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csi_miami:s04:090_double_jeopardy

CSI: Miami - Season 4, Episode 18

#90 Double Jeopardy

  • 邦題:「実験殺人」
  • 脚本:Brian Davidson
  • 監督:Scott Lautanen
  • 初回放映:2006-03-13

Never confuse an acquittal with innocence.

事件概要

メリッサ・ロウ殺害事件

メリッサ・ロウが行方不明となり、検察は夫のスティーヴン・ロウがメリッサを殺害したものと判断して起訴に踏み切る。だがスティーヴンに不利な証拠は状況証拠ばかりで、何よりも遺体が見つかっていないことから、陪審員は無罪の評決を出す。

だが皮肉にも、その直後にメリッサらしき遺体が漁船の網から発見される。

メリッサの遺体は腐食が激しく傷口は崩れてしまっていたが、指を切断され、脚の骨には凶器の包丁の痕が残っていた。カリーは、メリッサの遺体がマイアミの気候に合わないパンティストッキングを身に着けていることを不審に思う。骨の傷跡は、最初に「凶器」と疑われた包丁の先と一致した。だがその包丁は刃先が欠けている。メリッサを刺したときに刃こぼれしたと思われていたのだが、実際には、メリッサを刺す前にすでに刃が欠けていたことになる。先端の欠けた凶器を使ったのは、メリッサの前に誰か別の被害者を刺したせいではないか。また、ロウが持っていたダンベルは4個なくなっていたのに、現場からは2個しか回収されていない。残り2個は別の被害者に使ったのではないか――誰かを実験台にして殺人の「練習」をしていたのではないかという疑いが生じる。

一方、スティーヴン・ロウのパソコンから削除されたファイルを復元すると、彼が白人優越主義者であるらしいことがわかる。メリッサは母親が黒人であったが、外見上は完全に白人だったため、スティーヴンはそのことを知らず、後から事実を知って怒ったという。ホレイショはその事実をウェスト検事に伝える。メリッサ殺害ではすでに無罪判決が出てしまったため、同じ罪で再び起訴することはできないが、連邦法の「ヘイト・クライム」で起訴できる可能性が出て来たのだ。

スティーヴンがメリッサの前に誰かを「実験殺人」していたという前提のもとで似たような事件を探すと、デブラ・マシーという女性の事件が見つかった。デブラ事件の証拠はメリッサ事件とは一致せず無関係とわかるが、事件当時「加害者はデブラの指を切断して食べた」という誤報が流れたことがあった。つまり、スティーヴンはこのデブラの事件を模倣して他の女性を練習台として殺害し、最後に本番としてメリッサを手にかけた可能性がある。

さらにスティーヴンの周辺を調べると、デブラ事件の3ヶ月後にテレサ・バートンという女性が失踪している。デルコとウルフは、スティーヴンがデブラ事件を模倣したとすると、テレサも同じ湖に遺棄したのではないか、との仮説に基づき湖を捜索。その「湖」は現在は埋め立てられてショッピングセンターの用地になっていたが、地下をスキャンしてみるとテレサの遺体が見つかった。指の切断、足首のダンベルなどがメリッサの事件と同じだった。首には刺したときに折れた刃の切っ先が残されており、メリッサを殺した包丁と合わせてみると、ぴったりと一致した。

だが、メリッサが身に着けていたパンストを調べると、そこには女性の爪が引っかかっていた。メリッサにパンストをはかせたのは、スティーヴンの現在の恋人アリソンだったのだ。メリッサ殺害の主犯はアリソンで、スティーヴンは従犯だった。アリソンは、メリッサがパーティに出かけたように見せるために服を着替えさせたが、マイアミ出身でない彼女は、マイアミの習慣を知らずにパンストをはかせてしまったのだ。


感想

エピソードタイトル、“Double Jeopardy” がなぜ「実験殺人」? と思ったら両方出て来ていたのね。

“Double Jeopardy” は「二重の危険」。合衆国憲法では第5修正条項に「… nor shall any person be subject for the same offence to be twice put in jeopardy of life or limb; (人はだれも,同一の犯罪について生命や身体の危険に二度さらされることはない.)」という、二重の危険を禁じた規定がある(下記 p.173~174)。ここでいう「生命または身体の危険」は、刑罰一般を含む意味とされる(民事は含まない)。同じ人物を同じ犯罪で2度以上裁いてはならないという刑事法上の原則であり「一事不再理」ともいう。

だが、同じ罪で2度起訴されることも、まったく不可能というわけではないらしい。

1995年に発生したオクラホマシティの連邦ビル爆破事件では、爆発物の使用と8名の連邦職員を殺害したという罪で、まず主犯のティモシー・マクヴェイが死刑判決を受け、次に共犯者のテリー・ニコルズが終身刑の判決を受けている(いずれも連邦裁判所)。マクヴェイはそのまま処刑されたが、ニコルズはその後、オクラホマ州の検事により「160名の民間人を殺害した」罪で起訴され、同じく終身刑の判決が下った。この爆破事件の犠牲者は合計168名だったが、民間人160名は連邦裁判所への起訴には含まれていなかったとのこと。連邦最高裁は、これが一事不再理の原則に反するという被告人側の訴えを退けている。

以上参考:
飛田茂雄 『アメリカ合衆国憲法を英文で読む―国民の権利はどう守られてきたか』(中公新書)

……というわけで、州と連邦の二重性を利用すれば、一事不再理の網を抜けることも現実に不可能ではないようだ。だが、それがこのエピソードで説得力のある使い方をしているかというと、とてもそうは思えなかった。立法の限界で不当に軽い刑罰しか言い渡せなかったわけでも、卑怯な手で証拠を排除したわけでもない。ロウに無罪判決が下ったのは、検察の立証が不十分だったからではないのか。あっちでダメならこっちで……というのはやはり、権力の濫用に思える。少なくとも、ホレイショにはやってほしくなかった――ホレイショはもっとストレートな正義感の体現者でいてほしいと思う。

ヘイトクラムというと、前シーズンの「危険な集団」を思い出す。あの時にホレイショとデルコが言った “One animal at a time.” は、このエピソードとはむしろ逆のアプローチではないかと思う。それは彼らの「ヘイト」を(思想として)まとめて裁くのではなく、逆に彼らの信念や主張を剥ぎ取り、1人ずつ着実に殺人犯として裁くことではなかっただろうか。

また、「凶器が2度使われた(かもしれない)」ことと「行方不明の重りがある」ことから「別の被害者 → 実験殺人」というのは、少々飛躍がありすぎるように思う。ああもうプロットに突っ込むのはやめようと思ったのに。のにのに。

それにしても今回、ウルフ&デルコも検事もアレックスもそろってオレンジ色の服を着ていたのは何か意味があるのだろうか。

hermitage.rdy.jp_csi_img_caps_miami_090.jpg

でもってホレイショは髪がオレンジだし。でも何でこんなところで片膝ついてるんすか?

Yoko (yoko221b) 2007-04-22

csi_miami/s04/090_double_jeopardy.txt · Last modified: 2024-02-21 by 127.0.0.1