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csi:s11:234_house_of_hoarders

CSI - Season 11, Episode 5

#234 House of Hoarders

  • 邦題:「ゴミ屋敷の法則」
  • 脚本:Christopher Barbour
  • 監督:Alec Smight
  • 初回放映:2010-10-21

事件概要

ダイアナ・サンティアゴ

異臭がするという通報を受けて民家へ向かった警官が、現場で「これは動物の死臭ではない」と判断してCSIを要請。その家はさまざまなガラクタで埋まっており、玄関からは入れないほど。ニックとサラは、裏口から物をかき分けながら中へ入り、女性の腐乱死体を発見する。

遺体は当初、その家に住むマルタ・サンティアゴと思われたが、実は娘のダイアナ。マルタは2人が入った時も在宅していたが、娘が死んでいるのに気づかなかったらしい。マルタにはダイアナの他に息子のジュリアンと末娘のアリサがおり、3人とも成人して家を出ていた。夫はすでに死亡。

ラングストンは、マルタを担当するケースワーカーのプレスコット博士とともに面談して事情を聞く。マルタは病的にモノを溜め込む「ホーディング」と呼ばれる障害を抱えており、近隣の安全を脅かすという理由で裁判所から清掃を命じられていた。ホーディングの症状が進むと、周囲の乱雑さを遮断するようになり、そのため娘の遺体に気づかなかったものと思われる。何があったのかマルタに聞いたところ、ダイアナは清掃命令を受けて片付けに来ており、その途中で何かが落ちてきて「怪我をしたのだ」という。実際に、ダイアナの頭部には重い本の束が当たってできたような傷跡があった。マルタは、ダイアナは怪我をしてそのまま帰って行ったと認識していたが、実際には家の中で倒れたまま死亡したものと思われた。

マシュー・プライス、ライアン・ホフ、デリック・ケネディ他1名

一方、ニック、サラ、グレッグの3人はそのままマルタの家で現場検証を続けていたが、その途中でグレッグが白骨死体を発見する。十代の少年で、身元はマシュー・プライスと判明。身体の前で両手を赤いリボンで縛られていた。

プレスコットは「マルタはモノを溜め込むだけで暴力傾向はない」と言うが、その後、庭でさらに3名の少年の白骨死体が発見される。3人とも同じように両手に赤いリボンが巻かれていた。3人のうち2人はライアン・ホフとデリック・ケネディとわかる。死因はいずれも急性ヒ素中毒だった。

身元の判明した少年たちは皆、「アベニュー・オブ・ケア」という矯正施設にいた。その施設の所長はマルタの息子ジュリアン・サンティアゴ。もうひとりの娘アリサもその施設でボランティアをしており、少年たちと親密にしていたが、ジュリアンはそれが気に入らなかったらしい。

アリサは半年前から連絡が取れず、携帯電話も解約されている。ニックは「アリサも殺されているのでは」と疑い、ラングストンとともに現場へ戻り、再捜索。そこで2人はアリサを発見するが、彼女は生きており、手錠でベッドにつながれていた。

誰に監禁されたのかと聞かれたアリサは「母親」と答え、ベッドの周囲の指紋などからそれを裏付ける証拠も発見される。だが、この家の惨状はマルタが心に大きなトラウマを受けたせいだと考えるサラは「息子に強制された可能性もある」と主張し、ニックと対立する。実際に手錠を購入したのはジュリアンであり、彼には殺害された少年たちとのつながりもあった。

少年たちの手を縛ったリボンは、犯人が歯でちぎったことがわかるが、犯行から半年が経ち、DNAの採取は無理。しかし元のロールの方なら可能かもしれない、と考え、グレッグとサラが再び現場へ。プレスコットの助言を得ながら捜索し、殺鼠剤とリボンを発見する。そのリボンから採取されたのはアリサのDNAだった。マルタは、アリサが家に少年たちを連れ込んでは殺していたことを知って娘を監禁したのだった。

ジュリアンは「自分は早く家を出られたが、アリサはこんな家で育ったせいでモンスターになってしまった」と嘆くが、サラは「アリサはもともと『捕食者』であって母親の影響ではない」と言い、自分の母親の話をして元気付ける。


