User Tools

Site Tools


lao:s06:133_homesick

Law & Order - Season 6, Episode 22

#133 Homesick

  • 邦題:「ホームシック」
  • 脚本:Barry M. Schkolnick, Elaine Loeser
  • 原案:Michael S. Chernuchin, Barry M. Schkolnick
  • 監督:Matthew Penn
  • 初回放映:1996-05-15

事件概要

People v. Lila Crenshaw (判事:Beth Krieger)

生後5ヶ月の赤ん坊エヴァン・カーメルが自宅のベッドで死亡する。毒物の使用が疑われ、検査を行ったところニコチンが検出され、殺人と判明。

分析の結果、ベビーフードの容器からニコチンを含む殺虫剤が検出される。カーメル家には英国人のオーペア、ライラ・クレンショーが住み込んでおり、彼女の部屋から同じ原料を含む殺虫剤、エヴァンが死んだ前日のレシート、雇い主への不満を綴った日記が発見され、ライラは逮捕される。

弁護人は、証拠を発見した時に捜索令状がなかったことを理由に証拠の排除を要求。刑事たちはカーメル夫妻の同意を得ていたが、ライラ本人の同意を得ていなかったためだ。判事は、そこは仕事場ではなくライラの個人スペースであるという弁護側の言い分を認め、証拠を排除する。

これで直接の証拠はなくなったが、赤ん坊に接触できたのはライラだけであることから、マッコイは動機からの立証を試みる。育児経験も専門知識もない若い子守は、仕事への不満やホームシックなどからうつ状態になり、子どもに対して辛く当たる例が少なくないのだ。一方弁護人は、エヴァンの母親が忙しい仕事を持ち、週に何度も出張して家をあけることを指摘し、子守の選定もいい加減だったと印象付ける。

陪審員の意見は分かれ、これ以上話し合っても結論は出ないと判断されたため、事件は審理無効とされる。

再起訴にあたり、マッコイは「食事に毒を入れた」ことではなく「赤ん坊が食事のあと泣いて吐いても無視した」ことが有罪の根拠であると理論を転換。ライラは子どもの世話をする責任があったが、そのために当然すべきことをしなかったという理屈だ。

2度目の裁判のため、キンケイドは検察側の証人と再度の打ち合わせ。その中で、カーメル氏の前妻の息子(エヴァンの異母兄)ベンは、ライラの部屋で植物と殺虫剤を見たことを話し「あの殺虫剤であんなことをするなんて……」と口にする。だが、ライラが殺虫剤を購入したのはエヴァンが死ぬ前日。ベンは最初の公判で「エヴァンに最後に会ったのは事件の前の週で、それ以来父の家に来ていない」とはっきり証言していた。つまりベンは嘘をついていることになる。

公判は翌日に迫っており、陪審員はすでに宣誓している。ここで事件を取り下げればもう再起訴は不可能だ。結局シフがゴーサインを出し、マッコイはベンに「ライラの部屋で殺虫剤を見た」と証言させる。マッコイの態度に気づいた弁護人は、反対尋問で矛盾点をつき、エヴァンはついに証言台で自分の犯行を認める。

カーメル夫妻は20歳近くも年の離れた夫婦で、夫の前妻は離婚されたことをひどく恨んでいた。ベンも、エヴァンが生まれてから父親が自分に見向きもしなくなったことに怒りをつのらせ、学校を抜け出してこっそり父の家に行き、毒を仕込んだのだった。


感想

ニコチンを混入させた食品をめぐり、最初のうちは捜査が二転三転。ややこしくなるので上のあらすじでは省略したが、「別のオーペアの家でも同じことがあった」という話が出たり、ベビーフードを売る店の店員が人種差別主義者だったり(この事件の被害者は白人家庭だが)。父親が前妻から相当恨まれていたり。

しかしいずれも空振りに終わり、結局その家に住み込んでいるオーペアに話が戻ってくる。

オーペア (Au Pair) というのは、ホームステイを兼ねた住み込みの子守り(家事手伝い)のこと。たいていは海外から勉強に来た若い未婚の女性で、家に住み込んで学校に通う傍ら、空いた時間に家の手伝いや子守などをする制度とのこと。住み込みなので滞在費が無料になり、報酬が出るケースもある……といっても「就労」ではないので(労働ビザではない)賃金ではなく、形式上はあくまで「お小遣い」という所だろう。

ここで、オーペアという制度自体の抱える問題がいくつか浮き彫りにされたのが興味深い。オーペアになるのは未婚の若い女性ばかりなので、育児経験も専門知識もない。せっかく勉強しに来たのに……と、家事や子守に追われる毎日に不満。ホームシック。国による習慣の違いで、誤解からトラブルになることもあるらしい。ここでも、ライラが赤ん坊にブランデーを飲ませて大騒ぎになったという話が出ていた。英国や豪州では、乳歯が生え始めてむずがる赤ん坊の歯茎にブランデーを少しすりこむという習慣があるらしいのだが(米国にはないの?)、ライラはそれを間違えてスプーンで飲ませてしまったのだ。

弁護人は、赤ん坊の母親が多忙であまり家におらず、子守の選定もいい加減だったということをねちねちと責め立てるが、その弁護人自身も母親なのでいささか矛盾している。本人は離婚してシングルマザーなので仕方ないのだろうが……検事と弁護人が女性同士でおしゃべりする場面も、これ自体は面白い場面だが、時期が時期なので「ああこれもさよならメッセージの一環なのかしら」と思えてしまう。

さて、しかし陪審員は評議を重ねたあげく「評決不能」というデッドエンド。いったん審理無効となって再起訴することになるが、そこで証人と打ち合わせをしたところで、思わぬ事実が発覚。証人の嘘に気づいたマッコイは、わざと弁護人に気づかせるように尋問を行い、いわば「勝ちを譲った」結果になった。

うーん、殺虫剤を前日に買ったのは事実として、「それ以前には持っていなかった」という描写がもう少しほしかったかな。だって、今まで使っていたのがなくなったから買い足したという可能性だってあるし。法廷でのライラの表情が何か意味ありげだったので、何かもう一捻りあるのかなと思ったが、そのまま終了。

しかし犯行当日のベンの行動を考えてみると……学校を抜け出して父親の家にやって来るまではいい。鍵は持っているから。でも、その後は? 毒になりそうな物を家の中で探して回ったのだろうか。殺虫剤の購入はその前日だし、法廷での態度を見ても事前に知っていたとは思えない。植木鉢があることは知っていたから、何か薬があるはずだと予想していたとか? それとも行き当たりばったりで、赤ちゃんの身体に悪そうな物なら何でも良かったとか?

たまたま殺虫剤を見つけたとして、ベンがそれを持ち出して冷蔵庫のベビーフードに毒を仕込む間、ライラはどこにいたのだろう。ベンが来たことにすら気づかなかったのかな? よっぽどすごい大邸宅なんだな。

それにしても腹が立つのは父親だ。もとはといえば、泥沼の離婚劇を演じた挙句に前妻と息子を捨て、若い妻と赤ん坊に夢中になったのが原因なのに。父親から見向きもされなくなった息子に対して罪悪感を感じるどころか、怒りをあらわにして “You son of a …” と言いかける。son of 何だったのか、ようやくそこで気づいた表情の変化は見事だったと思う。

Yoko (yoko221b) 2012-05-26

lao/s06/133_homesick.txt · Last modified: 2020-04-19 by Yoko