User Tools

Site Tools


lao:s06:132_pro_se

Law & Order - Season 6, Episode 21

#132 Pro Se

  • 邦題:「妄想と現実の狭間で」
  • 脚本:René Balcer, I.C. Rapoport
  • 監督:Lewis H. Gould
  • 初回放映:1996-05-08

事件概要

People v. James Stephen Smith (判事:Joseph Rivera)

古着屋で店員と客が襲われ、3名が死亡し1名が重傷を負う。凶器は剣のような片刃の長い刃物で、店の近くではアーミージャケットを着た浮浪者のような男の姿が目撃されていた。その男は被害者のひとり、リンダをずっと付け回しており、前の週には露店から銃剣を盗んだらしい。ブリスコーとカーティスは、目撃情報から犯人がジェームズ・スミスと名乗るホームレスであり、統合失調症の投薬を受けていたが、ここ数ヶ月薬を受け取っていないことを突き止める。

スミスは図書館にいるところを見つかり逮捕される。目撃者もスミスを犯人と確認。スミスは16ヶ月前に女性へのストーキング行為で逮捕されたことがあり、6ヶ月の保護観察と500ドルの罰金という刑を受けていた。

16ヶ月前のストーキング事件を処理したのはキンケイドだった。スミスは弁護士資格を持ち、その当時は定職があり、薬を服用していたため精神状態は問題にならなかったのだ。

その後、スミスは公選弁護人を解任し、自ら弁護人になる。重傷を負った被害者と、他の被害者の遺族たちは、今回の事件が起きたのはストーキング罪への対処が不十分だったためであるとして、キンケイドと市を訴える。スミスの妹は「前回逮捕された時、電話したのに折り返してくれなかった」と責める。キンケイドは減刑を頼むつもりだろうと考えて連絡していなかったが、妹の方は「兄を病院に入れてほしい」と頼むつもりだったのだ。

スミスは検察側の証拠を排除しようとするが、判事はそれを却下し証拠の採用を認める。するとスミスは「精神疾患により無罪」と答弁を変更する。キンケイドは「精神疾患を認めて無罪にすれば、また薬を止めて犯罪を犯し同じことの繰り返し」と裁判を求めるが、シフは「裁判になれば無罪は確実」と取引を指示する。

マッコイは治療施設に最低6年収容、という条件で取引を切り出すが、スミスは「殺人を犯したのは(投薬を受けていない時の人格であり)私ではない」とマッコイを挑発したため取引は決裂。マッコイは「殺人を犯した時点でのスミスには責任を問えないかもしれないが、暴力的な過去がありながら薬の服用を止め、その状況を作り出したのはスミス本人であると考える。

オリヴェットはスミスに面接した後、彼は薬を止めるとどういうことになるかを知っていたと証言する。スミスは検察側の証人に対し、「キンケイド検事は私の行動を予測できなかった」といちいち持ち出してあげつらう。被害者もその挑発に乗り、証言台でキンケイドを非難する。

キンケイドは、スミスの妹のパティが証人リストに載っていないことに注目し、彼女に面会して「無罪になればまた数ヶ月で『治った』といって薬を止め、同じことを繰り返すだろう」と説得。スミスは無罪を確信して取引を拒絶。その姿を見てパティは証言を決意し、兄が薬を止めたこと、病気のせいで職を得られないことに絶望したことを述べ「兄には薬を飲ませる人が必要なのです」と涙ながらに証言する。

スミスは妹の証言を聞いた後、マッコイの条件を受け入れて取引に応じる。刑の言い渡しを前に「自分の犯した犯罪を述べるように」と言われたスミスは原稿を読み上げようとするが、途中で「この紙は針がびっしり生えている、怪我をした! 鎧はどこだ」と意味不明なことを口走る。スミスは妹が証言した翌日から、薬を服用していなかったのだ。


感想

シーズン4~5の後半を思い出すなぁ……。ジル・ヘネシー(クレア・キンケイド役)の出演は今シーズン限りということで、退場に向けて少しずつサヨナラの外堀が埋まっていく感じだ。数回前にも彼女が仕事に迷いを感じているような描写があったが、今回は過去に扱った事件への対応について取り沙汰される。

今回の犯人は、見ず知らずの通行人を通り魔的にいきなり切りつけるというとんでもない奴だが、調べてみると1年半前にストーキング行為の前科あり。その事件を扱ったのがキンケイド検事だったため、「なぜその時病院に入れなかったんだ!」と非難が上がるのだ。

しかし、そんなことを言われても前の事件当時はまだホームレスでもなく、弁護士資格を持って定職にもついていたし、薬を服用してさえいればまったく正常に見えるので、キンケイド検事に非があったとは思えない(マッコイもそう主張する)。

反省すべき点があるとすれば、被告の妹が伝言を残した時に、折り返し電話しなかったことだろう。キンケイドの方は、よくある減刑嘆願だろうと思い、どうせ罰金で済むからと思って折り返さなかったようだが、妹の方は「兄を病院に入れてほしい」と頼むつもりだったという。そういうことならそっちからもっと言わんかい! と言いたくもなるだろうが、妹の方もまさか殺人に発展するとは思っていなかったのだろう。

さて、逮捕された被告人は公選弁護人を解任して自分で自分の弁護をすると宣言する。タイトルの “Pro Se” はそういう意味だ(Pro Per も同じ)。アメリカでは被告人が自分で自分を弁護することが(別に弁護士でなくても)可能だが、どんな場合でも無条件に許可されるわけではなさそうだし、リーガルエイドが付けられることもある。このへんは判事の裁量なのかな? 今回のジム・スミスは、逮捕された時には妄想に捕われていて、完全にイっちゃってる風だったが、その後薬を服用し、髪を切ってスーツを着ているところを見ると「ちょっと神経質ぽいけどごく普通に弁護士に見える」感じなので判事もOKを出す。

答弁は「精神疾患により無罪」、つまり犯行時に責任能力がなかったから罪に問うことはできない、という主張だ。検察側は取引を求めるが、裁判をすればまず確実に無罪なのだから被告側には取引に応じる理由はないわけで、余裕綽々で本当に憎たらしい。そこでマッコイは「暴力的な過去がありながら薬を止めたのは、結果を自ら選んで招いたことだ」と主張する。これは「原因において自由な行為」と呼ばれるものか。

そんなこんなでキンケイド検事の個人エピソードという雰囲気の強かったエピソードではあるが、それも「L&Oにしては」というレベルの話で、今回もストーリーの中心はあくまでスミスの方だったと思う。完全に妄想に取り付かれていた感じの登場時、薬を服用して冷静な受け答えができるようになった時、そして最後にまた薬をやめて妄想が戻ってきてしまった時、それぞれの演じ方が素晴らしい。パティの証言にも、大いに心を揺さぶられた。

Yoko (yoko221b) 2012-05-25

lao/s06/132_pro_se.txt · Last modified: 2020-04-19 by Yoko