感想

見終わった後、ニックじゃないけど「片付けなきゃ!」と思ってしまうエピソード。

日本でも時々話題になる「ゴミ屋敷」、アメリカでも最近注目され社会問題にもなっている様子。自宅に足の踏み場もなくなってしまうほど、とにかくモノを溜め込むことを「ホーディング (hoarding)」、その症状を抱える人のことを「ホーダー (hoarder)」と呼ぶ。ホーダーを扱ったリアリティ番組が2つも(A&Eの “Hoarders” と TLC の “Hoarding: Burried Alive”)あるというからすごい。

もちろん本も出版されていて、日本語にも翻訳されている。フロスト&スティケティの『ホーダー』(日経ナショナルジオグラフィック社)が、どうやらこのエピソードの元ネタらしい。最初にハードカバーで出たのが2010年4月で、このエピ放送の半年くらい前だ。ダイアナが死亡した状況はプロローグに登場するコリヤー兄弟の話(弟の方)に似ている。ゴミ屋敷の中で落ちてきた本に頭を強打されて弟が死亡し、ゴミの中に埋まっているところを、かなり時間が経ってから発見されたのだ(兄の方は病気で外に出られなかったため衰弱死)。1章の主人公「アイリーン」は、マルタ・サンティアゴのモデルと言って良いと思う。モノを溜め込むという行為が家族の思い出に直結していること、司書という職業、「視覚的・空間的にモノを積み上げて行く」という表現など共通項が多い。別の章だったかもしれないが「まぜ返し(=攪拌)」という表現があったし、「タイムカプセル」もアンディ・ウォーホールが作っていた。エーリッヒ・フロムにも言及されている。もちろん、娘がシリアルキラーになった、なんていう話は出てこないが。

エピソードとしては、マルタの家の描写に印象をほとんど持って行かれた感じで、事件はシンプル。ダイアナは事故死だったし、少年たちの方も容疑者は限られている。母親か息子か、どっちが犯人だ? となると、真犯人はそのどちらでもない第三者、となるのが普通なわけで、今回もそのどちらでもなく娘アリサが犯人だった。ニックとサラが対立するが、サラが「家庭の中で苦悩する妻」に同情し、ニックが「息子」の立場につくのも、いつもの役割を演じているという印象。

で、事件解決後にサラが自分の家庭のことをジュリアンに話して勇気づけるわけだが、その内容がちょっと気になった。

サラの母親が父親を刺殺した――という話は、シーズン5「人形の牢獄」が初出だった。その時の話では、母親が父親から暴力を受けており、それに耐えかねて殺したという事情があったように記憶している。なので、今回サラが言った「理解できない犯罪が起きると、人は『どうしてこうなったのか』という答をほしがるものだけど、答がない時もある」という台詞は、自分の母親のことではなく一般論として言ったものであり、母親の話を出したのは「自分は生き延びた、あなたも大丈夫」と言いたいためだろう、と解釈した。夫からの暴力に耐えかねて殺した、という行為には自分の(あるいは娘の)身を守るという明確な理由があり、「理解できない犯罪」ではないからだ。(それとも「理解できない犯罪」は父親の暴力の方なのだろうか?)

だが、過去シーズンを見ずに今回の話だけを見て、普通にそう解釈できるか? というと、できないと思う。今回の話では、サラの母親が心を病んだ末に夫を惨殺した、それを指して「理解できない犯罪」「答がない」と言っているように聞こえる。きっとジュリアンもそう思っているだろう。シーズン8でサラが降板して、中途半端に終わったなぁと感じていたサイドル家物語、サラ復帰でまたやり始めるのだろうか。それに備えて設定変更の準備? ……なんて、余計なことまで考えてしまった。

ラストで和解するニックとサラ、長く一緒に仕事をしてきた2人の親密な会話はすごく良かった。良かったんだけどねー……グリッソムのことを話す2人って、何だか「昔の恩師のことを話し合う同窓生」みたいな感じなのよ。いや実際2人ともグリッソムの教え子だから、間違ってはいないのだけど。でもニックは良いとして、サラは、現在の結婚相手なわけでしょ。夫のことを話している雰囲気が感じられないのは、それってどうなのと思ってしまうなぁ……単身赴任だからしょうがないのか。


使用楽曲

  • “Lady Labyrinth” by Ludovico Einaudi

Yoko (yoko221b) 2013-04-29

csi/s11/234_house_of_hoarders.txt · Last modified: 2024-02-19 by 127.0.0.1