User Tools

Site Tools


lao:s07:153_double_down

Law & Order - Season 7, Episode 19

#153 Double Down

  • 邦題:「勝負の時」
  • 脚本:Ed Zuckerman, Shimon Wincelberg
  • 原案:Richard Sweren, Shimon Wincelberg
  • 監督:Arthur W. Forney
  • 初回放映:1997-04-16

2:00 a.m. justice, not always conducive to wisdom.

事件概要

People v. Henry Harp

酒場で強盗事件が発生し、たまたま居合わせた非番の警官、ラッセル・シェーファーが巻き込まれて死亡する。犯人は2人組で、負傷したものの車を奪って逃走。奪われた車はリムジンで、運転手のミッチェル・タイタスが誘拐された可能性があった。

その後、港湾局の近くで血の跡や銃弾の穴が開いた服が見つかり、付近に警官を配備した結果、傷を負った容疑者ヘンリー・ハープが逮捕される。ハープは「いつ撃たれたのか記憶にない」と犯行を否定。摘出した銃弾はつぶれており鑑定不可能。ヴァン・ビューレンはその結果を隠したまま、「警官殺しは第1級謀殺になる」と脅して、タイタスの行方を言わせようとする。

ハープはようやく取引に応じ、ロスを呼んで周到に契約書類を作成したうえで、「強盗事件に関連するすべての犯罪」の罪状を故殺に落とすことと引き換えに、タイタスが生きて発見された場合は10年以下、死亡していれば15年以下の実刑という条件を提示。「警官を殺して15年の刑か?」と刑事たちは反発するが、他にタイタスを探す有力な手がかりはなく、ヴァン・ビューレンは人命最優先を主張。夜中の2時にマッコイを交えて話し合った結果、「明日の正午に取引をする」と決定される。

その間に刑事たちは何とかタイタスの監禁場所を探そうと、自宅、家族、恋人の周辺を徹底的に調べるが、成果が上がらないまま取引時刻は近づき、タイタスの妻は「犯罪者は逮捕されてどっちみち刑務所へ行くし、亡くなった警官は気の毒だがもう生き返らないのだから、早く夫を探してほしい」と訴える。

12時すぎにタイタスの車が発見されるが、タイタス本人の姿はない。座席には血痕があるがハープの物かもしれず、検査には何時間もかかるのでタイタスの生死はわからない。マッコイは時間切れと判断して取引に応じる。

ハープの供述から監禁場所がわかるが、タイタスはすでに死亡。死後少なくとも24時間は経過していた。つまりタイタスは犯行のすぐ後、ハープが逮捕されるより前に死亡していたことになる。ロスは「強制的に同意させられた契約なので守る必要はない」と主張。署名した本人であるマッコイは「契約は契約だ」と言い、良くない前例を残すのではないかと言うが、シフはロスに同意する。

結局、罪状は第1級謀殺、第1級誘拐、第1級強盗罪。大陪審も第1級謀殺での起訴を認めるが、ハープ側は当然、棄却を申し立てる。

酒場から盗まれた現金は約1200ドル。ハープが所持していたのはその半分の600ドル程度。もう半分は共犯者のノヴァクが持っていると思われたが、調べてみると残り半分は店員が火事場泥棒していたとわかる。そこで視点を変えて探してみたところ、川の近くでアール・ノヴァクの遺体が発見される。

マッコイと弁護人双方の意見を聞いた判事は、「取引の条件をのんで手続を進めるか、取引を反故にしてハープの供述を排除するか」どちらかを選ぶよう言い渡す。取引をしなければハープはタイタスの監禁場所を言わなかったはずなので、その供述を使わずに罪を証明しなければならない。その途中で刑事たちが現れて「ノヴァクの遺体が発見された」と言いかけるが、マッコイは「言うな」と彼らを制止して「取引の条件を受け入れる」と明言する。

刑事たちは「いったいどういうことか」と詰め寄るが、マッコイは取引を受け入れてハープ自身の供述を使用することで、ノヴァク殺害の訴追を進めるつもりだったのだ。シェーファーとタイタスの殺害については取引が成立しているが、ノヴァクの殺害は別問題。弁護人は「強盗事件に関連するすべての犯罪」が契約でカバーされていると主張するが、ノヴァク殺しはその数時間後、離れた別の場所で起きた事件である。弁護人はそれでも「同じ犯罪の一部分である」と主張し、審問が開かれる。

ハープは恋人の家賃を払うために800ドル必要だった。そのためにノヴァクを誘って強盗を計画したが、2人で分けられるほどの金額は無理だろうと思ったので、「最初からノヴァクを殺すつもりだった」と証言する。それを聞く限りではノヴァク殺しも強盗と同じ犯罪の一部であるが、マッコイが取引をした時に「ハープがノヴァクを殺害した」ということを知らなかった場合は、別々の犯罪として訴追できる可能性があった。マッコイはノヴァクが死亡したと聞いた時、その可能性を考えて刑事たちに「言うな」と言ったのだった。

マッコイは証言台で「ノヴァクが死んだと聞き、彼の証言が得られないとわかって失望したので取引条件をのんだ。殺されたとは知らなかったし、その可能性もその時には思いつかなかった」と言う。ブリスコーとカーティスも出廷してマッコイの証言を裏付ける。弁護人はそれでも「ベテランの殺人課刑事2人が死因を言い忘れ、検事歴22年のマッコイが殺人の可能性を思いつかない、そんなことがあり得るのか」と食い下がるが、結局マッコイが「言うな」と制したことは誰も証言せず、ノヴァク殺しでのハープの起訴は認められる。


