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homicide:s03:037_a_dolls_eyes

Homicide - Season 3, Episode 4

#37 A Doll's Eyes

  • 邦題:「人形の目」
  • 脚本:James Yoshimura
  • 原案:Tom Fontana, Henry Bromell
  • 監督:Kenneth Fink
  • 初回放映:1995-12-01

事件概要

Patrick Garbarek

ショッピングモールで発砲事件が起き、10歳の少年が巻き添えで撃たれて重傷を負う。ベイリスとペンブルトンが担当するが、少年の両親は「息子はまだ生きているのになぜ殺人課の刑事が来るのか」と怒る。医師は、少年を「人形のような目」と形容する。それは脳死を意味していた。

ペンブルトンは少年が着ていた衣服を証拠品として預かろうとするが、前日の混乱のせいで両親は何も知らずに服を持ち帰り、洗ってしまっていた。ベイリスは容疑者のトミー・ポーテンを見かけて追跡し、逮捕する。トミーは、自分が恋人を取ったので兄が銃を持って追いかけて来たと話す。ベイリスとペンブルトンは兄ドン・ポーテンを逮捕する。

両親はパトリックの生命維持装置を外すことに同意し、パトリックの臓器は移植のため各地に送られる。


感想

このシリーズのあらすじは、例えば Law & Order や CSI などのシリーズに比べて記述が短い。それは、事件説明以外の描写がいろいろあるためなのだが、今回は特に記述が短い。話の中心は刑事たちよりもむしろ、銃撃戦に巻き込まれた少年の両親の方だ。

エピソードはショッピングモールで買い物をする親子連れという日常的な風景から始まる。10歳の息子はショーウィンドウの恐竜に釘付けで、母親が「早く来なさい」と呼ぶ。そこへ銃声が響き、平和な日常風景はあっという間に壊されてしまう。軽快なドラム音楽に乗せたここまでの展開のスピードがすごい。

必死で逃げる若者とそれを追うもう一人の若者。そして乾いた銃声が鳴り響くのだが、他のドラマだと女性客が悲鳴を上げて全員その場で伏せるのがお約束。だがここでは、母親がしかめっ面でちらっと横を見る程度。恐怖というより「まただわ、いやねぇ」という嫌悪感の表れた表情だった。その後、息子が撃たれたことに気づいて状況が一変するが、劇的な演出を省いた静かな移行ぶりが妙にリアルだった。

流れ弾に当たった少年は病院に運ばれ、事件はベイリス&ペンブルトン組の担当になるが、両親は「殺人課? 誰か亡くなったんですか」と、状況がのみこめていない様子。彼らにしてみたら、息子はまだ生きていて助かると信じているのに、なぜ「殺人課」なんだ! 殺人事件じゃないぞ! というところなのだろう(「殺人未遂」だから殺人課の担当で全然おかしくないはずなのだが)。いきなり息子が銃で撃たれるという非日常と、駐車場の車を動かしたり息子の服を洗ったりする日常がぎこちなく交錯する情景が、どうにも落ち着きのない不安な印象を与える。でも「その服は証拠品なのでは…」と思っていたら、やはりそうなのね。

犯人はあっさり見つかって逮捕されるが、被害者は脳死状態。タイトルの「人形の目」は脳死状態に陥った患者の目のこと。瞳孔が開いているという意味だろうか。両親は生命維持装置を外すことに同意する。本来なら家族は病室の外にいなければならないはずだが、父親のたっての頼みで医師は「15秒だけ」別れの時間を許可する。母親が息子を腕に抱いて最期の時を迎える場面は、涙なしには見られない。

そしてその直後から始まる、時間との戦い。臓器が摘出され、全米各地に運ばれて行く。心臓が運ばれたのがシカゴで、担当医は「シカゴ・ホープ」のマンディ・パティンキンとのこと。そう、後にBAUの変人ベテランプロファイラーになるギデオンなのだが……。

セリフもなくほんの数秒の出演で、容器を受け取ってすぐに走り去ってしまうのでよくわからず。本当にギデオンだった?

ごく普通に買い物に出かけ、そこで非日常の穴に落ちて時が止まったかのような被害者の両親、被害者の心臓が止まった瞬間から猛ダッシュで動き始める医師たち、そして殺人が普段の仕事である刑事たちが、それぞれ別々の時間の中を動いているような、そんな「落ち着きのなさ」が印象深いエピソードだった。

Yoko (yoko221b) 2011-09-19

homicide/s03/037_a_dolls_eyes.txt · Last modified: 2020-04-23 by Yoko