妙な距離感だ。そういえば、主人公はずっと「きみ」と呼ばれていて、名前では呼ばれなかったような気がする。そして、このエピソードの若者にも名前がない。あの若者は、そしてマックは何を思いながらこの小説を読んだのだろう。

マック・テイラーは彼が生き、死んだことを知っている。どこで何を見たかを知っている。着ていた服やバイト先も、どこでどうして死んだかも知っている。だが肝心の彼の名前は、最後までわからなかった。本を読むことでマックは少しだけ、失われた若者の存在を取り戻し、同時に彼自身も何かを取り戻していく。若者の人となりに少しでも近づこうとするマックの姿は、たった一人で死者を弔っているかのようだ。その後のステラとの会話は、このシリーズがマック・テイラーによる、そしてマック・テイラー自身の回復の物語であることを表しているように思えた。

CSI:NY とはこういう物語なのだ、というメッセージが画面と台詞の端々から伝わってくるエピソードであったと思う。後になってからしみじみと思い返すことの多い、前半12話の中では最も心に残るエピソードだ。


単語帳

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Yoko (yoko221b) 2005-12-04

csi_ny/s01/003_american_dreamers.txt · Last modified: 2024-02-26 by 127.0.0.1