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csi:s05:103_who_shot_sherlock

CSI - Season 5, Episode 11

#103 Who Shot Sherlock?

  • 邦題:「ホームズ最後の夜」
  • 脚本:David Rambo, Richard Catalani
  • 監督:Kenneth Fink
  • 初回放映:2005-01-06

You collected the evidence. You thought there was something missing, you went back and found it. Hey, that's the job.

事件概要

デニス・キングスリー殺害事件

グレイヴヤードシフト/ブラス警部担当。配達員のデニス・キングスリーが自宅の地下室で殺害された。彼はシャーロック・ホームズのファンで、地下室にはホームズの住居であるロンドンのベイカー街221Bそっくりの部屋を再現していた。キングスリーは、暖炉の前で頭を撃たれていた。争った様子がない所は自殺を思わせるが、凶器がその場に見当たらない。

グリッソムはこれをグレッグの現場捜査官採用への「最終テスト」として現場検証を任せる。

やがて、19世紀の服装に身を包んだ3人組が現れる。彼らはモリアーティ、Dr.ワトスン、アイリーン・アドラーの扮装をしており、ヴィクトリア朝時代の犯罪の研究をする仲間だという。会合は毎週木曜日に行われていたが、前回キングスリーは「この会の集まりは来週で終わりにする」と言っていた。

グレッグは現場でタバコと白い物の破片を発見。裏の戸口にはこじ開けた跡があった。テーブルの上には1902年に出版された『バスカヴィル家の犬』の初版本。被害者の血が表紙に飛び散っていたが、方向から血が飛ばないはずの箇所にも血痕があった。

被害者は長期間にわたりコカインを常用していたが、注射器の中身はモルヒネの7%溶液。非合法に売買されるような物ではなく、病院で処方されるグレードのものだった。摂取した分量から判断して、注射して数秒後には動けなくなっていたはず。被害者の手に発射残渣はあったが、注射器を元に戻したり拳銃を用意したりする時間はなかったはず。

スリッパに入っていたのは、ホームズの愛用品と同じシャグ煙草だったが、部屋にあった煙草の灰はペリーク煙草のもの。その煙草を吸っているのはワトスン役のネルソン・オークスだった。さらに、オークスの靴には被害者の血が付着していた。ホームズ役を奪うために殺したかと疑われるが、そもそもキングスリーはホームズ役を降りるつもりであり、クラブを辞めて家族の元へ帰るよう説得したのはオークスだった。また、靴の血は赤血球と血清が分離していた。つまり、事件直後に付着した物ではなく、かなり時間が経ってから付けられた物だ。

『バスカヴィル家の犬』の血痕は、モリアーティ役ジョシュ・フロストの物。キングスリーは自分のコレクションをオークションにかけており、フロストも入札したが値が上って買えなくなってしまった。そのことで2人は争い、フロストが紙で指を切ってしまったのだ。だが彼が殺したのであれば、本を置いていくはずがない。

現場で発見した白い物は貝の真珠層で、アンティーク拳銃の握りに使われる物だった。レンガの粉が付着していたため、グレッグは犯人と被害者が銃を持って争ったと推理し、その痕跡を探すために現場へ戻る。グレッグは犯人の上皮細胞か毛髪が残っていることを期待して捜索するが、代わりに見つけた物は、暖炉の中にゴムのチューブで吊るされた拳銃だった。

キングスリーはあらかじめ自分の血液をオークスの靴に付け、彼の煙草の灰を撒いておいた。そしてゴムの先に拳銃を結び、もう片方を暖炉の中に固定し、ゴムを思い切り引っ張って自殺。撃った後、銃は手から離れ、ゴムに引っ張られて暖炉の中へ――グレッグはそう判断して自殺と結論付け、グリッソムに報告書を提出する。

