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dexter:s06:069_get_geller

Table of Contents

Dexter - Season 6, Episode 9

#69 Get Geller

  • 邦題:「怒りの鉢」
  • 脚本:Karen Campbell
  • 監督:Seith Mann
  • 初回放映:2011-11-27

概要

デクスターは教会で次のタブロー「怒りの鉢」の絵を発見。そこには “2LOT” という文字が記されていた。デクスターはトラヴィスをモーテルに匿ってから “2LOT” について調べ、それが熱力学第二法則 (2nd Law of Thermodynamics) の略であることを知る。それは「秩序は時間とともに無秩序へ向かう」という法則で、マイアミ大学のケイシー教授は「2LOT理論」で神を中心とする世界観を真っ向から否定していた。デクスターはケイシー教授が次の標的ではないかと思う。

デボラはセラピーで、ランディやブライアンのことを語り「セッションの回数を増やしましょう」と勧められる。

ミーティングで、エンジェルはゲラーの次のタブローを説明する。「怒りの鉢」は人間に注がれる罰。また、ゲラーは一連の犯行を開始してから初めてブログを更新し「6日後 日食とともに終末がくる」と書き込んでいた。その記事には多くのコメントが寄せられ、中にはゲラーを信奉する者もいた。

一方、前の夜にストリップクラブで醜態を演じたクインは銃と携帯電話を失くしたことに気づく。エンジェルとともに携帯のGPS信号を追跡して探し当ててみると、クインの「お相手」はクラブの向かいのワッフル店で働く中年女性。

ホテルで死亡していた女性、ジェシカの父親がデボラを訪ねる。ジェシカの件は薬物の過剰摂取で事件性はないと判断されていたが、父親は「救命士が蘇生処置をしていないのに肋骨が折れていたのは、他に誰かいたことを示しているのではないか」と再捜査を求める。

デクスターはケイシー教授の講義スケジュールを調べ、直接会って警告するが、教授は「脅迫はいつものこと」と取り合わない。デクスターは仕方なく、トラヴィスと2人でゲラーを待ち伏せる。トラヴィスがゲラーを目撃し、2人はケイシーの部屋へ。トラヴィスを見張りに残しデクスターがエレベーターで研究室へ向かうが、途中でエレベーターが停止してしまう。閉じ込められたデクスターを救ったのはトラヴィス。だがその間にゲラーは姿を消していた。ケイシーの部屋は無人で、争った跡と血痕があった。デクスターはブログを通じてゲラーをおびき出すことにする。

翌日、マイアミ大学の講堂でケイシーの遺体が発見される。胸にはΑΩが刻まれており、その傷から皮膚をはがしてみると中は空洞で血が抜かれている。手首から先が切り取られており、マスオカが腕を持ち上げると、仕掛けが作動して天井からケイシーの血が降りかかる。

その頃モーテルで目覚めたトラヴィスは、浴室でケイシーの切り取られた手首と「偽預言者を教会へ連れて来い」という血文字を見て驚愕する。

デボラはジェシカ事件の再捜査を求め、ラグェルタに逆らって再捜査を決定する。

ルイスはゲラーのブログの発信源をたどり、無線LANにただ乗りしていることを突き止める。デボラは付近に警官を配備し、ゲラーとトラヴィスを見かけなかったか聞き込みを開始する。その付近にはゲラーが根城にしていた教会があった。

ルイスはジェイミーを部屋に招き、コレクションを見せる。その中にはアイストラック・キラー事件の証拠品である義手があった。

トラヴィスは浴室の血文字のことを言わず「ブログを通じて教会へ来いと言われた」と言い、デクスターとともに教会へ。二手に分かれるが、デクスターが中へ入ってみるとトラヴィスは気を失って床に倒れている。ゲラーを探して地下室へ降りて行くと、そこには大きな冷凍庫があり、中には冷凍されたゲラーの遺体があった。


感想

最後に「あっ」と驚く種明かしが仕込まれた9話。ここで大きく弾みをつけて、あと3話でフィナーレへとなだれ込む絶妙のタイミングだと言えるだろう。

……とは言っても、ゲラーが実在ではなくトラヴィスの妄想、つまりデクスターにとってのハリーのような存在ではないのか? という疑問の声はもっと早い段階からあった。海外のレビューサイトや掲示板などを見たところでは、4話ぐらいから出ていたようだ。ネタバレ回避のため、今までその点には敢えて触れずに来たので、ここで復習がてら最初からざっと振り返ってみよう。

まず1話。初登場ではトラヴィスがボートを漕ぎ、ゲラーが灯りを持っている。この場面は師弟2人だけ。次にトラヴィスが果物売りに声をかけるが、ここでゲラーは車の中で待っており、姿を見せない。

2話では、2人でマネキンを運ぶ(運ぶのはトラヴィス1人だが、その後ゲラーが頭部を手に持っている)。廃墟のような教会でゲラーが自分の腕に焼け火箸を当てる。どちらの場面も2人だけで他には誰もいない。

3話では、トラヴィスが「神に謝罪しろ」とネイサンを責め立てるが、ここにゲラーは姿を見せない。その後トラヴィスの傍らに現れて “He's ready.” と言うが、この時ネイサンがどうしていたかは、画面の外になっていてわからなかったように記憶している。

