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murder1:s02:episode36

Chapter Fifteen-Sixteen

  • Part1
    • 脚本:Charles H. Eglee, Nick Harding
    • 原案:Steven Bochco, Charles H. Eglee
    • 監督:Donna Deitch
  • Part2
    • 脚本:Doug Palau
    • 原案:Steven Bochco, Charles H. Eglee
    • 監督:Michael Fresco
  • 初回放映:1997-05-26

概要

People v. Clifford Banks (2)

ワイラーは、救急隊員のアギレラから、「バッグから被害者の髪の毛がはみ出しており、ファスナーがからまっていた」という供述を得る。それが事実なら、最初に遺体を発見した警官の「バッグから被害者の足が見えていた」という証言はあり得ないことになる。さらに、LAPDを退職した元警官のエド・ミゼラックが「バッグから足が出ていたのは嘘だ」と言う。エドはクリフォードが逮捕された時のバックアップユニットだったのだ。だがワイラーは、エドが現在ブロンドに雇われていることが「信頼性を損なう」ではないかと心配する。

法廷では、元受刑者が出廷。クリフォードはカレンという女性のふりをして彼と文通し、次のターゲットとして狙っていたらしい。次に、クリフォードに武器を売った武器店の店主が証言。クリフォードは「鹿狩りに行く」と言って武器を買っていたが、そのくせ鹿狩りの解禁日を知らなかったという。

リネットは新しい車を買おうとするが、クリフォードの口座が弁護料の支払いのため凍結されているを知り、弁護士を雇ってワイラーと対立。クリフォードは妻のためにワイラーを解任しようとするが、判事は「ワイラー弁護士の行動に不適切な点はなく、貴方がこれ以上熱心な弁護人を見つけられるとは思わない」と申請を却下。私立探偵は、リネットが過去に何度も詐欺を働いていることや、ワイオミングですでに結婚していることを調べ上げる。

法廷には精神科医が出廷。クリフォードは連続殺人犯のプロファイルに一致するが、通常は性的な満足のために殺すのに対してクリフォードは自らの信念に従い、被害者の命を奪うことに恥や後悔を感じていないと証言。ワイラーは、医師がクリフォードと直接面談していないことを指摘。さらに、医師が連続殺人犯を扱った映画で何度もテクニカルアドバイザーを務めていることを持ち出し「一度も会ったことのない患者を診断することと、架空の人物を作り出すことと、どれだけの違いがあるのか」と示唆する。

クリフォードは「検察側の証人」として証言したいと言い出す。ワイラーは「憲法の第5修正条項(自己負罪拒否特権)の侵害である」と反対するが、そもそも本人の希望なので判事は証言を許可。ただし「せめて弁護側の証人にしてほしい」というワイラーの申し出も受け入れられる。

クリフォードは証言台に立ち、ワイラーの尋問に応じて自分の生い立ちを語る。父親はセールスマン、母親はアルコール依存症。クリフォードは精神遅滞障害を抱えた弟の面倒をみるために大学進学をあきらめた。クリフォードは弟が殺された時の状況を語り、司法制度を批判し、次第に興奮して質問を無視し、自分が被害者たちを殺害したことをしゃべり始める。

次に検事の「貴方は17人の被害者を殺害したのか」という質問に対し、「イエス」と断言。だがその後「だが私は犯罪を犯したのではない、司法がやるべきことを肩代わりしたのだ」と言い出す。さらに「殺害の具体的な状況を話してください」という質問に「よろこんで」と答える。

ゲイリー・ブロンドが陪審員のひとりと密会して逮捕される。ブロンドは、たまたま女優志願の彼女と親しくなっただけで、事件のことは話していないと主張する。ワイラーは、利害関係の対立があるためゲイリーの弁護はできないので、他の事務所の弁護士を探そうとするが、アーノルドが「事件の間だけ自分が辞任すれば問題ない」と立候補。自分だけ担当事件がないのを不満に思っていたのだ。