グリッソムは報告書を読み、ホームズが愛用していたのはコカインなのに被害者がモルヒネを摂取していたこと、拳銃には被害者の指紋があったのに、ゴムチューブに被害者の指紋も上皮組織もないことを不審に思う。チューブに入っていた煙草はアイリーン役のケイ・マーケットが吸っていた物だった。ケイの母親は末期ガンの治療を受けており、チューブもモルヒネも手に入れることができた。ケイは仕事と母親の看病で辛い毎日を送っていたが、週に一度、ホームズ研究の集まりに出かけることだけが楽しみだった。その楽しみを奪ったキングスリーと、彼に妻子のもとへ戻るよう薦めたオークスを許せず犯行に及んだのだった。

グレッグは間違った結論を出してしまったが、「証拠を収集し、何が足りないかを判断し、現場に戻る」という捜査のプロセスを評価され、めでたく合格となった。

コリー・デマヨ事件

スイングシフト/キャバリエ刑事担当。ジープが道をそれて木に激突し、運転席でコリー・デマヨという若者が死亡していた。ブレーキをかけた形跡はなく、イグニッションにキーが入っていたが、エンジンは止まっていた。車内にはマリファナ煙草。財布はあったが現金もカードも入っていなかった。被害者の死因はなかなか特定できなかった。

車は扉の部分が壊れていたが、ブレーキもバッテリーも正常で、エンジンが動いていなかった理由がわからない。エクリーは事件性がないことを理由に捜査を終了するよう指示するが、ニックとウォリックはまだ納得がいかない。キャサリンは引き続き捜査するよう言う。

再び車を詳細に調べると、ワイヤーが焼けてヒューズが飛んだ形跡が見つかる。車体の下にも焼けた跡があり、電気が車を通過したことを示していた。事件当日は晴れていたので、落雷ではない。再び現場へ戻ると、電線には補修した形跡があった。事件当時は断線しており、それが車に触れた可能性があった。通常ならゴムタイヤで絶縁されるはずだが、たまたま道路に落ちていた金属の標識を踏んだため、それがアース線の役割を果たして通電し、コリーは車ごと感電して死亡したと思われた。

ニックとウォリックはゼラチンで人形を製作して感電の実験。最初の実験では人形は感電しなかったが、服を着せ、時計を着けて繰り返すと、時計の金属部分から通電し、状況が再現された。


感想

タイトルの “Who Shot Sherlock?” を見たときから、ホームズがどう絡んでくるのだろうと気になっていた。しかし最初からメインにどーん!と絡んでくるとは!何と、コスプレ殺人ですか!しかもベイカー街221Bをそっくり「再現」したような部屋が地下にあるなんて、感激。

アンティークな家具をそろえたり、窓の外に風景の写真(動いてるし)を設置したりする凝りよう。こんな部屋を作れるなら、Webcamを設置して公開してくれればいいのに!そうすれば犯人も一目瞭然なのに(事件になりません)。

小道具にも注目。

hermitage.rdy.jp_csi_img_caps_csi_103.jpg

暖炉、ヴァイオリン、化学実験器具、ディアストーカー、パイプあたりは必須項目かな。ペルシャスリッパのつま先に煙草を入れるというのは『マスグレーブ家の儀典書』に出てきたけど、あれを読んだ時「スリッパの中に煙草を入れるってどういう状況なんだろう?」と思った記憶がある。本当にそのまんま入れてたのか。あのスリッパは小物入れがわり?

シャグ煙草は確かにホームズ愛用の品らしい。『唇のねじれた男』という短編にも、一晩中煙草を吸いながら考えにふけるという不健康な姿が描写されている。ホームズは状況や気分に合わせて何種類ものパイプを使い分けていたが、いずれも柄はまっすぐで、右の写真にあるような海泡石の曲がったパイプではなかったはず。曲がったパイプは出版当時まだ作られていなかったが、舞台劇で使いやすいことと視覚効果が理由で小道具として使われるようになったとどこかで読んだ。ということは、このエピソードに登場するコスプレ集団も、時代考証より視覚効果を重んじる人たちだったのだろうか。考えてみれば、観客がいないとはいえ、舞台で演技しているような物だもの。