4話、ゲラーが実体ではないというヒントが最初に示されたのが、多分このエピソードだと思う。まず、カフェでトラヴィスとゲラーが話しており、そこにウェイトレスのエリンがやって来る。だがエリンが言葉を交わすのはトラヴィスだけ。トラヴィスの前には水のグラスとコーヒーカップがあるが、ゲラーの側には何もない。ゲラーはトラヴィスとエリンの濡れ場を覗き見したりして、妙に神出鬼没。翌朝、エリンが縛られているのを見てトラヴィスは驚くが、その時もエリンはトラヴィスの方だけを見て、ゲラーの方は見ようともせず、髪をなでられても反応していない。

しかし、次の5話でちょっと混乱させられる。4話のカフェの場面では確かに、ゲラーの前に何もなかったのだが、この5話では2人が「バビロン」を物色している時にゲラーがカップを持って何か飲んでいるのだ。また教会で絵を描いたりしていて「物理的コンタクトがある」ということで、幻ではなくやはり実体ではないかという意見も多くなった。相変わらずトラヴィス以外の人物と接触する場面はないが、ゲラーの名前が新聞に載ったことで「身を隠す」というちゃんとした理由ができてしまった。まだまだ視聴者に確信してもらっては困る、というわけだろう。

6話は、ブラザー・サムの話がメインで、それほど重要な場面はなかったかな。トラヴィスとゲラーが市場にいるが、例によってゲラーは口を出すだけで、実際に物を買うのはトラヴィス。ゲラーはその後、トラヴィスに「女に印をつけろ」と命じるが、トラヴィスが女性を解放する場面でゲラーは姿を見せない。今思うと、その時のトラヴィスは「自分の内なるゲラー」に監視されていない、ということを表していたのだろう。

7話では、デクスターの側にブライアンの幻が現れる。これが幽霊のくせに、デクスターにポリ袋(中にニック)を手渡したり、モーテルで飲食したりしたあげく、宿の主人をピッチフォークで刺殺。ま、実際には全部デクスターが1人でやっていたということなのだろうけど、ブライアンがこれだけやれるのなら、物理的コンタクトを根拠にゲラーが実体だとはかならずしも言えないことになる。また、トラヴィスに解放された女性ホリーの供述から「犯人は2人組だった」ということが警察にも伝わるが、ホリーは目隠しをされていて姿は見ていない。ただ声を聞いただけなので、これはトラヴィスが2人ぶんしゃべっていたということか。

8話では、ゲラーの神出鬼没ぶりがどんどん人間離れしてきて、かなり「幻」っぽくなった感じ。デクスターが教会に来て「取り逃がした」と思う場面など、ご老体には無理なスピードだと思う。私自身は、ブライアンが出て来たあたりでようやく「もしかするとゲラーも?」と思い始めたので、物理的コンタクトについては特に疑問には思わなかった。しかしやはりゲラーは現実かも、というか現実であってほしいと思ったのは、このエピソードでリサが殺された件だった。確かにデボラが家から出てくるのを見て、腰の銃に気づいたのはトラヴィスだ。しかし、いくらなんでも実の姉を手にかけるなんて、そんな話だったらちょっと辛いなぁと思ったんだよね。あ~あ。

そしてこの9話。デクスターとトラヴィスが大学で待ち伏せている時、ゲラーが堂々と姿を見せたのにデクスターは見ていない。デクスターがちょっと目を離した瞬間にトラヴィスが「目撃」したわけなのだが、そんなに急がず普通に歩いているだけのゲラーを、あんなちょっとの時間差で見逃すのはやはり不自然。その後、モーテルに血文字が書かれる場面では、もう幻でしかあり得ないだろうと思った。トラヴィス君はデクスターをエレベーターに閉じ込めた後、ケイシー教授を襲ってどこかに隠し、デクスターを救出してモーテルへ戻り、その後抜け出して「怒りの鉢」のタブローを作り、モーテルの浴室にケイシー先生の手首を置いて壁に血文字を書き、寝て起きて自分で書いた血文字を自分で消したということになるわけだよね。忙しいなぁ。

さて、今度のタブローは「怒りの鉢」で、これは黙示録の16章に登場する。オットハインリッヒ版のみ示しておく(他にもバンベルク版とかにあるはずなのだが、見つからなかったので)。

本家黙示録では、7人の天使がそれぞれに鉢を1つずつ持っていて、中に直接血が入っているわけではないらしい。最初の天使が鉢の中身を地上に注ぐと、人間に悪性のできものができ、2番目の天使が鉢を海に注ぐと海水が血のようになる。3番目では川の水が血になり、4番目は太陽に注いで人間が焼かれる。5番目は獣の王座(ローマ皇帝?)に注がれ、人々を苦しめる。6番目はユーフラテス河の水を干上がらせる(さっき血に変えたばかりなのに)。そして7番目の鉢が中空(大空より低い空で、悪霊の住む領域)に注がれると、大地震が起きてバビロン(ローマ)の街が崩壊する。あの有名なハルマゲドン(メギドの丘)という地名が登場するのもこの場面だ。下の絵で口からフキダシのような物が出ているのは、6番目の鉢の所で竜と獣と偽預言者の口から「カエルのような3つの穢れた霊」が出て来る所を表しているのだろう。聖書はヘビちゃんやカエルちゃんに失礼だにゃー。

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Yoko (yoko221b) 2012-12-23

dexter/s06/069_get_geller.txt · Last modified: 2019-12-18 by Yoko