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lao:s04:074_american_dream

Law & Order - Season 4, Episode 8

#74 American Dream

  • 邦題:「過去から届いた挑戦状」
  • 脚本:Sibyl Gardner
  • 監督:Constantine Makris
  • 初回放映:1993-11-09

Now I know how Swann felt when he wanted to murder Cohen.

事件概要

People vs. Phillip Swann (判事:Michael Callahan)

発掘現場で白骨死体が発見される。歯が折られていたため身元の特定は難航するが、着衣のボタンが手がかりとなり、ようやくシドニー・コーエンに行き着く。シドニー・コーエンは84年に行方不明になり、殺害されたとみなされてフィリップ・スワンという男が起訴され、遺体が見つからないまま有罪になり終身刑になっていた。発見された骨はコーエン氏の医療記録と一致し、身元は確認される。

8年前にスワンが有罪になったのは「スワンがコーエンを殺してNJに埋めた」という共犯者ラッセル・ボビットの証言が決め手となっていたが、遺体が見つかったのは遠く離れたローズベルト島。頭蓋骨からは銃弾が発見されていたが、ボビットは「喉を切って殺した」と証言していた。当時スワンを起訴したストーンは有罪を確信していたが、スワンは新しく発見された証拠に基づいて再審を請求し、自ら弁護人となる。

当時の証人の多くは転居して現住所が不明、連絡がついた者も今さら証人になることには消極的。頼みの綱はボビットだが、彼はバハマ行きのチケットを購入して行方を絶ってしまう。判事は8年前の公判での証言を採用するように言うが、スワンは「新しい証拠が以前の証言と矛盾している以上、反対尋問ができなければ意味はない」と反論し、ボビットの証言を排除させる。

公判が開かれ、刑務所でスワンと同じ房にいた囚人ビリー・ドイルが「スワンからコーエンを殺した話を聞いた」と証言する。ボビットとともに遺体を埋め、その後で遺体を別の場所に移せば、ボビットが自供しても遺体が見つからないため有罪にならないだろうと計算したのだ。だがスワンは、そのドイルが以前も検察と取引をして証言し、それが偽証とされた事実を持ち出して信頼性を崩す。

スワンは無罪の評決を受け、NY州とストーン個人に対して訴訟を提起する。スワンは宣誓供述の録取で、ストーンの経歴や財政状況を逐一調べ上げる。その時のスワンの一言から、ストーンは彼が以前にも獄中で何らかの事件を扱ったことがあり、その相手が見返りとしてボビットの証言を阻止したのではないかと思いつく。

調べてみると、スワンがビリー・ドイルのために趣意書を書いていたことがわかる。改めてドイルに面接したストーンは、ボビットが死んだことを知る。スワンは、ジョージ・マズランスキーという元囚人を使ってボビットを殺害したのだった。ストーンは「目的はスワンだ」と言ってマズランスキーと取引して供述を得、乗り捨てた車のトランクからボビットの遺体を発見。スワンはボビット殺害で再び逮捕される。


感想

個人ストーリーも職場恋愛も家族のゴタゴタもないのがこのシリーズの特徴だが、シーズンに1~2話程度は個人ストーリーらしき要素も入ることがある。といっても他のシリーズであれば「個人ストーリー」ともいえないような物かもしれないが、今回はストーン検事の「ネメシス」(宿敵、復讐者など)フィリップ・スワンが登場。演じているのは「ダメージ」の弁護士役でエミー賞を受賞したゼルさんことジェリコ・イヴァネク。この時点ではまだお若いのだが、さすがの存在感だ。対して検事はいつになく感情的で、弁論にも説得力がなかった感じ。あれだけ証拠を切り崩されれば仕方ないが……。そもそも8年前によく有罪にできたと、そちらの方に驚く。

宣誓供述の場面では、ストーン検事の経歴を調べ上げてニヤニヤ(お前は検事ストーカーか!)。この場面は何だか WAT のジャックとスポ校長を思い出させた。検事が離婚していたことは以前も言及されていたが、どうやら不利な条件をのんだらしいこと、8年前にスワンを有罪にした直後にEADAに昇進したことなど、L&O以前の検事のことがいくつか明らかになった。

このスワンという人、頭脳明晰で人を惹きつける弁舌を備え、素人ながら検事をうならせる法律知識――という、絵に描いたようなマスター・クリミナルかと思ったのだが、よくよく考えてみると頭良いんだか悪いんだかわからなくなってくる。死体が見つからなければ大丈夫、とタカをくくっていたら起訴されて有罪。そのままなすすべもなく獄中に8年。死体が見つからなければ(あるいは刑事たちが身元特定で手抜きしていれば)今もまだ収監されていたはずだ。その後、ボビットを嘘つき呼ばわりしておけば良いものを、下手に手を出して殺したものだから、再び殺人事件でお縄。そもそも最初の遺体を単独で移動させることができたのに、なぜボビットを巻き込んだのだろう。何か理由があったんだっけ?(すでに記憶がない)

結局のところ、「人を殺して誰にも気づかれない」では満足できず、「人を殺してまんまと逃げおおせた自分」あるいは「警察と検察を出し抜いた自分」の才能をアピールせずにいられない人なのだろうか。だから「いったん起訴されて無罪になる」という手順を踏みたかったのだろうか。そして検事の前で “collateral estoppel” なんていう専門用語を得意気に口にして、結局それで墓穴を掘ってしまったわけなのだなぁ。

その一言にピンときたストーン検事が、クレアさんと一緒に文書を検索して調べる場面。以前のエピではゴタゴタもあったけれど、この2人のコンビもずいぶん馴染んできた。ロビネット検事の時より「師弟」の印象が強いかな。食事を途中で切り上げて調べに行こうとするストーンに対して「食事はどうします?」と真顔で聞くクレアの表情が良かったわ。いいな~こういうノリ(結局2人して何かテイクアウトしたみたい)。

今回は何だか難しい単語が多かったので、久しぶりに単語帳。


単語帳

  • malicious prosecution:悪意訴追
  • retroactive:遡及的
  • deposition:宣誓供述録取(書)
  • a fortiori:いっそう有力な根拠となる、なおさら~
  • collateral estoppel:争点効、付随的禁反言。裁判所がいったん判断を下した後、同じ争点に関してそれに反するような主張を、別の訴訟で行うことはできないとする効力。

今回の元ネタは1984年にLAで起きたロン・レヴィン殺害事件とのこと。例によって出版・ドラマ化済み。

Yoko (yoko221b) 2008-12-19

lao/s04/074_american_dream.txt · Last modified: 2024-03-09 by 127.0.0.1