アーノルドの尽力で、ブロンドは軽犯罪で取引し、奉仕活動として「10代の妊娠に関する映画」を制作することになる。ただし今後クリフォード事件の傍聴は禁止される。

検事は、17人目の被害者アラン・ロゼツキーが有罪の評決を受けた裁判での陪審員を証人として召還。その陪審員は、物証がなかったこと等から、ロゼツキーが無罪ではないかと思いつつ「クリスマスの直前で早く評決を出したいというプレッシャーから有罪に投票してしまった。今はもっとよく確かめれば良かったと後悔している」と証言。ロゼツキーのアリバイを証言した友人は「彼は無実だった」、目撃証人は「実はよく見ていなかったけれど、売春で逮捕されたので取引した」と証言する。

リネットは重婚の事実を突きつけられ、「ワイラーの言ったことは事実よ。私には前科があり夫もいる。貴方のお金だけが目当てだった。17人も人を殺した男を本当に愛してると思うなんて、どうかしている」と、クリフォードのもとを去る。

ワイラーは、巡査の捜索が違法であったことを理由に、バッグの中身(ロゼツキーの遺体)と、そこから導かれるすべての証拠を排除するよう申し立てる。判事はその捜査の妥当性を審査するヒアリングを開く。

ヒアリングでは、救急隊員のアギレラ、毛髪・繊維の鑑定家、ファスナーの専門家、元警官のミゼラクが証言を行う。逮捕したティレジ巡査は、「自分が罪に問われる可能性があるので」と自己負罪拒否特権を行使して証言を拒否。判事は、ティレジ巡査による捜索が、妥当な根拠(probable cause)を欠いた違法捜査であったと判断する。グラッソ検事は、クリフォードが法廷において17件の殺害を告白したこと、車に凶器や遺体を無雑作に積んでいたことを指摘し、「警察の正当な捜査によって、いずれは不可避的に発見されたはずだ」と主張する。

ワイラーは、クリフォードを診断した精神科医に見解を聞く。医師は「クリフォードが自由の身になれば、再び殺人を始めるだろう」と言う。最初の殺人だけで済んでいれば「弟の仇をとりたかっただけ」とも判断できるが、クリフォードはシステマティックに次から次へと殺している。これはすでに「殺したいから殺す」という段階に来ていると思われる。連続殺人者は、逮捕されるまで殺人を続けるものなのだ。

ワイラーはクリフォードに面会し、クリフォードは長々と心境を語る。ワイラーは「釈放されたら、もう殺しは止めて静かに暮らせ」と助言する。


感想

被告人であるクリフォードは、正しいと信じて人を殺しているのであるから、それを堂々と言いたくてしょうがない。しかし弁護人としてワイラーはそんなことを許可するわけにいかない。「殺したが無罪だ!」と主張すれば、それこそjury nullificationということになるが、リッキーはOKでクリフォードはダメなのだろうか。確かにドラマ的に同じ戦術を続けるわけにはいかないだろうが……まぁ、劇中のワイラーも、リッキー事件でかなり判事を怒らせていたので、もうその手は通用しないことになっているのかも。

対して検察側は、かつて有罪にしたアラン・ロゼツキーが「無罪かもしれない」という証人を出してきて対抗。ワイラーもシャロン事件で同じようなこと(勝つために自分の過ちを主張する)をしたが、検察が自ら起訴した被告人に対して「合理的な疑い」を提示し、弁護人が有罪を主張するのだから話がややこしい。ロゼツキーを起訴した検事は嫌がっただろうな。

しかし最初にクリフォードを逮捕した巡査の行動に疑問が生じているというのは、そんな検察の捨て身の作戦もすべて吹っ飛ばしてしまう大爆弾だ。証拠がほとんどすべて排除されてしまうのだから、考えると恐ろしい。でも現実でこれはあり得るのだろうか? クリフォードは凶器を自分で購入しているし、被害者ともダイレクトに連絡を取っていたようだから、警察の地道な捜査によっていずれは不可避的発見に至ったはず――だと思うのだけど。

ところで、ゲイリー・ブロンドってそこそこ有名なプロデューサーらしいのに、顧問弁護士はいないのかな? いるけど民事専門なのかも。刑事事件はホフマンが担当していたのか。

劇中で言及されていた判例についてのページは以下。

Yoko (yoko221b) 2009-06-23

murder1/s02/episode36.txt · Last modified: 2019-05-05 by Yoko