感想

何話か前の感想で最近の展開はマンネリ気味であるとぼやいたが、脚本家陣にもそのような認識はあったのだろうか。前回に続いて今回も、いつもとちょっと違う構成のストーリー。タイムリミットが設けられ、緊迫感をもって事態が推移していく。「ちゃんちゃん♪」テロップの下に日付だけでなく時刻も表記されていたが、時刻の表記はシーズン4の「Mayhem(大騒動)」以来だと思う。

最初は単純な強盗事件だったはずが、いろいろ偶然が重なって警官殺しに誘拐という重大事件に発展してしまった。逮捕されたハープが困った条件で取引を切り出してきたため、夜中に皆してマッコイの自宅で会議。夜中ということは、検察にも当直があるのね。まぁNYの罪状認否法廷は24時間営業らしいので、検事も判事も公選弁護人も、誰か詰めていないといけないのだろう。マッコイの自宅は初公開だよね? さすがに本だらけだわ。

検事も悩みに悩み、ギリギリまで引き伸ばすが、結局時間切れで取引成立。被害者は発見されたものの、すでに死亡。幸い――と言ってはいけないのだろうが、死後少なくとも24時間は経過しており、取引を引き伸ばしたために死亡したわけではないことがわかり、少しホッとした。しかし、ということはハープは被害者を殺しておいて取引を切り出したことになる。(詐欺だ!)

というわけで、ハープとの契約をどうするかでまたしても紛糾。ロスは「強制的に同意させられた契約なので守る必要はない」ときっぱりしているが、マッコイは契約書にサインした本人であるためか、契約は契約だと慎重な姿勢を見せる。検事が取引をしておきながら、都合が悪くなれば反故にする、では今後被疑者の方も取引したがらなくなり、その結果助かる被害者も助からなくなるという可能性も考えられるので難しい。

結局取引を撤回することになるが、取引を「なかったこと」にするとどうなるか。取引をしなければハープは黙秘していたはずなので、ハープの供述も「なかったこと」になる。そして運転手の遺体はハープの供述がなければ発見できなかったはずなので、これはそもそも起訴が可能なのだろうか?

……と思ったら、警察サイドで新たな展開があり、共犯者ノヴァクの遺体が発見される。刑事たちは早速マッコイに報告に行くわけだが、ここでマッコイの態度がちょっと変。これは何かあるぞと思っていたらやはり。ノヴァクの死が他殺だったことを「知らなかった」ことにして強引に起訴にこぎつけようという作戦だったようだ。

弁護側は「強盗事件に関連するすべての犯罪」を条件にしていたので(この時点で「余罪があります」と言っていたようなものだ)、ノヴァク殺しも免責されると主張するが、これに対して検察側は「別々の事件」を主張。つまり、強盗事件が終わった後で仲間割れになり(新たに動機が発生し)殺し合いになったのであれば別々の犯罪ということになる。こう言われればハープとしては「最初からノヴァクを殺すつもりだった」と証言せざるを得ない。罪を逃れるためにより悪質な犯罪を認める、というのは初めてではないが、見ていてやはり妙な物だ。

犯罪の計画はハープだけが知ることなので、その逆は証明しようもないだろう。しかしマッコイは「取引をした時点で、ハープがノヴァクを殺害したことを検事が知らなかった場合には、別々の犯罪として訴追できる可能性がある」と、その可能性に賭けようとする。刑事たちが報せに来た時に、マッコイが「言うな」と制止したのは、この可能性を考えてのことだったのだ。それにしても、同じ法廷にいた弁護士たちには聞こえていなかったのか。

弁護側は当然「そんなわけあるか」と言い、審問になるわけだが、刑事たちはマッコイの主張を裏付ける証言をする。しかしはっきり言ってこれは偽証ではないか。マッコイはハープが殺したとわかっていて、訴追のために「言うな」と手を打ったわけなのだから。被告人もかなり悪質な計略を使っているので、おあいこだといえばそうなのかもしれないし、カーティスが法廷での会話内容をすべて包み隠さず証言したとしたら、これまた割り切れないラストになっただろうとは思う。しかしカーティス刑事は敬虔なカトリック信者なのだから、聖書に手を置いて行った誓いに背いたことに、もう少し何か迷いを見せてほしかったという気がする。シーズン5でローガン刑事が結局偽証できなかったエピソードを思い出すなぁ……。

まぁそれはそれとして、ラストの刑事2人とマッコイの3人組の場面が、けっこう馴染んでいて良い感じ。Boys' club だった初期シーズンよりも、今の方が男3人の掛け合いが面白く感じる。肝っ玉母さんのヴァン・ビューレンと、シャキッとしたお姉さんのロスがいるから、悪ガキ3人組みたいになれるのかもしれない。

そんなこんなで普段とちょっと違う事件の展開、これはこれで面白かった。とはいっても、違う展開はもういいから、そろそろ「いつもの」が見たいな~。はっはっは、わがままでごめん。

Yoko (yoko221b) 2012-08-19

lao/s07/153_double_down.txt · Last modified: 2020-04-29 by Yoko