ホームズ的な小道具が他にも何かないかと思って、何度も一時停止したり戻したりして、目皿状態で探してしまった。壁にあるはずの「V.R.」のイニシャルとか、ナイフで留められた手紙がなかったのは残念だが、コメンタリーには、たぶん監督の Ken Fink さんだと思うが「本当はこの部屋の隅から隅まで映したかったんだけど」みたいなコメントがあったので、映っていない部分もあったんだろうな~。今回は事件よりも、こういうディテールへのこだわりに注目してしまう。音楽もクラシカルだし、フラッシュバックの映像もいつもとは違って、古い映画のような映像効果を使っている。

肝心の事件はといえば、実のところ最初に見たときは、トリックにヒネリがないなぁと、いささか物足りなく思った。というのも、これはシャーロック・ホームズのとある短編に登場するトリックなのだ。拳銃で頭を撃ち、争った様子はないが凶器がそばに見当たらない――というところで「これってアレじゃない?」と思ったら、やはりそうだった。自殺と他殺の違いはあるものの、基本的にはそのまま。オマージュということで、敢えてヒネらなかったということだろうか。他にも、容疑者3人を一巡して最後が犯人、というのが単純に思えたし、動機もいまいち説得力に欠けるし、そもそもモルヒネのせいで自殺は無理という判断が前半で出ていたし(注射器を片付ける余裕はなかったのでは?)※、こんな有名なトリックを主任が思い出さないわけないのに何で(グレッグが気づくまで待っていたのかもしれないが)、とかいくつか不満な点があった。

※ 前半の会話では、モルヒネを打ってから身体が動かなくなるまで “in a matter of seconds” と言われていた。これが2~3秒でなく10~20秒程度なら、注射器を置いて拳銃を撃つ余裕はあったのかも。ただしホームズがコカイン以外にモルヒネも使用していたことは『四人の署名』の冒頭で示唆されていたので、別に不審に思うほどではないと思う。(2006-09-14 追記)

だが、もう一度見た時には少し違った印象を持った。アイリーンが本当にやりたかったのは、ホームズ物語に登場したトリックを再現すること、それ自体だったのではないかなと思ったのだ。ホームズもワトスンも、憎しみの対象――つまり「このために犯罪を犯す」という目的ではなく、自分のやりたいことを実現するための道具だったのではないかと思う。本気でワトスンに罪を着せたいなら、無理にトリックを使う必要はない。普通に撃ち殺して、拳銃はもっと確実な工作に使っただろう。そうではなく、「ワトスンが殺したように見せかけて自殺したホームズ」というストーリーを作り上げることが目的だったのではないか。

さらに――アイリーン自身が「名探偵」として謎解きを披露してみせることまで計画に入っていたということはないだろうか? ワトスンが容疑者となりいよいよ大ピンチ! という時に、頭脳明晰なアドラー嬢が颯爽と現れ「暖炉の中はお調べになりまして?」とか何とか言うわけですよ。「初歩的なことですわ、もし貴方が『(ネタバレ)』をお読みでしたらね」とかね。そして彼女は忘れえぬ「あの女性」として、担当刑事の記憶に残るのであった――。まぁ、さすがにここまでは考えすぎだろうと思うけれど、アドラー嬢とグリッソム主任の対決を見てみたかったような気がする。あぁ、でもグレッグの事件だからダメか。

そういえば、グレッグはやっと正式にCSIなのね! おめでとう!

「ラスベガス狂気の夜」で彼は現場を汚染してしまった。その時の行動は結果的に正しい結論への手がかりにはなったけれど、やはり捜査官としては許されないことだった。今回、彼は間違った結論を導いてしまったけれど、そのプロセスは捜査官として正しい方法だった。グリッソムがそれを評価する時の台詞が良い。冒頭に引用した台詞がそれだが、W.ピーターセンの穏やかで説得力のある口調が素晴らしいと思う。

というわけで、おめでたい幕切れだったわけだが、謎は残っている。最後にゼラチン人形「バリスティック・ジョー」がくるんと回転したのはどういう仕掛けによるものだったのだろう。椅子が遠隔操作で回転するようになっていたのか、それとも机の下にホッジスでも隠れていたのか(他のメンバーは皆反対側にいたので)。

Yoko (yoko221b) 2006-08-17

csi/s05/103_who_shot_sherlock.txt · Last modified: 2020-03-21 by Yoko